サイエンス

寿命を60%伸ばすことが特定の遺伝子を削除することで可能に

By new 1lluminati

SFに登場する「不老不死」の技術は、現実世界の人々にとっても非常に魅力的なもので、これを実現させるための研究が行われていたりします。そんな中、特定の遺伝子を削除することで細胞の寿命を約60%も伸ばすことに成功した、と研究者が発表しました。

A Comprehensive Analysis of Replicative Lifespan in 4,698 Single-Gene Deletion Strains Uncovers Conserved Mechanisms of Aging: Cell Metabolism
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(15)00465-9

Deleting genes could boost lifespan by 60 per cent, say scientists - Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/news/science/science-news/11925154/Deleting-genes-could-boost-lifespan-by-60-per-cent-say-scientists.html

アメリカ初の老化に関する研究を独立して行うための機関「The Buck Institute for Research on Aging」とワシントン大学が、特定の遺伝子を欠失させることで酵母細胞の寿命を伸ばすことに成功したことを発表しました。

「特定の遺伝子」というのは238種類もの遺伝子を指しており、これは人間を含む哺乳類の遺伝子の中にも多く存在するものだそうです。また、研究者は生物の体内にあるこれらの遺伝子を欠失させることで、生物の寿命を劇的に伸ばすことが可能になると考えています。

By Stuart Caie

「この研究は、老化と遺伝情報のつながりや『老化とは何か』ということに注視したものです」と語るのは、論文の第一著者であるブライアン・ケネディ博士です。ケネディ博士は、「我々が見つけた老化に関係する遺伝子の約半分は、哺乳類の中にも存在するものです。理論上、これらの遺伝子が寿命を伸ばす治療のためのターゲットとなります。そして、我々が今行わなければいけないことは、どの遺伝子が老化に強く影響を及ぼしているのかを解き明かすことです」と、今後の目標についても語っています。

ケネディ博士たちが行った研究では、どの遺伝子が老化の原因になっているのかを断定するため、細胞の寿命、つまりは「細胞の分裂回数」を計測しています。細胞の分裂回数は無限ではなく有限で「複製寿命」と呼ばれており、この複製寿命を調べるのが容易な出芽酵母を利用することで、「どの遺伝子を欠失させると複製寿命が変化するのか」を調査したというわけ。調査では何と4698種類もの遺伝子をひとつずつ欠失させ、どの遺伝子を欠失させると複製寿命が変化するのか、を計測していったそうです。

By Zappys Technology Solutions

研究の結果、238種類の遺伝子が複製寿命と何かしらの関係性を持っていることが発覚。そして、中でも「LOS1」と呼ばれる遺伝子は、欠失すると細胞の寿命が約60%も伸びることが明らかになっています。「LOS1」は「断食によるカロリー制限」や「寿命を伸ばすこと」と関係した遺伝的要素に深く関わるものだそうで、「LOS1」を欠失することで断食がもたらす老化遅延効果と似たような現象が生じることが明らかになったというわけです。

論文の共同執筆者であるマーク・マコーミック博士は、「我々の研究の中で最も素晴らしい成果は、単一の遺伝子欠失により酵母菌が寿命を約60%も伸ばすことを発見したこと」と語ります。


「老化」と「断食」の関係は長らく注目されてきたそうですが、2015年6月に南カリフォルニア大学のバルター・ロンゴ氏が「周期的な低カロリー食の摂取で『老い』を遅らせることが可能」とする研究結果を発表しています。これは断食を模倣した低カロリーな食事(FMD)を続けることで、成長に必要なホルモンのIGF-I値を減少させ、これが老化防止につながるというものでした。FMDは個人のカロリー摂取量を通常のものから34~54%カットしたもので、老化を遅らせるだけでなく、心臓病や癌を発症するリスクを減らすことにもつながることが明らかになっています。

周期的な低カロリー食の摂取で「老い」を遅らせることが可能なことが判明 - GIGAZINE


今回明らかになったのは「特定の遺伝子を欠失させることで細胞の複製寿命が伸びる」ということだったわけですが、これらの遺伝子が哺乳類や人間の体内でも全く同じように働くのかどうかは未知のところ。それでも、人類の夢とも言える不老不死や長寿を実現するための新しい手がかりが見つかったことには違いありません。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
平均寿命100歳の世界で人はかつてないほど充実した人生を送れる - GIGAZINE

不老不死の霊薬「エリクサー」が現実のものになる可能性が浮上 - GIGAZINE

人類の見果てぬ夢「不老不死」が死よりも恐ろしい5つの理由 - GIGAZINE

寿命が10倍に延びる技術を開発、人間の場合は800才まで寿命延長が可能に - GIGAZINE

長時間座っていることは喫煙並にあなたの寿命を縮める - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.