F1レーサーの視線の動きをアイトラッキングカメラで調べるとその超人ぶりがよく分かる
時速300キロメートルを超える高速でサーキットを駆け抜けるF1ドライバーには、常人とはかけ離れた身体能力が求められます。F1ドライバーがサーキットを走行する中で一体、どこを見ているのかをアイトラッキングカメラで検証する以下のムービーを見れば、高速で過ぎ去るさまざまな情報を、わずかな時間で確認して判断するF1ドライバーの超人ぶりがよく分かります。
Eye Tracking on an F1 car - YouTube
「F1ドライバーがコース上でどこを見て走っているのかをアイトラッキングカメラで検証してみましょう」
ということでテストに協力したのは現役F1ドライバーのニコ・ヒュルケンベルグと……
チーム・フォースインディアのメカニックたち。
Tobii製のアイトラッキングカメラが取り付けられたメガネを装着します。
走行前にカメラをチェック。
ヘルメットを装着して準備完了。
テスト前に「走行中は何が見えるの?何を探しているの?」と聞くインタビュアー。
ヒュルケンベルグは説明しづらいと言いつつ、「Apex(エイペックス)からエイペックスとかかな……」と答えます。
「けれど、何が起こっているのかを確認するのは楽しみだね」
ヒュルケンベルグの目線は紫色のアイポイントとして表示されます。
ということで、ピットアウトしてコースイン。
サーキットを走行し始めるとすぐに気がつくのが想像以上に素早い視線移動です。
テスト前に話していたエイペックスも、一瞬見てはまたその次という感じ。
焦点を合わせるまでの間隔は「Saccade(サッケード)」と呼ばれますが、F1ドライバーのサッケードは私たち一般人のものとはまったく異なります。
F1ドライバーの脳はサッケードをスピードアップするために鍛えられており、素早い目線移動のなかで新しい情報を素早く入手することが可能です。
分かりやすいのがコースイン時の視線移動。
コースに入る直前に一瞬だけサイドミラーに視線を移すヒュルケンベルグ。
次の瞬間には正面に視線は移り変わっています。
コクピットに取り付けたカメラでチェックすると……
ミラーで後方をチェックする時間は百分の数秒。
この短さは一般人の10分の1で、わずかな時間で後方から走行してくるマシンの情報を確認しています。
一般人では後方確認のために最短でも0.5秒かかるとのことで、F1ドライバーのミラーチェックの速さは異常なレベルとのこと。
「次に、F1ドライバーの反応速度がどれくらい速いかを試してみましょう」
赤色に点灯するシグナルが青色に点灯すればスタートの合図。
レースのスタートのような真剣なまなざしでシグナルに目を向けるヒュルケンベルグ。
司会者がボタンを押して……
シグナルグリーン
青色点灯と同時にスタートするヒュルケンベルグ。
「こりゃ、速そうだ……」
スタート時のアイトラッキングはこんな感じ。最初はステアリングにあった視線は……
シグナルへ。
よく見ると、赤色シグナルには目もくれず、青色シグナルに集中しているようです。
シグナルが青色になった瞬間……
視線は前方へ。
なんと、シグナルグリーンからアクセルONまでの反応時間は「0.09秒」
一般に人間の反応速度の限界は0.1秒と言われており、陸上競技では0.1秒未満の反応速度でのスタートはフライングと見なされます。
陸上選手が音に対する反応なのに対して……
F1ドライバーは映像に対する反応という違いはありますが、その反応速度の速さは常人を超越したレベルにあると言えそうです。
エイペックスに対する視線変更の速さは特筆すべきもの。
確認したエイペックスにとどまるのは一瞬で、すぐに次のエイペックスに目線が移ります。
こうしてF1ドライバーの美しいライン取りが成立している模様。
面白いことにいくつものボタンやモニターがつけられたステアリングに目線がいくことはほとんどありません。せいぜい、LEDインジケーターでエンジン回転数をチェックするくらい。
しかし、コースサイドの小さな情報は逃しません。
一瞬視線を移すことでピットを示すボードをチェックしています。
ピットインした後も、制限速度をキープするためのステアリングボタンには目もくれません。
しかし、ピットサインを出すクルーのカラフルなグローブや……
ジャッキはしっかり確認しています。
テスト終了。
ピットでテストの結果を確認します。F1ドライバーやメカニックたちにとっても、F1ドライバーが走行中に何を見ているのかは興味深い内容だったようです。
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