サイエンス

スタバのパンプキンスパイスラテに学ぶ科学の力で食べ物に香りを加える「人工香料」の作り方


バーガーキングの直火焼きパティの香りがする香水」や「クリの香りが大爆発するペプシ」「マツタケを使わずマツタケパウダーとエリンギで作る松茸ご飯もどき」など、科学の力を使えばありえない風味の組み合わせを作り出すことが可能です。そんな現代社会の食品産業には欠かせない「人工香料」がどのようにして作られているのかを「SciShow」が解説しています。

Flavor Science: What's Really in a Pumpkin Spice Latte - YouTube


スターバックスの「パンプキン スパイス ラテ」には実際にカボチャが入っているわけではありません。


しかし、これを飲むと、舌の表面に広がる舌乳頭と呼ばれる部分が味を感知します。そして、脳が「パンプキンパイ風味だ!」とドリンクの風味を判別するわけです。


そして、鼻から入ってくる香りで「パンプキンパイの香りだ!」と感じることもできます。


このように食べ物に風味を付与する香料には、「natural flavors(自然香料)」と「artificial flavors(人工香料)」の2種類が存在します。


そんな食品用香料を調合する専門家が「フレーバリスト」です。フレーバリストは香料について5年以上学び、The Society of Flavor Chemistsによる資格を保有する人を指すそうです。


フレーバリストの手を借りれば、どのような香りでも実際に作ることが可能で、どのような味も再現でき、さらにはそれらを比較的安価に実現できる、とのこと。


しかし、どのような成分を組み合わせれば特定の風味になるのかという情報は、ほとんどの場合、秘密とされています


なお、アメリカでは食品用香料はFDAの認可を受けてリストに載った「安全なもの」でなければ使用できません。


自然香料として挙げられるのは、木樹皮や肉、イーストなど。


それに対して、FDAが人工香料として定義しているのは、スパイスやフルーツ、野菜などの自然由来ではない香りを与える物質。


バナナの香りは、成分として含まれるイソアミルアセテート由来のものです。


これが自然香料。


しかし、アミルアルコールと硫酸と酢を調合すると……


イソアミルアセテートを生成できてしまいます。


バナナの成分ではなく調合して作り出したイソアミルアセテートは「人工香料」に含まれる、というわけです。


そんな研究所の中で作り出される「人工香料」の中で、最初に生み出されたのがバニリン。これは、バニラの香りの主要な成分となっている物質です。


バニリンは香りを追加するのに非常に適したの構造をしており、酸素原子の配置により水に溶けやすくなっています。


さらに、ベンゼン環を持っているので、非常に強い香りも持っているとのこと。


自然由来のバニラの香りは、バニラの豆から抽出できるのですが、これを生産するのは非常に困難です。世界中で使用されるバニラの香りの0.2%が天然由来のもの。


対して、人工香料のバニラはなんと年間約1万トンも使用されています。


なお、世界中で使用されている人工香料のバニラの75%はアイスクリームとチョコレートに使用されているそうです。


また、古くから使われている人工香料のひとつに、ブドウ味のキャンディーなどに使われる……


アントラニル酸メチルがあります。


これはオレンジの花に含まれる物質で、1800年代には貴重な香りとして重宝され、香水として使用されたりもしました。


このアントラニル酸メチルを生成すべく、研究者が編み出したのがメチルアルコールとアントラニル酸を調合する方法。このアントラニル酸がベンゼン環を持っているので、これも強い香りを持っています。


この手法は20世紀前半になって食品用香料を作り出す研究者たちにより広まりました。


なお、アントラニル酸メチルの香りはコンコードに近いとされています。


そういうわけで、ほとんどのブドウ風味の食べ物(アントラニル酸メチルで風味付けされたもの)は、お店で購入できる実際のブドウとは異なる風味に感じるわけです。


さらに、食べ物の「うまみ」を増したい場合、グルタミン酸ソーダ(グルタミン酸ナトリウム、MSG)を足すという方法もあります。


しかし、ある研究でMSGを大量にネズミに注入したところネズミが死亡してしまい、その危険性が取り上げられることもあります。けれども、研究者によると人間とネズミでは体内でのグルタミン酸塩の作用が異なり、「水でさえ摂取しすぎれば有毒になる」とMSGの危険性ばかり取り上げることにも問題がある、と主張しているそうです。


なお、このMSGに関係する症状として「中華料理店症候群」というものがあります。


ここまでのような、単一の物質で香りを再現できるものの場合は比較的簡単に物質を作り出すことができます。しかし、ピザのような複数の物質が香りを形成しているものの場合、香りを再現するには複数の物質が必要になります。


そこでフレーバリストが開発したのが「フレーバーパック」です。これを使い、食品会社は複雑な香りを再現しています。


フレーバーパックを作成する作業は、単に香りを構成する物質を組み合わせるだけの作業ではありません。フレーバリストは、人工香料と同じ物質が香りを付与する食品の中に含まれていないか、なども考慮しながらフレーバーパックを作成します。


通常、「パンプキン スパイス ラテ」は「カボチャ味」を意味するわけではありません。そこで、フレーバリストはシナモンやクローブ、ナツメグ、ショウガなどをヒントにして香り付けします。しかし、実際にこれらのスパイスをドリンクの中に入れてしまうと、チャイのような風味になってしまいます。そこで、フレーバーパックでは「パンプキンパイの香り」として強い印象を与えるであろう「焼きたてのパンプキンパイの香り」を再現することで、ドリンクを飲んだ人の脳に「パンプキンパイの香りだ」と錯覚させるように香り作りに取り組んでいる、とのことです。


なお、「パンプキン スパイス ラテ」とは少しだけ名前が異なりますが、スターバックスからパンプキンパイ風味のドリンクとして「パンプキンパイラテ」が販売中です。

スターバックス ディスカバリーズ® パンプキンパイラテ|スターバックス コーヒー ジャパン

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in サイエンス,   動画, Posted by logu_ii

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