サイエンス

ヘリウム供給不足解消へ、大量のヘリウムがタンザニアで発見される

by Frances Cacnio

燃焼・爆発しやすい水素よりも安全に扱える浮揚用のガスとして知られるヘリウムは、MRIや光ファイバーの製造でも用いられています。このため世界的に供給不足の状況にあり、25年後には枯渇する危険性もあるといわれていたのですが、タンザニアでこの状況を救えるほど大規模な「ヘリウムガス田」が発見されました。

Huge helium discovery 'a life-saving find' | EurekAlert! Science News
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-06/uoo-hhd062416.php


Discovery of massive new helium reserves is “game changer” for medical industry | Ars Technica UK
http://arstechnica.co.uk/science/2016/06/discovery-of-massive-new-helium-reserves-is-game-changer-for-medical-industry/

CNN.co.jp : タンザニアに「世界級」のヘリウム田、供給不足を解消も - (1/2)
http://www.cnn.co.jp/business/35085040.html

みずほ情報総研が2015年2月に発表した「(PDFファイル)平成26年度製造基盤技術実態調査 ヘリウムの世界需給に関する調査」によると、ヘリウムの需要は右肩上がりで増加していて、今後もその傾向が続くと予測されています。その一方で、カタールからの供給量は増加するものの、アメリカからの供給量が減少し、全体としての供給量はそう大きく増加せず、需要に対して供給不足の状況が続く見通しとなっていました。


オックスフォード大学、ダーラム大学、ヘリウム調査会社「ヘリウム1」の合同調査団は「火山活動によって生み出された高熱の影響によって、古い時代の岩盤からヘリウムが分離して浅い場所に溜まる」ということに着目して、新たなアプローチでの調査を実施。熱源と分離したヘリウムが溜まる場所との距離が近すぎると二酸化炭素によって薄められてしまうこともあり、適切な距離にあることが必要なのですが、アフリカ中央部・タンザニア連合共和国大地溝帯で調査を行い、新しい「ヘリウムガス田」を発見しました。

オックスフォード大学で地球科学を研究しているクリス・バレンタイン教授によると、調査団は「地溝の地面から泡立つように噴き出すヘリウムや窒素の見本を採取した」とのこと。今回見つかったガス田のヘリウム埋蔵量は54BCf(540億立方フィート、約15億3000万立方メートル)だと推測されています。これはMRIで考えると120万台分に相当する数。


現時点でヘリウムの年間消費量は8BCf。最大のヘリウム供給元であるアメリカの貯蔵量が24.2BCfで、アメリカ全体の埋蔵量は153BCfと考えられており、この発見は大きな助けになります。

バレンタイン教授の同僚であるピート・バリー博士は、今回用いた方法が他の場所でも同じように適用可能であると語っており、さらなる調査が進めば、新たなヘリウムガス田の発見がある可能性もあります。

ちなみに、日本では主にMRI・光ファイバー・半導体・リークテストの4分野で6割以上のヘリウムを消費。2012年から2013年にかけて供給量の不足があったため、使用量見直しや代替ガス利用、リサイクルなどに取り組んだため、消費量自体は減少傾向にあるとのことです。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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