世界初の「カーボンナノチューブコンピューター」製作に成功、実動作も

By Geoff Hutchison

シリコンウェハーとトランジスタからなる現代のコンピューターの進化が限界に達しつつあるといわれている中、スタンフォード大学の研究チームが次世代コンピューター技術のひとつである「カーボンナノチューブコンピューター」を製作して世界で初めて計算処理を行い、実現に向けて新たな一歩を踏み出しました。

Stanford scientists create world's first carbon nanotube computer | The Verge
http://www.theverge.com/2013/9/25/4769658/stanford-scientists-create-worlds-first-carbon-nanotube-computer


このカーボンナノチューブコンピューター(CNTコンピューター)の製作に成功したのは、米スタンフォード大学の科学者チームです。研究チームの一人、Max Shulaker氏は「Nature」誌に発表した論文の中で「これは現時点で、CNTを使った最も複雑な電気回路です。これまでにも様々な研究結果は発表されてきましたが、本当に使い物になるかということについて誰も答えを出せていませんでした」と今回の成果の意義について語ります。

「カーボンナノチューブ」は、炭素原子が構成するきわめて微細な構造物です。網状に結合した炭素原子によるシートを丸めて円筒状にしたような構造をしており、「ナノ」の名前が示すように、その大きさは0.4~50nm(ナノメートル)です。原子ひとつの大きさが0.1nmなので、まさに「原子レベル」の構造物です。


現在、ほぼすべてのコンピューターはシリコン製のウェハー上にトランジスタ回路を構成したシリコンチップによって作られていますが、「集積回路上のトランジスタ数は、18か月(=1.5年)ごとに2倍になる」というムーアの法則に沿うように進化を続けてきた結果、その進化にも限界が近づいていると考えられています。そんな中、高い伝導性、高速スイッチング性能、そして省サイズ性を備え、高速処理と高効率の両方を実現するプロセッサとして期待を集めるのが、このCNTコンピューターです。しかし、その実現には「自己組織化」と「導体と半導体の選別」という2つの課題がありました。

「CNTを思うように配列すること、そして完全な信頼性を保証するために、多くのことに取り組まなければなりませんでした」とShulaker氏は語ります。「何億個もの回路が並ぶチップの世界では、たった『2%の不良率』でも非常に大きな問題になるのです」

By SolarWorld USA

この問題を克服するため、製作プロセスの段階において、金属特性を帯びた(欠陥の)CNTを電気により蒸発させてしまう「欠陥免疫技法(imperfection-immune design)」と呼ぶ方法が開発されました。Shulaker氏によると、この手法は将来にCNTトランジスタを大量生産する段階にも応用が可能で、「シリコンチップのコンピューターと張り合えるものになるということを示している」と語ります。

多くの努力により実現されたCNTコンピューターですが、現時点で搭載されているトランジスタは178個、可能な処理は単純な計算とソート処理、2点間のトグリングのみとなっています。まだまだ歩き出したばかりのCNTコンピューター技術ですが、Shulaker氏は将来にはこの技術が実用化されるときが来て、「いま『シリコンバレー』と呼ばれているものが『カーボンバレー』と呼ばれる日が来ると思っています」と語っています。

By Gareth Royle

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