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囲碁チャンピオンを打ち破ったGoogleの人工知能「AlphaGo」を作った天才デミス・ハサビスが人工知能を語る


Googleが500億円以上で買収した謎のスタートアップ「DeepMind」。当時、無名の人工知能(AI)開発ベンチャーのDeepMindをGoogleが買収した目的は、天才デミス・ハサビス氏を手中に収めたいからと噂されていました。Googleの期待通りDeepMindはAI技術を磨き上げ、学習してゲームの腕をメキメキ上げるアルゴリズム「DQN」を発表して一躍有名になり、人工知能ソフト「AlphaGo」を開発してこれまで難攻不落と考えられてきた囲碁の世界最強棋士を破るのに成功するなど、世間をあっと驚かせています。

そのDeepMindを率いるハサビス氏にThe Vergeが、AlphaGo VS 囲碁界の魔王イ・セドル(李世乭)九段の世紀の対決の第1戦が終了した翌日の第2戦が始まる前にインタビューしています。

DeepMind founder Demis Hassabis on how AI will shape the future | The Verge
http://www.theverge.com/2016/3/10/11192774/demis-hassabis-interview-alphago-google-deepmind-ai

Googleの人工知能研究所DeepMindを率いるデミス・ハサビス氏がどれくらいぶっ飛んだ才能の持ち主なのかは、以下の記事を見れば一発で理解できます。

Googleの人工知能開発をリードするDeepMindの天才デミス・ハサビス氏とはどんな人物なのか? - GIGAZINE


インタビューが行われたフォーシーズンズホテル・ソウルの一室で、韓国国内では対戦から一夜明けてすでに3300以上もの数のAlphaGo-セドル戦に関する記事が書かれたことを知ったハサビス氏は、あまりの反響の大きさに驚いたとのこと。しかし、いつも通り陽気でおだやかなハサビス氏は「ものすごく注目をあつめる『何か』を見るのは楽しいものですね」と話し、インタビューはスタートしています。

Q:
昨夜の出来事をAIの歴史において、どう位置づけていますか?

ハサビス:
囲碁は情報ゲームの最高峰です。チェスよりもはるかに複雑な囲碁でトップ棋士に勝つことは、チェスのチャンピオンをIBMのディープブルーが打ち破って以来、常に最大の挑戦でした。そして、ついにAlphaGoはやりました。

Q:
AlphaGoの戦いぶりには驚きましたか?

ハサビス:
大きな衝撃でした。しかし、セドル九段にとっては私たち以上の驚きだったでしょう。彼の表情からはそう見えました。ApphaGoがセドル九段の左サイドに深く切り込んでいったことは私たちにも予想外の動きでした。

Q:
予想以上に攻撃的だったと?

ハサビス:
AlphaGoは攻撃的で大胆でした。それはセドル九段も同じでしょう。彼は独創的な戦い方をすることで有名です。対決の序盤はとても落ち着いていて、碁盤全体を大きく使う戦いでした。伝統的なコンピューターは、個々の局面での計算(勝負)には強いのですが、局全体を見通すビジョンという点では分が悪いものなのです。

Q:
AlphaGoVSイ・セドル九段の対決の大きな目的は、現時点でのAI技術の能力を見極めることでした。昨日の戦いから何が得られましたか?

ハサビス:
私たちが望んだ通りの進化の道をたどっていると推察しています。対戦の前に勝てるかどうかは五分五分だと話しました。それはおそらく正しいと思います。セドル九段は今日(の第2戦)は異なる戦法をとると思います。本当に面白い勝負になるはずです。


先ほどのAIの歴史についての質問を完結させるならば、ディープブルーとAlphaGoの違いが重要な事です。それは、ディープブルーはチェスのルールや情報について非常に高度にプログラムされていたのに対して、AlphaGoは状況や対戦から自分で学び取る様に作られています。誰かにプログラムされたのではなく自ら学んでいくという、より人間に近い行動をとる点が重要なことです。

Q:
もしもAlphaGoがこのまま5連勝したならば、次の目標は?他のゲームでも戦うのですか?

ハサビス:
私が思うに囲碁は完全情報ゲームです。囲碁こそ最高峰です。とはいえ、確かにゲームは他にもあります。たとえば青天井のポーカーは非常に難しいものです。また、複数人との対決というのは情報が完全ではないが故の難しさもあります。戦略を要するゲームは他にもあります。しかし、囲碁はあらゆる要素を持ったゲームで、コンピューターにとって最も難しい対象なのです。


Q:
IBMのWatsonがヘルスケア(医療)分野で、例えばがん診断などの分野で研究を行っています。DeepMindは同じ土俵に上がるのでしょうか?

ハサビス:
医療分野はDeepMindにとってはほんの初期の研究という段階です。数週間前にNational Health Service(国民保健サービス)との提携を発表しましたが、それは単に医療分野で機械学習を行えるプラットフォーム作りを始めるためであって、IBMのWatsonの取り組みとは異なります。私の理解ではWatsonはエキスパートシステムのようなもので、私たちのAIとは異なるスタイルだと思います。

Q:
AIのあらゆる可能性の中で明らかなのは、DeepMindの研究がGoogleのサービスにつながるということ?

