サイエンス

世界で初めて人間の子どもの肺からカーボンナノチューブが見つかる

By Stefano Montagner

カーボンナノチューブ」は、ナノメートル(10億分の1メートル)サイズのチューブ状のカーボン(炭素)で、人の髪の毛の5万分の1の太さとダイヤモンド同等の強さを誇る優れた材料です。1991年に当時NECの筑波研究所に勤務していた飯島澄男博士により発見されたカーボンナノチューブですが、何とフランスのパリに住む子どもの肺の中からも発見され話題となっています。

Carbon nanotubes found in children's lungs for the first time | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/dn28370-carbon-nanotubes-found-in-childrens-lungs-for-the-first-time/


カーボンナノチューブはナノサイズの極小素材でありながら、ダイヤモンドと同等の強さを持ち、高い伝導性を持っていながら銅の1000倍まで電流に耐えられ、そして非常に軽量です。カーボンナノチューブはコンピューティングや衣類、ヘルスケア分野での活躍が期待されており、実際に「カーボンナノチューブコンピューター」が製作され話題を呼びました。

世界初の「カーボンナノチューブコンピューター」製作に成功、実動作も - GIGAZINE


そんなカーボンナノチューブですが、2008年に公開された研究結果によれば、ネズミの体内にカーボンナノチューブを注入すると「アスベストにより引き起こされる免疫反応」に似た反応が確認されており、人体に何かしらの影響がみられる可能性も示唆されています。

そして新たに公開されたのが、パリ・サクレー大学のファティ・ムーサ氏による「航空路から流れた流体」に関する調査結果。この調査では航空機の大気環境に与える影響を、高解像度の電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光による検査で調べています。この調査の中で、ぜん息にかかった64人の子どもの中の一人の肺の中からカーボンナノチューブが見つかりました。

以下の画像の赤矢印部分にあるのがカーボンナノチューブ。


なお、64人のぜん息持ちの子どもの内、5人の子どもの肺からは、体内から不要な粒子を取り除く役割を持つ免疫細胞「マクロファージ」が検出されています。

カーボンナノチューブが体内から検出されることがどれくらい珍しいことなのかは現在のところ不明ですが、調査では航空路と同等の環境汚染レベルの場所でも同様の調査を行っていますが、子どもの肺の中からカーボンナノチューブが見つかることはありませんでした。また、カーボンナノチューブと病気のつながりも実証できていません。それでも、「ぜん息を持つ人は、特にマクロファージによる不要物除去能力が弱い」とムーサ氏は語っています。

また、もしもカーボンナノチューブが直接的に有害ではなかったとしても、カーボンナノチューブには他の分子とくっつくことのできる広い表面積があるので、体に何かしらの害を与える汚染物質などを肺や体内の奥深くにとどめる役割を担う可能性はある、とムーサ氏。

By Geoff Hutchison

ノースカロライナ州大学のジェームズ・ボーナー博士は、カーボンナノチューブの検出は、ここ数年行われてきた他の大気汚染に関する研究ではカーボンナノチューブが見つからなかったことに対する「警告」として扱われるべき、と主張しています。

カーボンナノチューブによる影響について、ロンドン大学のジョナサン・グリッグ氏は「カーボンナノチューブがアスベストのようにガンを引き起こす可能性はほとんどないと考えている」とコメントしています。また、カーボンナノチューブはアスベストよりも非常に小さいことから、もしもカーボンナノチューブを吸引したとしても「恐らく化石燃料を吸引した時のように何も起きないだろう」とグリッグ氏は推測しています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii