取材

藤子・F・不二雄ミュージアムの「ドラえもん×コロコロコミック 40周年展」は大長編ドラえもん全作品を満喫できる


川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」で、初のコラボレーション企画として「ドラえもん」と「コロコロコミック」がともに歩んできた40年の歴史を振り返ることのできる「ドラえもん×コロコロコミック 40周年展」が2017年7月8日(土)から2018年1月15日(月)まで行われます。映画の原作として連載された「大長編ドラえもん」を中心とした展示で、大人も子どももワクワクできること間違いなしな内容となっていました。

なお、記事中では「大長編ドラえもん」の一部作品の結末付近についても触れています。

『ドラえもん×コロコロコミック 40周年展』 | 川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム
http://fujiko-museum.com/exhibition/

藤子・F・不二雄ミュージアムに到着。駐車場はないので、JR南武線・小田急線の登戸駅から運行されている直行バスなどの公共交通機関で訪問してください。


2階にある「展示室II」の入口は「どこでもドア」。これをくぐると……


最初に目に飛び込んでくるのは40年分のコロコロコミック、全469冊。表紙が正面向きのものと背表紙がならんでいますが、これはちゃんと実物を使用したもの。きっちり隙間なく収まるように計測して配置されています。


左上が創刊号。目玉連載が当時学年誌で高い人気を誇った「ドラえもん」だったこともあり、「コロコロコミック」のロゴよりも「ドラえもん」の方が文字が大きいところがポイント。全520ページのうち200ページが「ドラえもん」でした。


1986年8月号が創刊100号。この号から「サイボーイ」がスタート。また、ファミコン新ゲームとして「高橋名人の冒険島」が取り上げられていて、ミニ四駆では「スーパードラゴンII デザインコンテスト」の発表が行われています。


数々のブームを生みだしてきた「コロコロコミック」。1992年ごろには「バーコードバトラーII」を取り上げていて、「バーコードファイター」が連載されていました。ドラえもんは「大長編ドラえもん のび太とブリキの迷宮」の連載が始まったところ。


表紙には常にドラえもんがいますが、2000年3月号のドラえもんは珍しくCG。


背表紙のデザインも細かく移り変わっています。右下は40周年記念号です。


40周年記念号はレイアウトも公開されています。表紙は今でも手書きで作られているとのこと。


実物と並べると、文言などがわずかに変更されているのがわかります。


メインである「大長編ドラえもん」の展示はこのように作品ごとに、カラー原画と生原稿、そして連載時の扉絵や特集などがまとめられています。ちなみに「大長編」は編集部が考えたもの。当時、コロコロコミックは「学年誌に掲載された『ドラえもん』の再録(再掲載)が中心だが、とても売れているお化け雑誌」と評されたこともあるそうですが、編集部でも再掲載ではない新作のドラえもんを連載するということには並々ならぬ意気込みがあったとのこと。


大冒険を感じさせる扉絵。


連載開始前のお知らせ。映画の原作をコロコロコミックで「大長編」として連載するスタイルは1作目から変わりません。


大長編2作目「のび太の宇宙開拓史」。コロコロコミックで大長編の連載を行い、その総集編増刊が出て、春休みには映画が公開されるという展開の流れはこのころからだとのこと。なお、「宇宙開拓史」が春休みに公開されたのち、同じ年の夏休みに「ドラえもん ぼく、桃太郎のなんなのさ」が公開されていますが、原作は連載エピソードの1つで「大長編」ではありません。


コーヤコーヤ星からのび太の部屋へと戻る大ゴマ。このコマだけでも涙腺が刺激されますが、映画はアニメとマンガとの違いから、若干の演出の違いがあります。そういうところを見比べたくなるのも「大長編ドラえもん」と「映画ドラえもん」の魅力。


大長編3作目「のび太の大魔境」


大長編4作目「のび太の海底鬼岩城」


このクライマックスシーンは、コロコロコミックに連載されていた時には「バギーが爆弾を抱えて突っ込む」という形だったそうですが、単行本収録時に「バギーが単身で飛び込む」という形に修正されました。今回、展示の見どころの1つとして、当時の編集担当やアシスタントからのコメントや解説がついているというところも挙げられます。


大長編5作目「のび太の魔界大冒険」では……


のび太が「もしもボックス」を使って魔法のある世界にしたことで騒動が起きたため、ドラミちゃんが登場して「もしもボックス」でもとの世界戻してめでたしめでたし……という「おわり」が描かれました。実際にはまだ続くのですが、アシスタントの中にもだまされた人がいたとのこと。


