大気汚染がアルツハイマー病などの認知症につながる可能性
大気汚染物質によって健康が害されることが知られていますが、アメリカの研究で大気汚染によって高齢女性の認知症リスクが高まる可能性が指摘されています。
Translational Psychiatry - Particulate air pollutants, APOE alleles and their contributions to cognitive impairment in older women and to amyloidogenesis in experimental models
http://www.nature.com/tp/journal/v7/n1/full/tp2016280a.html
Air pollution may lead to dementia in older women | Science Bulletin
http://sciencebulletin.org/archives/9913.html
アメリカの南カリフォルニア大学(USC)のジゥチュアン・チェン准教授らの研究チームは、「大気汚染物質が脳に与える影響が認知障害に寄与しているのではないか」という仮説を立て、これを調べるためにアメリカ48州の65歳から79歳の高齢女性3647人のデータを分析しました。なお、調査開始時に認知症にかかっていない女性が被験者に選ばれており、地理的・人種的・教育的・社会的要因による潜在的な偏りは排除した上で調査は行われたとのこと。
その結果、アメリカ合衆国環境保護庁の指定する微粒子状物質基準を上回る地域に住む高齢の女性は、認知機能低下のリスクが81%、アルツハイマー病を含む認知症発生のリスクが92%高いことが判明。このリスク水準を全米の人口にあてはめると、認知症の症例全体の21%が大気汚染が原因となっている可能性があると結論づけています。
USCレオナルドデービス校のケーブル・フィンチ教授は、「化石燃料を燃やすことで大気に発生する微小粒子状物質(PM2.5)は、鼻から吸い込まれて直接、脳に届きます。脳細胞は微小粒子状物質を異物として扱い炎症反応が起こります。そして、時間の経過とともにアルツハイマー病が悪化すると考えられます。大気汚染がアルツハイマー病に悪影響を与えるというのは新しい知見かもしれませんが、タバコの煙のような汚染された空気が脳を老化させる危険があることはよく知られています」と述べています。
世界保健機関(WHO)によると、世界で認知症に苦しむ人は4800万人おり、毎年770万人の患者が増えているとのこと。今回の研究で大気汚染と認知症の関係性が示唆されましたが、この因果関係を確かなものにし、大気汚染物質が脳に入りこんで悪影響を及ぼすメカニズムを調べるために、より正確でより多くの研究の必要性が訴えられています。
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