「重力波とは何か?」が約3分でわかるムービー「Gravitational Waves Explained」


現地時間の2016年2月11日、国際研究チームがアメリカのレーザー干渉計重力波天文台「LIGO(ライゴ)」でついに重力波の観測が成功したことが大きな話題になっています。宇宙研究に大きな進歩をもたらすと期待される重力波の観測成功ですが、目には見えない「重力波」はいったいどのようなものか、そしてこの成功が意味しているものを理解している人はあまり多くはないはず。そんな人にピッタリなのが、わずか3分間で重力波の概要を説明するムービー、その名も「Gravitational Waves Explained(重力波を解説)」です。

Gravitational Waves Explained - YouTube


重力波とは何か?の前にまずは「重力」を解説。よく使われる例えは、宇宙を一つの巨大なゴムシートに例えて、そこに重さ(質量)のある球体を落とすというもの。ゴムシートは球体の重さによってぐにゃりとへこみますが、これこそが時空のゆがみであり、重力が生まれる源となるものです。実際には宇宙空間はゴムシートのような平面ではないので理解が難しいのですが、「時空のゆがみ」というのはこういうものが3次元的に起こっていると思っておけばだいたいOK。


このゴムシートは、質量が大きなものほど深く沈み込みます。つまり、密度が高くて質量が大きいものであるほど、周囲の時空を大きくゆがめるということにつながります。


これは、太陽を例にとって考えるとよくわかります。太陽は非常に質量が大きいので、それだけ多くの空間をゆがめています。ゆがめる空間が多いほど、生みだされる重力は大きくなるので、太陽は非常に大きな重力を持つことになります。以下の図で黄色で示されているのは太陽ですが、このようにして太陽によってゆがめられた空間の中で、地球などの惑星が重力に捉えられながら周囲を回っている(=公転している)というわけです。ここではさらに、地球の周りを月が公転するなど、2重3重の複雑な重力のバランスが成り立っているのが、宇宙の面白さとスケールの大きさを感じるところ。


そして「重力波」は、このように質量のある物体が動き、空間のゆがみが変化することで生みだされ、光と同じ速さで周囲に伝播して行きます。これこそが、重力波が「時空面のさざなみ」のように表現される理由です。


この重力波は、質量とエネルギーを持つものであればどんなものでも発生させています。例えば、二人の人間が腕を組んでぐるぐる回転するだけでも時空のゆがみは発生し、理論的には重力波を発生させています。しかし、この時に生じる変化は極めて小さなものであるので、存在しないに等しいといって問題のないレベル。


重力という力は、ほかの宇宙に存在する力と比べて非常に弱いものです。そのため、人間が検知できるほど大きな重力波が生みだされるためには、中性子星やブラックホール、またはそれらの組み合わせが高速で回転するような、巨大な質量が極めて高速で運動するという状況が必要になってくるというわけです。今回観測に成功した重力波も、2つのブラックホールが回転することで生みだされた"さざなみ"であると考えられています。


それでは、重力波はどのようにして観測されるのでしょうか。例えば、平面上に等間隔に並べた石の個数を数えて距離を測るとします。一見すると正しく距離を測れそうな方法ですが、実際には空間のゆがみに合わせて基準そのものがゆがめられてしまうので、変化を捉えることが原則的に不可能になってしまいます。これは言い換えれば、2つの点の距離を巻き尺で計るようなもの。空間のゆがみに合わせて巻き尺そのものも変化するため、「1メートル」はどんな状態でも「1メートル」となってしまうということになります。


しかし、宇宙には唯一ゆがみの影響を受けないものがあります。それが「光の速さ」です。もし、2点の距離が大きくなると、光が反射して帰ってくる時間は長くなります。


逆に2点の距離が小さくなると、かかる時間は短くなります。この光の性質を利用して空間のゆがみを検出しようというのが、LIGOをはじめとする検出装置の原理というわけです。


これがLIGOの研究施設の写真。中央にある建物から、90度のV字型に長いトンネルが延びています。


2本のトンネルの長さはそれぞれ4km。中心にある施設からは、それぞれトンネルの両端にある鏡に向けてレーザー光が発射されます。


ここに重力波が到達して空間にゆがみが生じると……


トンネルの長さがわずかに変化し、レーザー光が鏡に反射して帰ってくる時間が変化します。このようにして、重力波による時空のゆがみを検出するように設計されています。


このゆがみを検出するためには、極めて高い精度が求められます。重力波の影響を検出するために測定しなければいけない変化は、なんと10の21乗メートルあたり5ミリメートルという想像を絶する精度。逆に1メートルあたりに換算すると、1ナノメートル(10億分の1メートル)をさらに1ナノメートルに分解して、さらに1000分の1にするレベルという、もう何を言ってるのかよく分からない世界。


これほどの精度を測定しなければならないわけですが、そこには「ノイズ」という大きな問題が存在します。地上を走るトラックや雷など、地球上のありとあらゆる出来事が測定結果に影響を与えます。そのため、研究チームはさまざまなノイズ除去方法を開発し、必要な情報だけを抜き取る技術を編み出してきたとのこと。実は、LIGOはルイジアナ州リビングストンとワシントン州ハンフォードの2カ所に同じものが設置されているのもその一つ。宇宙から到来する重力波が検出されるには、2つの測定装置で同じ結果が観測されなければならない、というのがその考え方です。


今回の重力波検出に成功というニュースは、宇宙研究に大きな進歩を与えることになります。これは、いわば今まで聞こえなかった音がある日突然聞こえるようになったようなもので、従来とは全く異なる次元での観測が可能になったということを意味しています。これまでの宇宙観測は光と電波の観測によるものでしたが、ここに重力波が加わることで、これまでは「見えなかったもの」が見えるようになると期待されています。


このように、重力波の窓が開いたことは宇宙研究における一大事ということができるというわけです。この出来事に関しては、以下のサイトなども併せて読むとよく理解することができそうです。

重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/021200053/

「重力波観測」の特報に胸が高鳴る6つの理由:日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/276770/021400006/

・関連記事
ついに重力波の観測に成功、光による宇宙観測を補完することで宇宙研究が大きく広がる可能性 - GIGAZINE

衝突し合体する直前の2つのブラックホールの観測に成功、「銀河形成史がまた1ページ」か - GIGAZINE

「我々はホログラムの世界に生きているのではない」ということが明らかに - GIGAZINE

ブラックホールの誕生から消滅までをムービーで分かりやすく説明する「Black Holes Explained – From Birth to Death」 - GIGAZINE

「ヒッグス粒子」とは何かを「雪」で表現するとわかりやすくなる - GIGAZINE

宇宙を形成する謎の超物質「暗黒物質(ダークマター)」とは? - GIGAZINE

439

in サイエンス,   動画, Posted by logx_tm