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約100年の歴史を終えつつある留萌本線を見に行ってきた【留萌~増毛編】


JR北海道が維持困難であると発表した路線の1つが留萌本線。このうち留萌・増毛間は2016年12月4日に廃止が決定しています。その沿線の様子を増毛から留萌へ向けて戻りつつ記録してみました。

留萌までの様子は以下の記事を参照してください。

約100年の歴史を終えつつある留萌本線を見に行ってきた【深川~留萌編】 - GIGAZINE


◆オロロンラインで増毛へ
留萌駅を出て、国道231号オロロンラインに沿って南西に増毛へ向かいます。


途中で「阿分隧道」を発見。


地図で見るとこのあたり。衛星写真でも、このあたりの断崖が海沿いギリギリまで迫っていることが読み取れます。


◆増毛駅
途中、どこにも止まることなく増毛駅へ。


力強い「増毛駅」の文字


2016年9月にはカツラ疑惑のある歌手・細川たかしさんが増毛町で行われたイベントに参加し、この駅前で疑惑を否定しました。

細川たかし「増毛町」でかつら疑惑否定「私は大丈夫」地毛アピール : スポーツ報知


駅にはすでに列車が到着済み。


別れを惜しんで撮影に勤しむ人の姿が何人も見られました。


自分もまたその一人ではあるので、あちこちと歩き回りながら撮影。


95年にわたる終着駅の役割が、まもなく終わろうとしています。


列車はやがて、留萌方面へと折り返していきました。


駅舎内の食堂はまだ開いていませんでした。


運賃表。留萌まで360円、深川まで1450円。札幌や新千歳空港は載っていません。


全7本の発車時刻表。


廃止記念アイスクリームがあるそうです。


◆増毛町内散策
駅前にあった増毛町内施設案内図。駅は町の東端にあります。


駅から降りてすぐ目に入る大きな建物は「旧・富田屋旅館」。木造三階建てで、1933年(昭和8年)築だとのこと。現在は旅館としては営業しておらず、外から見るだけ。


その隣の「風待食堂」(旧・多田食堂)とともに、高倉健主演の映画「駅 STATION」に登場しました。


風待食堂で見つけた朝日新聞の切り抜き。これは2014年のデータをもとにした2015年8月8日の記事で、いよいよ廃止されるのではないかと危惧する内容なのですが、そこから1年ちょっとで本当に廃止されることになりました。


駅から10分ほど歩くと北海道遺産「増毛の歴史的建物群(駅前の歴史的建物群と増毛小学校)」の1つ、増毛小学校があります。


バス停もあるので、留萌方面からバスで来たときはここで降りるというのもアリ。


1936年(昭和11年)建築の木造小学校は見事な風合い。2011年まで現役として使われてきましたが、現在は小学校は増毛中学校の北隣に移転していて、建物内には入れません。


2016年11月11日には80周年を迎えて大掃除が行われました


同じく古い木造体育館。


小学校から駅へ続く細い道を一本横に入ると「増毛灯台」があります。


設置は1890年という木造で、1990年に改修されたときに赤帯の塗装が行われました。


灯台から見下ろす増毛の港。


残念ながら観光灯台ではないので、中には入れません。


増毛小学校と同じ北海道遺産の「国稀酒造」は明治15年創業、日本最北の酒蔵です。


建物内にあった杉玉


酒造なのでお酒の販売を行っていますが、ほかにグッズ類の販売も行っていました。


増毛町といえばスカルプローション「増毛町の願い」がお土産にピッタリ。


奥では蔵の中を見学可能です。


試飲コーナーもあります。これは車やバイクの一人旅だとパスするしかありません。


水飲み場では水くみも可能。外にも水くみ場が設けられていて、そちらではペットボトルやポリタンクをいくつも抱えた人が水くみをしていました。


試飲で気に入ったお酒を買うのがベストですが、現地に行くのが難しい人は国稀酒造オンラインショップで購入する手もあります。


国稀酒造と増毛駅との間にあるのが「旧商家丸一本間家」。明治10年~30年代建築の増毛を代表する歴史的建造物で、2003年には国の重要文化財に指定されました。


「ぼちぼちいこか増毛館」はもとは「旅館増毛館」という1932年(昭和7年)建築の旅館。現在は男女別相部屋形式の旅人宿として営業中。


歴史的なものということでいうと、駅前の通りを西へと進んでいき暑寒別川を渡ったところには「陣屋展望台」があります。ここは秋田藩元陣屋第二砲台跡で、1970年に国道231号の道路整備をしたときに大砲の台座が出土しました。そのため、当時をイメージして大砲が設置されています。


海を向いた大砲は異国船を打ち払うためのものですが、函館奉行所からは先制攻撃をしないようにという通達が下っていて「穏便第一」だったとのこと。


暑寒別川東岸には沿岸バスの増毛バスターミナルがあります。駅からは徒歩10分から15分ほど。


ターミナルの建物内の窓口はもう長らく使われていないような印象を受けました。


札幌駅前行きの特急はぼろ号(高速不使用)は7時48分発。反対向きの札幌から羽幌ターミナル行きは18時25分着。増毛からなら札幌へ朝出かけて夕方帰ってくることが可能です。また、留萌方面行きは9本あって、うち5本が留萌から札幌行きの特急はぼろ号(高速使用)に連絡しています。


はぼろ号を運行している沿岸バスは萌えっ子キャラクターと、そのキャラクターを使った「萌えっ子フリーきっぷ」がよく知られています。特急はぼろ号には利用できませんが、留萌や増毛、羽幌、天塩などに行くならかなり役立ちます。


