ボイスチェンジャーで性別を隠し面接してわかった意外な事実
By Bill Strain
プログラマーや開発者など技術職を目指す人たちと、その人たちを雇用したい企業とをつなげて、面接の練習を提供しているサービス「interviewing.io」が、多くのユーザーが受けた面接の練習からデータを調査すると、性別によって面接結果に差異が生じていることが判明し、その原因を調べるべく面接の志望者の性別をボイスチェンジャーで隠して実験を行ったところ、意外な事実が見えてきました。
We built voice modulation to mask gender in technical interviews. Here’s what happened. – interviewing.io blog
http://blog.interviewing.io/we-built-voice-modulation-to-mask-gender-in-technical-interviews-heres-what-happened/
interviewing.ioは簡単に言うとコンピュータの技術職向け面接の練習プラットフォームです。面接を練習したいユーザーと企業をマッチングして面接を行い、ユーザーが企業からフィードバックを受けられるというシステムになっていて、ときにはそのまま採用に至るケースもあります。
interviewing.ioに登録されている企業はGoogleやFacebook、TwitchといったIT業界の巨大企業から小さなスタートアップまでさまざま。interviewing.ioでユーザーと企業の条件が合致すると通話とチャットを使って面接が実施されるのですが、interviewing.ioで人事を担当しているアライン・ラーナー氏がユーザーの面接データを調査していたところ、次の面接に進む割合が男性と女性ユーザーで異なるということが判明しました。
もう少し正確に言うと、次の面接に進むことができた男性の数は女性の1.4倍で、企業による面接後のフィードバックの平均スコアは男性が4点満点で平均3点、女性が平均2.5点となっていて、男性の方が面接で良い結果を残していることがわかりました。この結果について、ラーナー氏は「もしかしたら女性はITに弱いというバイアスがかかっているのかもしれない」と考え、ボイスチェンジャーを使って性別を隠して面接をすると一体どうなるのか、実験してみたというわけです。
この実験ためにボイスチェンジャーのアプリを作成。以下の2本のムービーから「ボイスチェンジャーを使用していないラーナー氏の声」と「ボイスチェンジャーを使用したラーナー氏の声」を確認可能です。
Interview Without Voice Modulation - YouTube
Interview With Voice Modulation - YouTube
二つ目のムービーは見ると、ラーナー氏の声が男性のように聞こえるのがよくわかります。ラーナー氏は、ボイスチェンジャーの使用を面接を受けるユーザーにだけ告知し「面接中は性別を言わないこと」と注意した上で、毎週火曜日の19時以降に実験を行いました。実験では合計243人のユーザーが面接を受け、3分の2は男性で3分の1は女性。この243人は「ボイスチェンジャーなし」「音程変更なしでボイスチェンジャーあり」「音程変更ありでボイスチェンジャーもあり」という3つのグループに分けられています。
243人のユーザーから集められたデータを解析したところ、「面接は性別によるフィルターがかかっている」というラーナー氏の予想とは反対の結果が出ました。具体的には、ボイスチェンジャーで女性として面接を受けた男性がボイスチェンジャーを使わなかった男性よりも高い平均スコアを記録したり、ボイスチェンジャーで男性として面接を受けた女性がボイスチェンジャーを使わなかった女性よりも低い平均スコアを記録したとのことです。
「女性はITに弱いといった何らかのバイアスが面接官にかかっている」ということが男性と女性の面接結果に差異を生ませていると予想していたラーナー氏は、何とかして原因を究明しようと実験で得た面接の全てのデータを解析。すると、1つだけ違和感のあるデータを見つけます。それは、面接で失敗した女性ユーザーは、その後に別の面接にチャレンジすることなくinterviewing.ioを退会しているということです。しかも、その数は何と男性の約7倍以上にもなっていました。
以下の棒グラフは縦軸が「面接後にinterviewing.ioから退会した人の割合」で、横軸が「失敗した面接の回数」を示しています。面接を1回失敗しただけでinterviewing.ioから退会した人の割合は、女性で約33.3%、男性で4.7%。面接を2回失敗した後に退会した人の割合は女性が14.8%で男性が4.2%となっており、1回目の面接よりも差は小さくなっています。
1回目の面接後に違う企業に就職が決まったため退会した人や、1回だけのお試しとしてinterviewing.ioを使用した人がいることも考えられますが、それでも男女間でここまでの差が出るのは興味深い結果です。もしかすると女性は失敗から立ち直ることが苦手なのかも……などとラーナー氏は考えましたが、具体的な原因は不明。ただし、男女の性別の違いによるバイアスが面接にはなかったという結果は非常にポジティブなことだと感じているそうです。
なお、ラーナー氏は今回の同様の実験を今後も実施し、より多くのデータを集めて今回の実験で判明しなかった「性別の違いによって面接結果で差異が生まれる理由」について探っていきたいとしています。
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