世界初の「ペニスの完全移植手術」が見事成功か、移植したペニスの勃起やオーガズムも確認

記事作成時点では、男性器を移植する手術は世界で4例しか報告されていません。2006年に中国の広州で行われた世界初の陰茎移植手術では、移植した男性器に対して患者の体が拒絶反応を示し、移植後の合併症が始まると同時に血液供給が不十分な状態に陥り、最終的に男性器が壊死(えし)してしまい、失敗に終わっています。

また、南アフリカでは、割礼に起因する感染症でペニスを失った患者に行われた手術成功例が2件報告されています。アメリカでは、陰茎がんによってペニスを部分的に切除した後に移植が行われた手術が1例報告されていますが、報告された手術例はいずれも部分的、あるいは陰茎部分のみを移植したもの。それに対して、男性兵士が失ったのは陰茎だけではなく、陰嚢(いんのう)や下腹壁なども含まれ、その手術の規模は前例と比べられないほど大きいものとなることが予想されました。

男性兵士が手術に同意し、ドナーからの臓器が得られたことで、世界で初めてペニスを含む生殖器全体の移植手術が2018年に行われました。移植臓器の全体重量はおよそ5ポンド(約2.26kg)で、移植する範囲は10インチ(約25cm)×11インチ(約28cm)に及んだとのこと。ただし、倫理的な問題が存在するため、精巣は移植されなかったそうです。

ペニスと陰嚢を移植して性器を再建し性機能も回復させる手術が世界で初めて行われる - GIGAZINE

そして、手術が無事に成功してから1年が経過し、医療チームの症例報告は、男性兵士がほぼ正常に勃起できるようになり、オーガズムが得られるまでに回復したことを伝えています。医療チームは「男性兵士は移植された陰茎の軸と先端に正常な感覚を持ち、触覚を局在化させることができます。患者にはいきみや頻尿がみられず、立ったままで尿を強い勢いで排出できます」「もし精巣も移植していたら、ドナーのDNAを含んだ精液を射精できていたでしょう」と報告しました。

通常、臓器の移植手術では拒絶反応が予想されるため、患者には免疫を抑制する薬が処方されます。しかし、男性兵士はドナーの骨髄を注入することで、免疫抑制剤の量を劇的に減らすことができたとのこと。記事作成時点では男性兵士に合併症や拒絶反応の様子は見られていないとのことで、医療チームは「今後5年～10年以内に薬の投与自体が不要となること」を期待しています。

手術から1年が経過し、男性兵士は義足の助けを借りながら自立生活を行い、フルタイムで大学に通っているとのこと。男性兵士は「自分を長い間男性と見なすことさえできませんでした。手術を受けたことは後悔していません。手術に同意したことは私がこれまでに行った最高の決断の1つでした」と語っています。