重力波を発見したLIGOの中の人たちが「何か質問ある？」を実施

by Rob Gallop

海外の巨大掲示板のようなものであるredditには、有名人本人が現れて行う「何か質問ある？(AMA：Ask Me Anything)」と呼ばれる名物企画がありますが、今回、そこに重力波の観測に成功したレーザー天文台・LIGOの研究者たちが降臨しました。

We are the LIGO Scientific Collaboration, and we have made the first direct detection of gravitational waves and the first observation of two black holes merging. Ask us anything! : IAmA
https://np.reddit.com/r/IAmA/comments/45g8qu/we_are_the_ligo_scientific_collaboration_and_we/

こちらが本人たちであるという証拠のツイート。中の人は1人ではなく、質問には複数のスタッフが回答しています。

そのQ＆Aの一部はこんな感じ。

Q：
重力波は物質に対してどのように作用しますか？

A：
光や電波とは異なり、作用しません。重力波はすべてを通り抜け、その過程でわずかに空間を引き延ばします。

Q：
重力波をエネルギー生成のために利用することはできますか？また、重力波にはエネルギーはありますか？

A：
重力波は測定するのが非常に困難ですが、重力波から有効なエネルギーを抽出することも同様に難問です。重力波が物質に対して与える影響はごくわずかで、仮に大量のエネルギーを運んでいたとしても、すべてどこかにいってしまうでしょう。

Q：
以下のような図が出てきていますが、私にはよくわかりません。重力波というのはどの方向に向かって動いているのでしょうか？

A：
この場合だと、重力波はあなたが見ている画面を通って(あなた側から画面の向こうへ、あるいは画面の向こうからあなたの側へ)移動しています。重力波は電磁波と同じく、池にできたさざ波のように、波の方向に対して垂直に作用する「横の波」です。対照的なのが、波と同じ方向に作用する「縦の波」で、音波などがあります。

Q：
世紀の大発見をしたのだと理解したとき、最初に思ったのはどんなことでしたか？

A：
信じられませんでした。最初は、ある種の信号が注入されたのかと考えました。しかし、そうではないとわかり、とても興奮しました。最大の問題は、あまりにも完璧すぎたことです。信号対雑音比(SN比)が24までで、繰り返しのパターンも明瞭でした。最初は本物ではないように見えました。我々は、もっと「かすかに検知する」というぐらいのものかと思っていたのですが、予想に反して、大きく、はっきりとした信号でした。

Q：
ワシントン州にある観測所と、ルイジアナ州にある観測所は、最初の数週間からお互いやりとりをしていたのですか？いつからデータや信号の比較を始めたのですか？CERNの大型ハドロン衝突型加速器の実験グループで、ATLASとCMSが独立した関係であるということを知っているのですが、LIGOでも同様なのですか？

A：
ワシントン州ハンフォードとルイジアナ州リビングストンにあるそれぞれの検出器からのデータストリームは、互いに絶えず比較されています。実際問題、単なるノイズなのか、それとも信号なのかを判断するための最良の方法の1つは、両方の検出器のデータを使って確かめることだからです。今回も、双方の検出器からのデータが用いられました。

Q：
もし重力波が十分に強ければ、人間は重力波が体を通過しているのを感じたり経験したりすることができるでしょうか？

A：
この件について、私(グラスゴー大学の学生)は数週間前にスーパーバイザーと話をしました。計算によると、宇宙船で合体しつつあるブラックホールの近くに居られたら、コンサートで音楽の鳴り響いているスピーカーの隣に立っているときに匹敵するぐらいの力を感じるであろうということが示唆される結果でした。おそらく、体の中を振動が伝わっていくのが感じられるはずですが、一方、それで傷つくことはないだろうと確信しています。

Q：
この重力波の発見により、既存の物理学の基準は再計算の必要が出てくるのでしょうか？

A：
まだです。この最初の検波は、我々が物理学から得た期待値と協調したものです。自然界のバイナリーブラックホール(ブラックホールの連星)、およびバイナリーブラックホール群の割合は、理論的な予測と一致しています。そして、今回の信号は、我々が一般相対性理論から予測していたものと、一致しています。我々はこれから、理論から逸脱した何かが起きないかどうかを注意深く観察していきます。その「何か」が起きたときこそ、真の楽しみが始まるときです。