精子を人工的に作り出すことに成功したと研究者が発表、しかし疑いの声も

by Colville-Andersen

中国の研究者らがマウスの精子を人工的に作り出し、子孫を残すことに成功したと現地時間の2016年2月25日にCell Stem Cell誌で発表されました。研究内容は新たな不妊治療の方法の1つとして活用が期待されていますが、一方で他の研究者からは内容への疑問も出ています。

Researchers claim to have made artificial mouse sperm in a dish : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/researchers-claim-to-have-made-artificial-mouse-sperm-in-a-dish-1.19453

Complete Meiosis from Embryonic Stem Cell-Derived Germ Cells In Vitro: Cell Stem Cell
http://www.cell.com/cell-stem-cell/fulltext/S1934-5909(16)00018-7

人工的に精子を作りだす研究としては、2011年、機能微細形態学について研究する京都大学の斎藤通紀教授らのチームがマウスのES細胞から精子と卵子の源となる始原生殖細胞(PGC)を作り出し、PGCをマウスの体内に戻したところ、オスの体内で精子として、メスの体内で卵子として成長した、というものが存在します

中国にある南方医科大学の発達生物学者Xiao-Yang Zhao教授と中国科学院動物研究所でクローン技術の専門家として働くQi Zhou教授らによると、今回発表された研究は斎藤教授の研究よりもシャーレの中で行うプロセスが長いとのこと。

すなわち、研究チームが人工的に作り出したPGCに生後間もないハツカネズミの睾丸から採取した細胞を加えたところ、14日後に精細胞のようなものを確認。作り出した精細胞をマウスの卵子に直接注入したところ、子孫を作り出すことに成功したとのこと。生まれたマウスは15カ月が経過した時点でも健康で、子孫を残すこともできたそうです。

by orientalizing

精細胞は先頭型の精子とは違って形が丸く、泳ぐことができないなど、精子とは成熟度が異なりますが、減数分裂の重要な発達ステージを終えており、一組の染色体を持っています。男性の不妊の原因の1つは減数分裂の停止にあるため、今回の研究結果は不妊治療の1つとしても利用されるものと見られています。

この報告を受けて、イスラエルにあるワイツマン科学研究所の幹細胞科学者であるジェーコブ・ハンナ教授は「非常に興味深く、重大な結果です」とコメントしていますが、一方で研究への疑いの声も。カーネギー研究所のAllan Spradling教授は「卵子に細胞を直接注入して子孫を作るという話には説得力があります。しかし、新たに生み出されたハツカネズミには後から問題が見られるかもしれません」と語りました。

また、今回の研究で作られたPGCはマウスの細胞として見ると12.5日程度の発育のものが利用されましたが、斎藤教授の研究では9.5日程度の発育のものが利用されました。そのため、利用したPGCが過去の研究のものよりも発達していたことが精細胞の生成に結びついたのではないかという見方もあります。

さらに、通常PGCが精細胞になるまで4週間かかりますが、中国の研究では14日しかインターバルを置かなかったことも疑問視されています。

斎藤教授は「この論文は非常に慎重に受け止められなければならない」とコメント。横浜市立大学・生命医学研究科の小川毅彦教授は「信じがたい」結果だと語っており、今後、研究で再現を試みる予定だとしています。

by Grace Hebert

Zhou教授によると、シャーレの中で作った精細胞を生きたマウスに注入するという方法において、発達の状態に差異が生まれるのは普通のことだとのこと。しかし、斎藤教授は、今回の研究で見られたようなスピードの加速は、精細胞が正常でないかもしれないという可能性を指摘しています。

なお、Zhou教授は「次のステップは同じコンセプトを人間に応用させること」と語っていますが、人間とマウスにおける精子の発達には大きな違いがあるため、ハーバード・メディカル・スクールのYi Zhang教授は「人々が想像するほど簡単にはいかないだろう」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by logq_fa