留萌方面と増毛、さらに大別苅を結ぶ路線バス。この路線バスで増毛ターミナルから留萌駅前までが500円で約45分、増毛駅から留萌駅前だと420円で約30分。留萌本線なら360円・30分なので「鉄道が高い・遅いから利用されない」というわけではありません。


増毛ターミナルの海側には暑寒海水浴場が広がります。ただし、平成23年度(2011年)から閉鎖されたというお知らせが……。


冬なので泳げる雰囲気ではないのは当然ですが、夏だとどんな感じなのでしょうか。


そして、ここからは一駅ずつ留萌へ向かって戻っていくことにします。

◆箸別駅
増毛駅から箸別方面に向かうと、オロロンラインがJRをまたぐところに「箸別跨線橋」があって、留萌本線の撮影スポットとなっています。この跨線橋の手前を右側へ入ると箸別の集落があります。


記事掲載時点のGoogleマップではJRの線路の南側、何もない緑の中が「箸別駅」となっていますが、実際はその右上、箸別川の手前に駅があります。これは箸別川をはさんで箸別駅方向を撮影したところ。どこに駅があるのかさっぱりわかりません……。


資材置き場としか思えないスペースですが、奥にある階段が駅へと繋がる階段なので、これは駅前広場ということに……。


そして、階段上左手の小屋が待合室です。


駅を出てすぐ留萌方に橋があって、箸別川を越えています。


ホームは木製。


ホームからは箸別の集落の家々が見えます。


駅前広場の方を振り返るとこんな感じ。


◆朱文別駅
箸別集落の次に内陸へ向けて続く道路があるところで、この道路と留萌本線が交わるあたりにあるのが朱文別駅。


オロロンラインから東、内陸へ向かう道路にある踏切沿い。


これが朱文別駅。


駅は海抜6mにあるとのこと。


オロロンライン沿いに家が建ち並んでいて、駅のホームからその屋根が見えています。


反対側、このあたりはかなり平坦に見えます。


◆舎熊駅
舎熊郵便局の東側に、家2軒分ぐらいの舗装されたスペースがあります。これが舎熊駅。


現地に行くと、舗装されたスペースの向こうにぽつんと置かれた貨車転用の待合室が見つかります。


「マムシに注意」のお知らせが窓ごとに貼られていました。


増毛方面はわずかにS字カーブしています。


一方の留萌・深川方面は丘に向かって線路が続くような、雄大に感じる景色が広がります。実際には、丘の下を阿分隧道で抜けています。


振り返るとこんな感じ、こういう駅前広場はわりとどこにでもありそう。


◆信砂駅
道道94号線と留萌本線の交点にあるのが信砂駅。


朱文別駅と同じように、踏切のそばに設けられています。


ここは海抜11m。待合室とホームとは直接行き来ができず、いったん下に降りる必要があります。


階段はここまで見てきた中ではもっとも立派なもの。


点字ブロック付きのホームも、ここまで見てきたものとは異なります。他の駅より利用者が多かったのでしょうか。


ホームからは見えるのは、背の高い草が伸びきった草地。


深川・留萌方面にはまだ丘が見えています。このあと、阿分駅との間に阿分隧道があります。


◆阿分駅
阿分駅は地図中央の大きな建物の裏手(右側)にあります。


ここも踏切とセットのような形です。


海抜は18mと、ちょっと高め。


踏切の名前は「学校」。


ホームはとても短く、ワンマン運転では前扉から降りるために、留萌方面へ向かう列車は踏切をまたいで停車することになります。なお、ホームの向こうに見えるのは元・阿分小学校。2015年3月をもって閉校となりました。


◆礼受駅
礼受簡易郵便局のすぐ南隣にあるのが礼受駅。


オロロンラインからちょっと脇道へそれたところにあるのが礼受駅。まるで民家に上がっていくかのようですが……


間違いなくここ。


このタイプの駅名標は久々に見た気がします。


増毛方面はこんな感じ。


留萌・深川方面。海岸線の狭い平地にJR・住宅地・国道が並んでいるのがなんとなくわかります。


礼受駅待合室と海。


床板がかなり痛んでいました。


ちなみに、オロロンライン沿いには「礼受駅前」バス停があります。


本数は1日9便。


◆瀬越駅
いよいよ留萌駅の1つ手前が瀬越駅。留萌税務署のちょっと西側にあります。


Googleマップでも道路などからなんとなくわかるのですが、この駅があるのは留萌市街のある高台から海岸線へ降りたところ。写真中央の白い小屋が瀬越駅の待合室。


ここに駅があることを知らないと見逃すような位置です。


増毛方面はこんな感じ、


留萌方面にはマンションの類いも増えてきて、市街地に近づいてきたことを感じます。


駅の目の前は沖見海岸ゴールデンビーチるもいという海水浴場。


留萌から1駅、170円。この駅から海水浴場へ行く人はいるのでしょうか。


留萌・増毛の廃止を決めた2015年にJR北海道が発表したデータによると、輸送密度は1日39人、収入600万円に対して赤字が年間1億6000万円とのこと。並行国道も整備されていて、約1世紀にわたって果たしてきた役割を終えたということなのだと思います。


なお、2016年12月4日の運行最終日に「ありがとう留萌本線(留萌~増毛間)お別れセレモニー」の実施が決まっています。時間は増毛駅では15時5分から15時41分、深川行きの普通列車4932D出発に合わせてで、19時48分発の最終列車に対するお見送りも行われるとのこと。留萌駅では増毛行きの4927D出発に合わせて、14時15分から14時40分にかけて行われます。留萌駅・増毛駅ではそれぞれ駐車場は用意されないので、公共交通機関で来場するようにとのことです。

ありがとう留萌本線(留萌~増毛間)お別れセレモニーを実施します
(PDFファイル)http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/161125-1.pdf

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in 取材,   乗り物, Posted by logc_nt

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