ニューヨークの街を支えていた木材に再び命を吹き込むギター職人
自然の素材から作られる楽器からは、単なる物質としてではなく、その素材が持つ歴史やたたずまいのようなものが感じられることもあるものです。ニューヨークの街角でギター作りを続ける工房では、文字どおりニューヨークの街を形づくってきた建物の木材を再生して、新たにギターとして生まれかわらせる楽器づくりが行われています。
Harvesting Guitars from the Bones of New York City - YouTube
マンハッタン島南部のロウアー・マンハッタンにある「カーマイン・ストリート」に面した1軒のギターショップ。
Carmine Street Guitarsと名付けられたこの店は、ギタービルダーのリック・ケリー氏が手作りでギターを生みだし続けているショップ。
「全てのギターにはストーリーが備わってるんだよ」と語るケリー氏。
ケリー氏が作るギターは、ニューヨークの街角で使われていたものを再生したものばかりです。
表面には、もとの素材が持つ表情がそのまま残されているものも。
棚にギッシリと積み上げられた木材
「ほとんどの木材はただ捨てられようとしていたものを、私がゴミ箱から拾い上げてきたんだ」と語ります。中には樹齢200歳という木から切り出された木材も含まれているとのこと。
その多くは、古くから立ち並ぶニューヨークの建物で使われていたもの。
ケリー氏は、もう使われなくなった木材を集めて、ギター作りのためにストックしています。
かき鳴らされるテレキャスタースタイルのギター。よく見れば、本体をカバーするピックガードと呼ばれる部品にも、年季を感じさせる木目が浮き上がる木材が使われています。
建物を作るための木材が材料なので、作業を行う前にはクギを抜く作業から始まることも。
次は、大きなバンドソー(帯ノコ盤)を使って木材をギターの形に切り抜いて……
ヤスリなどの道具を使い、手作業で形状を整えていきます。ムービーを見ると、長い間使われ続けたことですっかり乾燥が進んだ木材の質感が伝わってきます。
コネクター用の穴を開け……
電動カンナで表面を処理。これらの作業を全て手作業で行って、ニューヨークを支えていた木材はギターへと形を変えていきます。
ケリー氏のギターは、歴史に名を残すミュージシャンにも使われているとのこと。フォークソングの神様、ボブ・ディランや……
元「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」で、独自の世界観を放ち続けるルー・リード
「クイーン・オブ・パンク」と称され、ロックの殿堂入りも果たしているパティ・スミス
そして、元「ピンク・フロイド」で、脱退後もソロ活動を続けているロジャー・ウォーターズなどもケリー氏の楽器を使っているそうです。
「この街を支えていた古い木材に再び生命を吹き込んで、楽器としてよみがえらせることができるというのは、とても素晴らしいことだと思う」
「木に新しい人生を与えて、音楽を奏でられる楽器に形を変えるというのは……」
「とてもワンダフルなことだね」と語るケリー氏でした。
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