アヘン・ヘロイン・モルヒネをパンやビールのように酵母菌から作ることが可能に
By mystuart (on and off)
慢性的な痛みを抱える患者の緩和ケアに使われる鎮痛薬の「オピオイド」は、アヘンやモルヒネの類縁物質にあたる麻薬性鎮痛薬の一つです。通常はケシの実から作られるオピオイドを、遺伝子操作を施した酵母から生成する方法がスタンフォード大学化学科と生物工学科の共同研究で発表されました。
Complete biosynthesis of opioids in yeast
http://www.sciencemag.org/content/early/2015/08/12/science.aac9373
Yeast can now make opiates | The Verge
http://www.theverge.com/2015/8/13/9148677/yeast-opiate-hydrocodone-oxycodone-synthetic-biology-heroin
モルヒネの原料となるケシの栽培は各国の政府で管理されているため、天候や疫病などで市場の需要を満たす収穫量を下回ることがあります。この問題を解決するべく、スタンフォード大学の研究チームは遺伝子操作を施した酵母を使って、砂糖を強力な麻薬性鎮痛剤であるヒドロコドンやオピオイドに変換したり、オキシコドンのもとになるテバインを生産できる方法を確立しました。
この研究で作り出された菌種は3種類のケシ・オウレン・バクテリア(シュードモナス属)・ラットのうち、いずれかで見つかる分子から合成することができるとのこと。ただし、標準容量1回分の鎮痛剤を作り出すには4400ガロン(約16万リットル)もの酵母菌が必要であるため、次の段階では生産量を増やすための取り組みが予定されています。
この製法が実用化すれば、高価な鎮痛剤を使用できない世界中の多くの患者に対し、安価で鎮痛剤を提供できるようになると見られています。一方で、この菌種があれば鎮痛剤だけではなく、アヘンやヘロインを自家製で作り出せるようになる可能性が危惧されており、酵母菌が違法に使用されたり、窃盗されたりしないよう厳重な管理が必要とされています。ただし、別の研究によると、自家製の生産環境下ではこの酵母菌を使ってオピオイドの化合物を作ることはできないことが証明されており、研究所設備下でなければ"自家製麻薬"の悪用リスクはさほど大きくないとのことです。
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