電子タバコはタバコよりも有害性が約95%低いことが判明し禁煙支援ツールとしての効果も期待
By Michael Dorausch
細い棒状のデバイスの中で液体を揮発させて水蒸気を吸引する電子タバコは、レッドブル味・アップル味などさまざまなフレーバーがあり、欧米の若者を中心に使用者が増加しています。電子タバコユーザーが総人口の約5%ほどいるイギリスで、保健省が「電子タバコは実際のタバコよりも有害性が低い」としたレポートを公開し、禁煙の支援ツールとしての使用を推奨するべきだと結論づけています。
PHE standard publication template - Ecigarettes_an_evidence_update_A_report_commissioned_by_Public_Health_England.pdf
(PDF)https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/454516/Ecigarettes_an_evidence_update_A_report_commissioned_by_Public_Health_England.pdf
E-cigarettes around 95% less harmful than tobacco estimates landmark review - Press releases - GOV.UK
https://www.gov.uk/government/news/e-cigarettes-around-95-less-harmful-than-tobacco-estimates-landmark-review
イギリスの保健省の依頼によりPublic Health England(PHE)が2014年の調査結果をまとめたレポートによれば、電子タバコにはタバコの煙に含まれる有害物質が含まれることもありますが、その含有量はタバコと比べて極めて低く、電子タバコはタバコよりも有害性が95%低いとのこと。Public Health Englandは電子タバコの安全性だけでなく、他の研究機関が公開した電子タバコによる健康被害についてのレポートについても、研究結果が有用であるかどうかを調査しています。
By Ecig Click
PHEは2015年1月21日にアメリカの医学誌に掲載され話題を呼んだ「電子タバコの加熱温度を上げると有害化学物質のホルムアルデヒドが発生し、これを深く吸い込むことで生じるがんリスクは通常のタバコと比べて最大15倍に跳ね上がる」という研究報告書を調査しました。
調査した結果、PHEは「電子タバコは一度に吸引する時間が長くなるほど加熱温度が上昇するのですが、吸引時間が長くなるのは電子タバコのフレーバーが残り少ないときなどです。これはユーザーの間でドライパフと呼ばれている現象で、吸い込む蒸気の味がまずくなるため、ユーザーはすぐにドライパフ状態だと気付きます。調査したユーザーの吸引習慣からドライパフを避けることが判明しており、また、電子タバコユーザーから人体に危険が及ぶくらいのホルムアルデヒドが検出されたというデータはありません」と研究を否定し、一連の報道を「メディアによる電子タバコのネガティブキャンペーンである」と批判しています。
また、2015年2月に発表された「電子タバコの蒸気をネズミに接触させると肺細胞および組織に対する酸化作用と炎症反応を引き起こすことが判明し、電子タバコの蒸気は人間の健康に悪影響を及ぼす可能性がある」という論文に対しても、「タバコの代替品として利用されることがほとんど。ネズミの肺に悪影響がでたという実験は、電子タバコの蒸気しか使用されておらず、タバコの煙が肺に及ぼす影響については触れられていません。タバコの煙と電子タバコを比較するパートもありましたが、それはフリーラジカルについてのみです。マウスを使った実験結果から実際の人間に被害をもたらすかどうかは結論づけるにはデータが少なく、妥当性は低いと言えます」と、こちらについても否定しています。
By nodigio
また、レポートによるとイギリスにおける電子タバコユーザーは260万人で、その内訳は喫煙者、元喫煙者、禁煙に挑戦しているユーザー、禁煙したものの喫煙習慣に戻りたくないユーザーがほとんどを占めており、喫煙経験が一切なしで電子タバコを使い始めたというユーザーはほんの一握りだったとのこと。このことから、メディアで時折言われる「電子タバコはタバコを始めるきっかけとなるゲートウェイになり得る」という報道を「電子タバコがタバコのゲートウェイになっていることを示す確実なデータはない」としています。
PHEは「2015年現在、約8万人が喫煙が原因で命を落としています。もし、全ての喫煙者が電子タバコに代えたら、年間死亡者数は約4000人減少、実際にはもっと減る可能性があります」と述べており、禁煙の支援ツールとしての使用を推奨し、国民保険サービスのNHSが禁煙を考えている喫煙者に対して電子タバコを支給すべきと主張。ただし、電子タバコの平均20ポンド(約3800円)という価格、支給する期間などを考えると予算面での議論が必要になってきそうです。
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