子どもの歯をドリルで削らないむし歯治療法とは?
By John Twohig
歯をドリルで削って詰め物をするという歯医者の治療は、大人でもできれば回避したいくらいで、子どもにとってはなおさら恐怖の治療です。一方でむし歯を放置してしまうと麻酔を要する口腔外科手術が必要となり、医療費も高くついてしまうのですが、日本でも数十年間使われている歯科治療薬は、塗るだけで痛みを感じることなくむし歯の進行を防ぐことができ、低価格で子どもの歯を治療できるとして、アメリカの歯科医へ導入が開始されています。
A Cavity-Fighting Liquid Lets Kids Avoid Dentists’ Drills - The New York Times
http://www.nytimes.com/2016/07/12/health/silver-diamine-fluoride-dentist-cavities.html
むし歯に塗るだけでむし歯の進行を停止できるのは「フッ化ジアミン銀(Silver Diamine Fluoride)」と呼ばれる液状の治療薬で、むし歯に塗るだけで効果を発揮するとのこと。日本ではすでに数十年にわたって使われており、アメリカではアメリカ食品医薬品局(FDA)によって21歳以上への使用に限り保険適用され、歯の痛み止め薬として「Advantage Arrest」という商標名で販売されているそうです。
近年の研究がフッ化ジアミン銀がむし歯の進行を停止できることを示していることから、保険適用外でフッ化ジアミン銀を子どもの治療に使うアメリカの歯科医が増えているとのこと。ミシガン大学う蝕(うしょく)学部の教授であるマルゲリータ・フォンタナ博士は「フッ化ジアミン銀はドリルや注射を必要としないという素晴らしい利点があります」と話しており、何百もの歯科医院で使われているほか、18校の大学の歯学部が、小児歯科医の学生にフッ化ジアミン銀を使った治療を教えているそうです。
By littlenelly (rare but there)
ニューヨーク大学歯学部のリチャード・ニーデルマン博士は「フッ化ジアミン銀は30秒で患部に塗布できます。恐ろしいノイズをたてるドリルよりベターで、素早く、低価格で、子どもの親に奨励したいと思っています」と話しています。一方でフッ化ジアミン銀には塗布した歯が黒く変色するという欠点もあります。しかし、これは第3大臼歯のような最も奥にある歯や、自然に抜け落ちる幼児の乳歯などなら変色を気にせずに使えるといいます。
フッ化ジアミン銀はアメリカで保険が適用されないため、患者は治療費を全て支払うことになりますが、それでも通常の歯科治療より低コストになるとのこと。ある子どもはフッ化ジアミン銀を使った治療で25ドル(約2600円)を支払いましたが、ドリル治療であれば151ドル(約1万5500円)になっていたそうです。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の調べでは、2歳~5歳の子どもの4分の1がむし歯を持っています。重度のむし歯治療ではしばしば全身麻酔が使われるのですが、成長途上にある子どもの脳を危険にさらす可能性があります。
アメリカの医療費は日本より高く、経済的な理由で子どもに歯の治療を受けさせられないこともあります。フッ化ジアミン銀は低所得層の歯科治療としても有効で、安全に子どもの歯を治療することができます。変色してしまうので前歯などに使うのは難しいかもしれませんが、歯医者嫌いの子どもがいる人はフッ化ジアミン銀治療を試すのもアリかもしれません。
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