ついに重力波の観測に成功、光による宇宙観測を補完することで宇宙研究が大きく広がる可能性


アルベルト・アインシュタインが存在を予言した「重力波」は、ブラックホール誕生の観測や、宇宙の成り立ちの解明につながる重要な天体現象と考えられています。その重力波を、アインシュタインが存在を予言してから100年の節目に当たる2016年に、アメリカのレーザー天文台「LIGO」が世界で初めて観測することに成功しました。

News | Gravitational Waves Detected 100 Years After Einstein's Prediction | LIGO Lab | Caltech
https://www.ligo.caltech.edu/news/ligo20160211

NSF’s LIGO Has Detected Gravitational Waves | NASA
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2016/nsf-s-ligo-has-detected-gravitational-waves

Einstein's gravitational waves 'seen' from black holes - BBC News
http://www.bbc.com/news/science-environment-35524440

重力波の直接観測で宇宙の新しい窓が開いた - 大栗博司|WEBRONZA - 朝日新聞社
http://webronza.asahi.com/science/articles/2016021200001.html

アインシュタインは、重い物体が激しく運動するときに周囲に重力の変化を起こし、その影響が波として伝わっていくと予言しました。この光の速度で伝わる波こそが重力波で、これまでの宇宙観測で重要な役割を持つ電磁波(光)を補完する重要な情報であると考えられています。

ブラックホール誕生の瞬間など、宇宙空間で起こるビッグイベントで重力波は放出されるので、重力波を観測できれば強力な重力で光を飲み込んでしまうブラックホール誕生の瞬間を直接、観測できるようになると期待されてきました。

そんな中、CaltechとMITが共用しているレーザー干渉型重力波天文台「Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory(LIGO)」が、世界で初めて重力波の観測に成功したことが2016年2月11日に発表されました。

発表の様子は以下のムービーで確認できます。

LIGO detects gravitational waves **Begin viewing at 27:14** - YouTube


LIGOは、Caltceのキップ・ソーン博士とMITのロナルド・ドリーバー博士らが中心となって建設した、約4キロメートルの直行する2本のトンネル内にレーザーを照射する巨大装置で、重力波が通り過ぎるときにトンネルの長さがわずかに変化することをレーザーの干渉から測定します。


今回、LIGOは地球から約13億光年離れた距離にある、太陽の36倍と29倍の重力をもつ2つのブラックホールが合体するときに発生した重力波の観測に成功しました。ブラックホールが合体するときの様子をCGにするとこんな感じです。

Two Black Holes Merge Into One - YouTube


LIGOではレーザーを4キロメートル先の鏡で反射させます。


Beam Splitterという装置でレーザーを分け、跳ね返ってきたレーザーの波長と比べることで重力波の影響を検出する仕組み。しかし、地球(地面)自体が重力波の影響を受けることから来るノイズをいかに減らすのかが鍵になっていたとのこと。


これを解決した技術的な鍵を、振り子を使って説明するリッシ博士。


振り子をゆっくり揺らすとおもり大きく振れます。これに対して非常に素早く揺らすとおもりは影響を受けずにピタリと静止します。


「quadruple suspension system」によって小刻みに"おもり(Beam Splitter)"を動かすことで地面からの影響をなくすLIGOのシステムが技術的なポイントになっています。


LIGOでは2015年9月12日に重力波の観測を開始したところ、わずか2日後の米国東部時間の2015年9月14日9時51分に重力波をキャッチすることに成功したとのこと。異なる場所で観測された重力波の波形がぴたりと一致したことから、重力波による影響以外では20万年に1度という確率から考えて、重力波に間違いないことが確認されたそうです。


2つの巨大なブラックホールが合体することで、重力波がどのように放出されたのかは以下の予想CGムービーでよく分かります。

Simulation of Merger of Two Black Holes and Gravitational Radiation - YouTube


LIGOで観測されたデータが確かなものかを世界中の研究者で検証する作業が始まることになります。LIGOは、今後5年間で重力波検出の精度を3倍に高めて観測できる範囲を27倍にする計画だとのこと。岐阜県に建設中のKAGRAやヨーロッパのVirgoなどの重力波を観測する他の装置からも重力波が検出されれば、三角測量によって重力波がどこから来たのか特定することが可能になり、重力波の活用が一気に拡大すると期待できます。これまで光で観測できなかった暗黒物質やビッグバンなどを含むさまざまな宇宙の現象が重力波の観測によって解明される可能性がありそうです。

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