人間の目の水晶体を完全に再生し、視力を取り戻すことに成功
by 22Lauren
目の水晶体が濁ってしまう白内障は失明の原因の1つとしても知られています。これまで、治療のためには移植手術が必要とされてきましたが、新たにNatureで発表された研究によると、移植を行わずとも、幹細胞を利用して水晶体を「再生」し、視力を取り戻すことに成功したそうです。
'Stunning' operation regenerates eye's lens - BBC News
http://www.bbc.com/news/health-35762713
水晶体は角膜や瞳孔の下にあり、見た物のピントを合わせて網膜に写す、カメラでいえば凸レンズの役割を果たす部分です。水晶体が濁ってしまう白内障は加齢に伴って発症するのが一般的ですが、中には生まれつき白内障を患っているケースも。白内障の治療は超音波によって水晶体を破砕し取り除いた後に人工レンズを移植する、という方法が一般的ですが、既存の方法では子どもたちに後遺症を残してしまうこともありました。
今回、中国の中山大学とアメリカ・カリフォルニア大学の共同研究によって発表された方法は、白内障の子どもたちの目から濁った水晶体を取り除くのですが、その際に水晶体を覆う水晶体被膜を残すというもの。すると、残された被膜で幹細胞が活性化し、濁っていない、新しい水晶体を作り出してくれるわけです。
この方法は以前からウサギやサルを対象した実験の成功が報告されており、今回は2歳以下の幼児12人を対象に実験を行ったところ、全員において8カ月以内に通常と同じサイズの水晶体が生成されたとのこと。研究を行ったKang Zhang教授は「水晶体が完全に再生された研究はこれが初めてです。子どもたちは中国で手術され、現在でも一般的な視力を保っています」と語っており、後遺症が劇的に少ないことも含めて「これまでで最も優れた治療法」だと説明しています。
by Community Eye Health
水晶体に含まれる幹細胞は高齢者よりも子どもの方が再生力が高いため、今回は子どもに焦点を置いて研究が進められましたが、研究チームは高齢者を対象にした研究も進めており、現在のところ、治療は有効に見えるとのこと。一方で、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのRobin Ali教授は今回の研究結果について「すばらしい」とコメントしたものの、大人を対象とした実験を成功させるのは「非常に難しいだろう」と語っています。
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