ハサビス:
ええ。

Q:
Googleのサービスのロードマップやビジネスモデル一般へAI研究を適合させるように指示が与えられているのですか?(注:DeepMindはGoogleに買収されてなお拠点をイギリスに構えている)

ハサビス:
いいえ。私たちは状況を進めるために最善のこととして何をやるのか、やりたいのかを決めることができ、研究活動についてかなりの自由が与えられています。それこそが私たちのやりたかったことだし、Googleに加わった理由ですから。自由のおかげで飛躍的な進歩が望めます。実際、ここ数年はその通りになっています。もちろんGoogleのサービスの中でも機能するようにAIを活用する取り組みは行っていますが、それらはすべてまだ始まったばかりで何かを話せるようなものはありません。けれど、スンダー・ピチャイCEOとは将来の製品作りのコアな部分を共有しています。

Q:
Googleは例えば人工知能ネットワーク構想「Google Brain」のような取り組みも行っています。Googleが行う他の人工知能研究とDeepMindの活動とで、接点や重なっている部分はあるのですか?

ハサビス:
実際のところ、GoogleとDeepMindはかなり補完的に活動しています。毎週対話は行われます。Google Brainの焦点は主にディープラーニングです。ジェフ・ディーンのように信じられない技術を持つ人がGoogle内の要所要所にいて、Googleフォトの分類機能などのような素晴らしい技術を実現しています。また、Google Brainのメンバーはカリフォルニア州マウンテンビューに拠点を構えていて製品開発チームとの距離も近くて、12カ月から18カ月周期のスパンで開発を行っています。これに対してDeepMindはアルゴリズムのような開発を2年から3年というスパンで行っています。DeepMindでは研究の開始時点で何か製品への応用を直接目指すことは必要条件としていません。


Q:
AlphaGoの開発にあたってGoogleのサポートは重要でしたか?DeepMind単独でも可能だったのでしょうか?

ハサビス:
Googleの役割はとても重要でした。AlphaGoはプレイ中は特別優秀なハードウェアが必要ということはありませんが、AlphaGoを"鍛える"ためには多くのハードウェアが必要でした。さまざまな異なるバージョンを開発して、それぞれをクラウド上でトーナメント形式で対決させました。Googleのバックアップとさまざまなハードウェアのおかげで効果的な開発ができたのであり、そのようなリソースを持たない私たち単独ではこのような短いスパンでAlphaGoを進化させることはできなかったでしょう。

Q:
話をロボット工学に移します。私はいま日本を拠点に活動しているのですが、日本はロボット技術の先端を行っています。日本でのロボットは2種類に分かれ、一つはファナックが作るような産業ロボットで、もう一つはソフトバンクのPepperのようなコンシェルジュタイプのロボットです。これらのロボットについてどう考えていますか?

ハサビス:
ファナックのロボットについて言えば、物理的なことは素晴らしくできるが、「知能」という要素が欠けています。コンシェルジュロボットはスマートフォンのパーソナルアシスタントのようなもので、事前にプログラムされたテンプレート(質問・回答例)に基づいていて、予定調和ではないイレギュラーな場面では混乱します。

Q:
では、機械学習はどのようにしてロボットの可能性を向上させるのでしょうか?

ハサビス:
機械学習は完璧に異なるアプローチです。私たち人間は新しいことから学んで能力を徐々に高めていきます、そして予想外のことに対処できます。これこそが現実世界でロボットやロボット用のソフトウェアに求められることだと思います。手順を極限レベルで数多く学習できることが、これを実現する方法だと考えています。

Q:
学習できるロボットによって最も近い将来、実現するサービスは何だと思いますか?

ハサビス:
「なぜまだその製品がないのか?」を考える必要があると思います。なぜ、あなたの代わりに家中をくまなくきれいにしてくれるロボットはないのか?それは、家はそれぞれまったく違うものだからです。間取り、家具、散らかり具合はさまざまです。同じ家の散らかり具合ですら時間によってまちまちでしょう。そのため、あらかじめロボットにプログラムするというのは不可能です。家のことをよく知り、主人のこと、主人の部屋の収納がどこにあるのかまで知るロボットが必要です。実際、これはとても複雑な問題で、まっさきに解決しなければならない問題だと思います。


Q:
個人的興味から聞きますが、ロボット掃除機をもっていないのですか?

ハサビス:
うーん。以前は持っていましたが……。あまり便利ではないので……(笑)食洗機やロボット掃除機などは比較的安価な製品だからみんなは買うのだと思います。しかし、これらの製品は実のところ知性を持っていません。徐々にですがステップをのぼっていくことで(知的になっていくことで)より便利な物になると思います。

Q:
多くの人がSFさながらに進化しているAIに少なからず恐怖を感じています。将来、人とロボットやAIとの関係はどうなると思いますか?

ハサビス:
ロボット工学について個人的にあまり考えたことがありません。私が本当にエキサイティングだと思っているAIとは科学的な部分で、科学をより早く進化させるところです。私はAIによってアシストされる科学を見たいと思います。そこでは、AIは効果的に研究を助け、多くのつまらない労働をサポートして、興味深いことを教えてくれ、山のようなデータから構造を見つけてくれ、人間のエキスパートや研究者がブレイクスルーをもっと素早く達成できます。数カ月前にCERNの研究者と話す機会がありましたが、彼らは世界で最も多くのデータと格闘しています。データの量があまりに膨大で処理できないほどです。AIが膨大なデータの中から新しい何かを見つけてくれる未来はクールだと思います。

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in メモ,   ソフトウェア, Posted by darkhorse_log

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