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元Googleの中の人がハイテク企業がどうやって「ユーザーの心を乗っ取るのか」をタネ明かし


Googleに買収されたサービスAptureでCEOを務めていたトリスタン・ハリス氏が、ユーザーのサービス依存度を高めるためにテクノロジー企業がどのような手法を取り入れているのかを解説しています。マジックの経験があるハリス氏は、その手法を人間の心理を上手く利用している点でマジックに通じるところがあると評価しています。

How Technology Hijacks People’s Minds — from a Magician and Google’s Design Ethicist — Medium
https://medium.com/@tristanharris/how-technology-hijacks-peoples-minds-from-a-magician-and-google-s-design-ethicist-56d62ef5edf3#.aec83wojz

IT企業が出すサービスを使うたいていのユーザーは、「便利なサービスは自分たちのために設計されている」と考えがちですが、必ずしもそうではないとハリス氏は述べています。IT企業はどんなユーザーでも持っている「心の脆弱性」につけ込むことがよくあるとのこと。ハリス氏が挙げる、心の脆弱性につけ込む10個の手法は以下の通り。

◆01:選択肢をコントロールする
西洋文化では物事を自分で決定できる自由が尊ばれています。しかし、一見、自由な選択肢が与えられている様に見せかけて、実質的に選択権を奪うというのはマジシャンやIT企業がよくやる手法だとのこと。


例えば、夜が遅くなっても友人との会話を続けたいときに、Yelpでお店を探すシーンを考えてみます。「どこかおしゃべりを続けられる場所はない?」という希望を出すと周辺のバーをずらりと表示してくれ良い店を選ぶことができるかもしれません。しかし、一見、多くの店という選択肢を与えられたように見えるこの場面は、ハリス氏によると選択肢を制限されているとのこと。


この事実は、Yelpで「近くに良いバーはない?」という質問をすれば分かるはず。Yelpがおススメしてくれる店は先ほどの「どこかおしゃべりを続けられる場所はない?」という質問の場合と同じ。つまり、「どこかおしゃべりを続けられる場所はない?」という要求は、「近くに良いバーはない?」という要求に都合良く置き換えられたに過ぎないというわけです。

また、さまざまなサービスの「通知」にスマートフォンの画面が占領されることはよくあるものですが、通知される量が増えれば増えるほど、自分が本当に必要なものが分かりにくくなるので注意とのこと。


◆02:スロットマシーン
平均的な人は1日に150回も携帯電話をチェックすると言われています。なぜ、こんなに多く携帯電話を確認するかというと、ごくまれに「良いこと」が起こるからで、人はほとんどない「良いこと」が起こっていないかと期待して、携帯電話をチェックするとのこと。これは、確率の低い「当たり」を求めてスロットマシーンにのめり込む心理に似ており、ハリス氏は「誰もがポケットにスロットマシーンを入れている」とたとえています。

この心理を逆手にとって、IT企業はユーザーにさまざまな通知を断続的に出します。しかも、通知によってユーザーが得られる報酬は決して一定にはせずに、可変的なものにするとのこと。


◆03:重要なことを見逃す恐怖
スロットマシーンと同じように、IT企業は「1%しかないチャンスを失う可能性」を持ち出して、ユーザーを縛るとのこと。例えば、「メールサービスを停止すれば、将来提供されるお得な情報を見逃すかも」や「疎遠になっているSNS上の『友達』を友達リストから外すことで、重要な情報を聞き逃すかも」などという心理です。

しかし、ハリス氏は、日常生活を送っていれば「重要な事を見逃し続ける状態」は当たり前のことであり、このようなチャンスを失うかもしれないという不安は不要なものだとのこと。一度でも「重要な事を見逃すかもしれない」という恐怖を捨て去ってみれば、実際にはそんなに不都合なことは起きないに気づくはずで、むしろ、そのような恐怖にしばられて費やしていた時間を別の有意義なことに使える事実に気づくだろう、とハリス氏は述べています。

◆04:社会的承認
誰でも「社会的に受け入れられたい」という承認欲求があるものです。ハリス氏によると、現代社会での社会的承認はハイテク企業の手中にあるとのこと。

統計データによると社会的承認を強く望むのは10代で、サービスを考えるときに、ハイテク企業はいかにして10代の承認欲求を満たせるかを強く意識しているそうです。


◆05:ソーシャルなつながり
SNSの世界では、友達申請を受けた後に、今度は友達申請をしてみましょう、という手続きがよくあります。

例えば、LinkedInで承認を受けると、「さあ、今度はあなたの番です。承認申請をしてみましょう」というお誘いを受けます。しかし、1人から承認を受けただけで、4人も申請しなければいけないという事態は、よく考えれば不思議なことだとハリス氏は指摘しています。


