「失われた男性器は移植手術で復活できるのか?」、アメリカ初の生殖器移植が開始予定
By Ricardo Mestre
元プロボクサーが男性の局部を園芸バサミで切り取った事件の公判が行われているところですが、被害にあった男性の局部は失われてしまったため「見た目を完全に再現することは難しい」と医師は診断しています。世界的にも失われた男性器の治療は困難とされていますが、ジョンズ・ホプキンズ大学薬学部がアメリカ初となる「男性器の移植手術」に向けて準備中であると、The New York Timesで報じられています。
Penis Transplants Being Planned to Help Wounded Troops - The New York Times
http://www.nytimes.com/2015/12/07/health/penis-transplants-being-planned-to-heal-troops-hidden-wounds.html
アメリカ国防総省によると、2001年から2013年までの間に1367人の兵役男性が、イラクまたはアフガニスタンで生殖器を負傷し、外傷登録に記録されているとのこと。そのほとんどが35歳未満の男性で、一般的に「即席爆発装置(IED)」と呼ばれる手製爆弾による負傷であり、負傷者の一部は陰茎、あるいは睾丸(こうがん)を部分的・全体的に失っています。生殖器へのダメージは回復が難しいとされる中、ジョンズ・ホプキンズ大学が尿機能・感覚・性交能力を復活させる生殖器移植の試みを数カ月以内に開始することを発表しています。
By Alexandre Dulaunoy
生殖器の移植出術はアメリカでこれまで例がなく、世界的にも2例が報告されているのみ。一方は2006年の中国の失敗例で、もう一方は2014年の南アフリカの成功例です。器官は死亡したドナーの体から遺族の許可を得て摘出される予定で、12時間かけて血管や神経を縫い合わせる大手術になります。移植後は1カ月に1インチ(約25.4mm)のペースで移植した陰茎の中に神経が成長すると考えられ、数カ月後には失われた機能が復活すると見られています。ただし、手術後は移植拒絶反応の予防薬を一生飲み続ける必要があり、がんになる可能性が高まる恐れもあるとのこと。
ジョンズ・ホプキンズ大学は実験的に60人の移植手術を行う医師権限を下しており、成果によっては標準治療になる可能性もあるとのこと。ジョンズ・ホプキンズ大学形成外科の会長である W・P・アンドリュー・リー博士は「全機能を完全に回復できるわけではないのです」と、患者に現実的な見解を示しています。一方でリー博士は、患者が望む一連の機能を回復できると考えており、「子どもの父親になりたいという患者の願いをかなえるのが、私にとっての現実的な目標と考えています」と話しました。
生殖器を負傷した患者の中には陰茎を損傷したものの、睾丸や精巣が残っているケースがあります。その場合、陰茎のみを移植すれば、生まれてくる子どもは遺伝学的にも患者の子どもになるとのこと。南アフリカの成功例では、割礼によって陰茎を失った若者が移植手術により性交能力などを回復し、実際に父親になることができたそうです。睾丸を失った患者でも陰茎の移植手術を受けることができますが、尿機能などは回復するものの、精子が生産されないため、生物学的な子どもを持つことは不可能な状態になります。
ジョンズ・ホプキンズ大学の生命倫理学者であるジェフリー・カーン氏は、「主にトランスジェンダーの人向けに患者自身の組織から陰茎を作成する技術が存在しますが、陰茎を勃起させることは移植なしではできません」と話しています。「ジョンズ・ホプキンズ大学の医療チームは、陰茎を修復・復元できない場合、移植が最良の解決策と考えたのでしょう」と予想しています。もし移植がうまく行かなければ切除することも可能で、切除後に手術前より悪い状態になることは少ないそうです。
なお、1回の手術のコストは20万ドル(約2400万円)から40万ドル(約4900万円)と見積もられていますが、今後数カ月以内に行われる予定の最初の手術に関しては、ジョンズ・ホプキンズ大学が費用を負担する予定です。ジョンズ・ホプキンズ大学は手術費用の補助を国防総省に依頼しているほか、術後の生涯にわたって必要となる移植拒絶反応の予防薬の費用については、アメリカ退役軍人省が支払う見込みです。
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