タバコの値上げは貧者の喫煙率を下げる効果があるのか?

By Ben Raynal

タバコを吸う喫煙者の割合は、貧困や教育レベルが下がるほど多くなることが判明しており、アメリカでは喫煙率が貧困層で26.3%なのに対し、それ以外では15.2%と、貧困層での喫煙率が他に比べて非常に高くなっています。喫煙に対する政策の1つとしてたばこ税の増税が挙げられるのですが、データ分析およびマーケティングを専門とするPriceonomicsは過去のデータを分析し、増税が貧困層の喫煙率を下げるのに貢献していないとして、増税による効果に疑問符を投げかけています。

How Cigarettes Tax the Poor
http://priceonomics.com/how-cigarettes-tax-the-poor/

アメリカでは喫煙に対する政策として、タバコのパッケージに危険性を訴えるラベルを貼ったり、喫煙の危険性を認知させる公共プログラムなどを実施しています。また、たばこ税の増税を何度も行い、喫煙率を下げようと試みてきました。増税は、喫煙率の低下以外に税収入を増加させる狙いもありましたが、経済学者によれば、増税はタバコの消費量にほとんど影響を与えていないとのこと。経済学者の中には「タバコの価格が上がったことで禁煙する人は、初期の増税で辞められているはず」と主張する学者もいるのですが、政府による増税キャンペーンは繰り返し続けられてきました。


たばこ税の歴史は決して新しくなく、喫煙による害が広く認知される前から存在。クリストファー・コロンブスが先住民からもらったタバコをヨーロッパに持ち帰った直後から、タバコはぜいたく品として高い税金がかけられたそうです。アメリカでたばこ税が生まれたのは1862年のことで、政府にはタバコから徴収された税収を南北戦争の資金源とする目的がありました。1883年には、タバコからの税収がアメリカにおける全税収の約3分の1を占めていたたのこと。

たばこ税を導入してもタバコの人気は衰えることを知らず、1900年から1964年にかけて、1人当たりの年間タバコ消費量は54本から4000本以上にまで増加。ただし、1970年以降はテレビおよびラジオでの宣伝が禁止されたり、二度にわたる大きな増税があったことで年間消費量は急激に減少しています。


タバコに対する公共政策を実施したことで、喫煙率は1964年の42.4%から2015年には16.8%まで減少。これと同じような現象が先進国で確認されているのですが、貧困レベルが高い発展途上国における喫煙率は先進国ほどの減少を見せていないそうです。

先進国は喫煙率を下げるために増税を幾度となく実施し、アメリカのたばこ税は1989年の3倍以上。以下は1960年から2014年までのアメリカにおけるタバコ1箱の価格(青色)と、1箱当たりのたばこ税(オレンジ色)を示したグラフです。2000年を過ぎた辺りから増税が始まり、たばこ税は2009年に1ドル以上増加しました。増税に伴いタバコの価格も急激な上昇を見せています。


アメリカ全体で見ると、たばこ税の増税に比例して価格が上がり、それをきっかけに禁煙する人が増えたということになるのですが、収入別の喫煙率を見た場合、1965年から1999年にかけて、高収入の家庭では62%の減少を見せているのに対し、低収入の家庭の場合だとわずかに9%減と、収入による大きな差が生まれていることが明らかになっています。また、RTIのMatthew Farrelly氏が実施した2012年の調査では、年収3万ドル(当時のレートで約240万円)以下の家庭の喫煙率が33.7%であるのに対して、年収6万ドル(約480万円)以上の家庭の喫煙率は12.2%しかないことが判明しました。


以下の表は収入別のタバコに対する消費金額の割合を示しているのですが、年収3万ドル以下の家庭は、収入の14.2%をタバコに消費しており、喫煙が家計を大きく圧迫していることは明らかです。


また、貧困レベルが高いほど禁煙に成功する割合が低くなっていることも判明しています。2012年に実施された調査では、認知行動療法やニコチンパッチで禁煙に挑戦し、禁煙治療開始から6カ月後の時点における禁煙成功率は、高収入と低収入の人の間で2倍以上の差が生まれたことが判明。調査を行った機関は、ストレスの存在や、自らと同じ低所得者の間に喫煙者が多いことがタバコをやめづらい理由ではないかと推測しています。

このような調査結果を受けて、Priceonomicsは「たばこ税の増税は貧困層の喫煙者の禁煙を助けるどころか、彼らの生活を圧迫しているだけではないのでしょうか」と、増税政策に対して疑問符を抱いているわけです。

日本では2014年4月の消費税増税に伴い、タバコの値上げが実施されました。また、2016年4月から日本タバコ産業(JT)が主力ブランドの「メビウス」および、たばこ税の軽減措置が廃止される「わかば」「エコー」「ゴールデンバット」などの値上げを実施します。増税と喫煙率については、以前に東大社会科学研究所が行った調査結果から、たばこ税の増税による禁煙効果は一時的であり、長期的な禁煙や減煙に対する効果はあまりない可能性があるとされました。もし増税が貧困層の喫煙率を下げないのであれば、何か他の有効策を模索する必要がありそうです。

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