大長編6作目「のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)」。連載されたのは1984年で、この前年に「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」が公開され、「スター・ウォーズ」旧3部作が完結しています。


この作品の特徴は、最終回後半が袋とじになっていたこと。袋とじは印刷を先にする都合上、このしずちゃん(アニメでは「しずかちゃん」)のシーンからラストまでは作画も先に行われたそうです。


連載当時は「特別企画 秘密とじこみつき完結編」と銘打たれ、「あっと驚くクライマックスは読んでいない人には、決して話さないでください!!」という注意書きが行われました。この作品では、敵側の情報機関PCIAのドラコルル長官がかなりの切れ者で、どんどん追い詰められていくドラえもんたちが一体どうなるのかとワクワクの展開です。


ゲストキャラクターの1人が犬の「ロコロコ」。そのネーミングについて、担当編集者は「連載していた『コロコロ』から…? 先生のサービス精神だったのかもしれませんね」とコメントしています。序盤から出番のある、重要なキャラクターです。


大長編7作目「のび太と鉄人兵団」


巨大ロボット「ジュド」が登場し、コロコロコミックには「完全図解」が掲載されました。


リルルが窓の外を飛んでいくエピローグは「別冊コロコロスペシャル」への一挙収録時に追加されたもの。


大長編8作目「のび太と竜の騎士」


編集の方によれば、藤子先生の頭の中には物語の分かれ道がいくつかあって「ゴールが3つある」と話していたとのこと。


大長編9作目「のび太の日本誕生」。映画シリーズでは「竜の騎士」と「日本誕生」のあいだに「パラレル西遊記」があるのですが、入院のため大長編が描かれず、映画の数と大長編の数にズレが生じています。


ドラえもんに耳がある大長編10作目「のび太とアニマル惑星(プラネット)」


女の子の読者も意識した作品だったとのこと。


しかし、ホラー要素も強め。「ニムゲ」や「謎のもや」は、大長編の中でも屈指の不気味さです。


コロコロコミックでは「おもしろ惑星コンテスト」として、読者から面白い「惑星」と「宇宙人」を募集しました。グランプリ1名にはPCエンジン・コアグラフィックスとゲームソフト「ドラえもん 迷宮大作戦」が贈られています。


世界の名作をモチーフにした大長編11作目「のび太のドラビアンナイト」。このタイトルは編集者の発案だそうです。


過去、大冒険の中でいろいろな苦労を味わったしずちゃんは、本作では特に大変な目に遭うことに。それだけに、この「アラビアのお姫さま」風になったときには安心したものです。


大長編12作目「のび太と雲の王国」


藤子先生の体調が優れなかったため、途中からマンガではなくプロットをもとにした絵物語としての連載が行われました。


先生は「まんがで描かなきゃ意味がないんだ」と気にかけ、後年、完結編を描き下ろしました。ホイくん、絶滅動物のモアやドードー、さらにキー坊と、過去の連載エピソードに登場したキャラクターたちが大長編にも姿を見せるという、ファンには嬉しい作品です。


ちなみに、会場にはそのホイくんが登場した、コロコロコミック1984年7月号掲載の「ドンジャラ村のホイ」の原稿も一部展示されています。


大長編13作目「のび太とブリキの迷宮(ラビリンス)」。カラーページに大長編では出番の少ないパパのみが登場するという、貴重な作品。


大長編14作目「のび太と夢幻三剣士」。右側、ドラえもんたちが勇ましい姿をしていますが、連載時の衣装はまったく異なるものだったそうです。


大長編15作目「のび太の創世日記」


魚を捕まえて進化退化放射線源を浴びせるシーンで飛んでいる虫について、アシスタントが後に生きるものなのか尋ねたところ、藤子先生は「つながればいいし、なければないで終わりでしょう」と答えたとのこと。「竜の騎士」のときに「ゴールが3つある」という話があったように、ストーリーの展開によってどういう扱いになってもおかしくなかった伏線だったようです。


大長編16作目「のび太と銀河超特急」。左側のカラーページは総集編一挙収録時のもの。


実は、連載時とは宇宙船のデザインもカラーリングも異なります。


作中で恐竜が出てくるのですが、作画用の資料だった図鑑を他の人が使っていると、藤子先生はその場で必要な部分を模写してしまったとのこと。


その模写イラストも公開されています。


大長編17作目「のび太のねじ巻き都市(シティ)冒険記」


連載中、藤子先生から食事に誘われたという担当編集者。「今思えば最期を予期してのことだったのかもしれません」というコメントの通り、藤子先生は本作連載中の1996年9月20日に鉛筆を握って執筆中のまま意識を失い、3日後に亡くなりました。


