デザイン

色見本「PANTONE(パントン)」はどのように「色」の世界標準となったのか?

by Tom Page

プロのデザイナーは、東洋インキのCOLOR FINDERや、ドイツ・HKSのColour Guideなどの「色見本帳」の色名や色番号をもとにデザインに使う色を指定していますが、色見本帳の中でも世界で広く使われているのが「PANTONE(パントン)」です。ニュースサイトのThe Atlanticがパントンの誕生秘話や、世界標準の色見本となるまでの経緯などを明かしています。

How Pantone Became a Global Authority on Color - The Atlantic
http://www.theatlantic.com/entertainment/archive/2015/11/how-pantone-became-a-pop-culture-icon/414043/

パントンの色見本帳「パントン・マッチング・システム」は、長方形の台紙に色・色名・色番号が書かれたもので、デザイナーが印刷屋や染色職人に色を明確に伝えるための手段として生み出されました。

by Sinéad Cochrane

そもそも、人間が色を認知する際には、紙・布・壁などの素材の種類、光の当たり方、天候、時間などに影響を受けます。また、ひとりひとりの色認知能力の差異によっても色の受け取り方に違いが生まれます。例えば一口に「空は青い」と言っても、「青」の濃淡や感じ方はひとりひとりの主観に基づいています。そこで、アメリカ人のLawrence Herbert氏が、インクの濃淡を正確に指定して色の標準ルールを決める方法を1963年に考案。この方法を使えば、光の当たり方や他の状況に左右されず、色番号で正確に色を指定することが可能で、グラフィック、ファッション、インテリアのデザイナーが色を使う際に、一体どの濃さの「青」のことを話しているのかが分かるというわけです。

その後、Herbert氏は色見本帳で得た収益をもとに、自身が務めていた会社を買収して社名を「パントン」と改めました。「色合い」を意味するtoneを合わせて作られた「全ての色」を意味する造語です。パントンの色をもとにして、さまざまな企業が製品のブランド性を保つために色番号を利用しています。例えばコカ・コーラの赤色はパントンの色番号で表すと「PANTONE 484」、スターバックスの緑色は「PANTONE 3298」という番号で表すことができ、色番号のおかげで世界中で同じ色に統一することが可能です。


パントンの色見本帳が世界中に普及したきっかけはニューヨークで開催されるファッション・ウィークです。ファッション・ウィークの開催中に、デザイナーが会場やバス停などあちこちでパントンの色見本帳を持ち歩いていたため、多くの人の目に触れてパントンが一躍有名となりました。

パントンは、日本ではソフトバンクとコラボレーションした多色展開の携帯電話「PANTONE」でその名がよく知られています。パントンの公式サイトでは、色見本帳をコンセプトにしたマグカップやiPhoneケースの販売も行われています。

Pantone Universe Home: Mugs, Travel Cups & More
http://www.pantone.com/pantone-universe/housewares


雑貨の他にも、ベルギーのブリュッセルには、なんとパントンの色見本帳をイメージしたホテルまで存在します。パントンの上級副社長であるRon Potesky氏は、「パントン自身がこれほどまでにブランド力を持っていたことに驚いている」と語ります。

Boutique hotel Brussels - Design Hotel in Belgium - Pantone Hotel
http://www.pantonehotel.com/


Potesky氏が「パントンのコラボ製品の中で最もユニークかつ実用性の高いアイテム」とコメントしているのが、日本で販売されている病院用のカラースクラブです。スクラブとは、もともと手術着として使われていたもので、血液の「赤」の補色である緑や青などのスクラブが存在していました。そこで手術着以外にも白衣の代わりに医療スタッフが着る「カラースクラブ」がカラフルなパントンの色見本を使って開発されたというわけです。

PANTONEカラースクラブ|フォーク株式会社
http://www.folk.co.jp/medical/scrub/pantone.html


他にも、フランスではパントンの色見本を現代のポップ楽曲名で表す「Panto'N'Roll」というプロジェクトがあり、例えばビートルズの「イエロー・サブマリン」をもとに、黄色のPANTONE 129Cが「Submarine」と名付けられたり、エルヴィス・プレスリーのカバー曲「ブルー・スエード・シューズ」をもとに水色のPANTONE 299Cが「SUEDE SHOES」と名付けられたりしています。

Chic & Artistic
http://chic-artistic.com/#pantonroll/


パントンは1755色の印刷用色見本、2310色のファッション・家具・インテリア用色見本について特許をもっていますが、いまや色見本の使用料よりも、パントンの色見本帳をもとにしたアイテムの方が市場に浸透しています。アイテムだけでなく、デザインそのものにパントンの色見本帳を参考にしたものがあり、例えばGoogle Play ミュージックの「音楽を聴こう(Listen Now)」機能のデザインは、パントンの色見本帳のレイアウトによく似ています。


The Atlanticの記者であるAnne Quito氏は、「1900年代に『コダック』という単語が『写真』と同義であったように、『パントン』が色の多様性を示す単語として普及していくでしょう」とコメントしています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「中世のPantone」17世紀に記された水彩絵具の調色ガイドブックが公開中 - GIGAZINE

カラフルなPANTONE(パントン)の色見本チップ風クッキー - GIGAZINE

Googleのマテリアルデザインで使える色が並び、クリック一発でカラーコードのコピーも可能な「Material UI Colors」 - GIGAZINE

Apple・Google+・WordPressなど各社のブランドのカラーをまとめた「Guideline Colour」 - GIGAZINE

1億以上の色を知覚できる「スーパービジョン」を持つ女性が12%もいる可能性 - GIGAZINE

1600万色以上のカラーを表現できるLED電球「Philips hue」であらゆる色に変えまくってみました - GIGAZINE

in メモ,   デザイン, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.