マウスの動きでイライラ度を判別できる技術が登場
ウェブサーフィンをしているときに、サイトの読み込みに時間がかかる、サイトレイアウトが悪い、どこに欲しい情報があるのか分かりにくい……など、さまざまな理由からイライラが募ることはよくあるものです。たいていの人はそんなページから離脱してしまうものですが、サイト運営者にはそんな「現実」を知るすべはありません。しかし、ユーザーの「マウスカーソルの動き」からユーザーがどれくらいイライラしているのかを判別できるという研究報告が出され、サイト運営者がいつ、どこでユーザーがストレスを感じているのかが判断できるようになる可能性が出てきています。
Interring Negative Emotion from Mouse Cursor Movements.pdf
(PDFファイル)http://www.misq.org/skin/frontend/default/misq/pdf/Abstracts/11979_RN_HibbelnAbstract.pdf
U mad bro? Researchers measure emotion with your mouse clicks
http://news.byu.edu/archive15-dec-angrymouse.aspx
Websites may soon know if you’re mad—a little mouse will tell them | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2015/12/websites-may-soon-know-if-youre-mad-a-little-mouse-will-tell-them/
人がイライラしている場合、机をたたいたり、ため息をついたり、貧乏揺すりをしたりと、その動作から何となく想像がつくものですが、マウスカーソルの動きにも特徴が現れるようです。ブリガム・ヤング大学(BYU)のジェフリー・ジェンキンス教授らの研究チームは、ユーザーがウェブサーフィン中にストレスを感じたり、怒ったり、落胆したりと気分に応じてマウスカーソルに特徴的な動きが見られることを発見しました。
ジェンキンス教授はAmazonのクラウドソーシングサービスを利用するユーザー65人を不作為に選んで、操作が難解な作業など依頼してイライラする状況を意図的に作り出すことで、イライラした状態でのマウスカーソルの動きを調査しました。結果は実験前の予想に反して、イライラした人は「マウスカーソルの移動量が増え、マウスカーソルの移動速度自体は低下する」というもの。イライラすればマウスを細かく、激しく動かすだろうと予想していたジェンキンス教授は、直感に反する結果に驚いたとのこと。
ジェンキンス教授は同様の実験を電子商取引サイトで126人のユーザーに対しても行ったところ、操作に悩まされてストレスを抱えるユーザーをマウスカーソルの動きから82%の精度で判別することに成功。さらに、80人のユーザーに「イライラ」など操作中に生じた否定的な感情について尋ねた調査結果から、マウスカーソルの動きから否定的な感情が生じたことだけでなく、その種類についても動きから判別できるようになったとのこと。例えば、ユーザーは取り乱したり困惑した場合には、直線や大きなカーブを描いていた軌道が、ジグザグで唐突な動きをすることが分かったそうです。
ウェブサービスでは基本的な情報の流れは「サイトからユーザー」の方向で、ユーザーがクリックやコマンド入力などの特別なアクションを起こさない限り、サイト運営者はユーザーがページを見てどのように感じているのかは判断できないことが多いものですが、ジェンキンス教授の研究結果からは、マウスカーソルの動きから、ユーザーがいつ、どこで否定的な感情を抱いたかを知ることができるという点で、「ユーザーからサイト」への新しい情報の流れによって、サイト構築やサービス品質の改善に活用できる可能性があります。
ジェンキンス教授は開発したマウスカーソルからユーザーの否定的な感情を調べる技術について特許を取得済みで、BYUの地元であるアメリカ・ユタ州のスタートアップを中心にライセンスを付与して実用化に取り組んでいるとのこと。また、ジェンキンス教授はスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスでのユーザーの操作についても初期研究を始めているそうです。
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