招待される機会の方が、実際に招待できる機会よりも多いという事実は、SNS上の人が自分の意志で招待しているのではなく、SNS提供者がビジネス上の都合でユーザーに代わって招待をしているということを意味しているというわけです。


◆06:エンドレスな自動再生
ユーザーをサービスに縛り付ける方法は、「たとえ、満腹になったとしても食べ続けさせること」だとハリス氏は語ります。

ブライアン・ワンシンク博士の有名な実験「Bottomless Bowls」では、大きなお皿とスプーンを与えられた場合、小さなお皿とスプーンの場合よりも多くのアイスクリームを食べないと、満腹感を感じないことが分かっています。

Brian Wansink Ice Cream Social - YouTube


お皿のサイズを大きくするほどユーザーは、満たされるためにより多くの消費を行う、という理屈をIT企業は利用しています。代表的な例が、YouTubeの自動再生機能。ユーザーがアクションを起こさないと、次々とムービーが再生されてしまい、いつのまにかムービー再生にのめり込むことになります。ITサービスでは満腹感を得られないように、お皿の大きさを無限大にできるというわけです。


◆07:瞬間的な中断
IT企業はみな「瞬間的に中断させることでより多くの反応を引き出せる」ことを知っているとのこと。そのため、ユーザーの反応を得るためには、じっくり読んでもらえるメールではなく、メッセンジャーアプリを重宝するそうです。

ITビジネスにとってユーザーが中断することは好ましいものですが、これはユーザーの都合を考えない態度で敬意を欠いているとハリス氏は非難しています。

◆08:サービス側の都合をユーザー都合に結びつける
アメリカの食品スーパーで人気の商品の第1位と第2位は薬と牛乳だとのこと。そこで、食品スーパーは客に長くスーパーに滞在してもらうために、薬と牛乳を店の一番奥に置くという戦略に出ていることが知られています。

ITサービスでは同じような戦略で、そのサービスに訪れる機会を増やしているとハリス氏は述べています。例えば、Facebookで今夜のイベントを知りたいというユーザーは、Facebookアプリでニュースフィードにアクセスすることなくイベント情報にはたどり着けない構造になっています。Facebookはユーザーが希望する行為を、すべてFacebookを利用する行為に置き換えているというわけです。

◆09:不便な選択
ITサービスでは、「サービスを気に入らない場合、いつでも退会できます」「もしも好みでない場合、別のサービスを利用できます」「アプリはいつでもスマートフォンからアンインストールできます」という風に、選択する自由があることをアピールします。

しかし、ユーザーが選べる自由には何らかの「困難さ」を用意することで、ユーザーの行動を狭めることが可能です。例えば、The New York Timesの有料購読オプションをキャンセルする自由は与えられてますが、この自由を行使するには、アカウントマネージメントの担当者と話をする必要があり、指定の営業時間内に電話するよう求められるとのこと。


◆10:時間予測の不可能性
ハリス氏は、クリックすることでどれくらいの時間が必要になるかをユーザーは予測できないものであり、この不可能な事実をITサービスは悪用していると指摘してます。

例えば、ネットでアンケートを求める際に想定時間として表示している場合がよくありますが、目安の時間を承諾したユーザーは、それ以上の労力を支払うことを余儀なくされることがよくあるとのこと。セールスの世界では「フット・イン・ザ・ドア」というテクニックが知られています。これは、一度でも相手の要求を飲むと、次の要求を飲んでしまいがちという人間の心理を利用して、小さなお願いから段階的に大きなお願いをする手法です。予測される時間拘束されるのに同意することで、ユーザーは「より大きなお願い」を聞き入れてしまうものだとのこと。


以上の通り、IT企業がサービス提供時にユーザーの心理を逆手にとっている手法を明らかにしたハリス氏は、GoogleやAppleのようなリーダーとなるべき企業には、このような人間の心理を悪用する行為を慎むことで、秩序を正すための手本になってほしいと願っているそうです。

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in メモ,   ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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