プロットはしっかりと作られており、物語後半で活躍するチンパンジーは事前資料に「絶対に必要です」と書かれていたとのこと。


その資料「しずちゃんの部屋徹底研究」もまた公開されています。チンパンジーの注意書きは二重丸付き。


前述のように「パラレル西遊記」には大長編がないので、大長編として数えると17作目ですが、映画基準では18作目。連載時は「第18弾」と、映画ベースの表記が行われています。


作者名は「まんがの王様 藤子・F・不二雄」表記でしたが、藤子先生絶筆後は「まんが制作:藤子プロ」が加わっています。


コロコロコミックには追悼特集が掲載されました。


大長編ドラえもん以外の展示ももちろん行われています。こちらは「パーマン」。


コロコロコミックにSF短編が掲載されたこともありました。


これは「ドラえもん」誕生エピソード。


ぎっちりと並んだモノクロイラストは……


コロコロコミックの表紙のドラえもんたち。実は油性マジックで描かれていました。


線がはっきりくっきりと太いのが、油性ペンによるものだったとは……。


こちらはコロコロコミックの付録の数々。


「大長編」以外では最後に描かれたエピソードとなった「ガラパ星から来た男」。「小学三年生」「小学四年生」「小学五年生」に3ヶ月かけて連載された中編で、コロコロコミックでは44.5巻として特別付録になりました。なお、コミックス最終巻となった45巻にも収録されています。


「藤子不二雄のまんが入門」掲載メダル


ドラえもんと怪物くん、そして連載キャラクターたちが並んだスタンプの押された年賀状。


コロコロコミックでは1980年から児童まんがの新人コミック賞「藤子不二雄賞」を設けて、児童まんが家を育ててきました。その第1回の総評で藤子先生が語ったのが「理想的な児童まんがは、子どもが読んで面白いだけでなく、大人にとっても面白くあるべきです。」ということ。


第14回では「どうすればうまくなるか。秘訣なんかありません。教えたり教えられたりできる部分は少なく、経験が全てです。赤ちゃんが言葉を覚えていくように、見たり、聞いたり、書いたりすることです。うんとたくさん、うんと精力的に。」という言葉。まんが家以外にも響く言葉です。


大長編にまつわる数々の展示を見た後だと、屋外の「ピー助」や「巨神像」、「石にされたドラえもん」にもなにやら感動がひとしお。


3階にあるミュージアムカフェではコラボフードが展開されています。たとえば「ポセイドン 冷やしまぜ翡翠めん」(1200円)は、「海底鬼岩城」に登場するポセイドンの顔を模しています。


ピー助が再現された「白亜紀プレート」(1450円)


「畑のレストラン 夏のロコモコ丼」(1850円)


「畑のレストラン スタミナ豚丼」(1850円)。このあたりはぱっと見た感じは普通のメニューっぽいので「どういうコラボなんだろう?」と思う人がいるかもしれませんが……


器のふたを閉じると「日本誕生」に登場した「畑のレストラン」であることがわかります。このシリーズは2016年から提供されていますが、中身が新しくなっています。


他には「畑のレストラン テリヤキチキンバーガー」(1850円)も。


「パーマンセットプレート」(980円)


創刊号のデザインを取り入れた「コロコロコミック創刊号ケーキ」(1977円)


このほかにもフード、デザートが用意されていて、さらにコラボグッズとして創刊号デザインのメモ帳、企画展オリジナルデザインのクリアファイルセット、アクリルキーホルダー、ピンズなどがあります。


「F-Style Colors」はカップやお皿など、大人向け。


さらにJack Bunny!!のアロハシャツ(1万2960円)も。


単なるドラえもんカラーのアロハではなく、ドラえもんが隠れています。


ぜひこの機会に、藤子・F・不二雄ミュージアムを訪れてみてください。

©Fujiko-Pro

なお、図録やクリアファイズ、ピンズなど一部グッズが2017年7月開催・GIGAZINE夏のプレゼント大放出企画「アンケートに答えて全部持っていってください!」でゲット可能です。応募の締切は2017年8月3日(木)23:59です。

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in 取材,   マンガ, Posted by logc_nt

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