メモ

高校の授業で反復練習ソフトウェアを使ってみた結果、こうなった


タブレットPCを使った学習ツールなど、IT技術を使ったさまざまな教育方法が模索されている中で、あるアメリカ人教師が自身の受け持つ生徒に「Anki」という反復学習ができるソフトウェアを使って行った1年間の教育効果のレポートを発表しており、見事な学習成果を上げることに成功しています。

A Year of Spaced Repetition Software in the Classroom - Less Wrong Discussion
http://lesswrong.com/r/discussion/lw/mfm/a_year_of_spaced_repetition_software_in_the/

高校教師のtanagrabeastさんは意見交換型コミュニティサイト「Less Wrong Discussion」に、自身の教え子に教育ツールとして反復学習ソフトウェアを導入した成果についてレポートを書いています。

tanagrabeastさんは9年生と10年生(中学3年生と高校1年生)に国語を教える教師で、反復学習ソフトが生徒の学習に役立つかもしれないと考え、これまでにもさまざまなソフトウェアを導入し、さらには自身で教育用ソフトをプログラミングするなどしてきた結果、Ankiという反復学習ソフトに行き着き、1年間クラスで使って学習効果を試したとのこと。


Ankiは次々に出される問題に解答しつつ、その難易度や重要度に応じて同じ問題を繰り返し出題できる学習ソフトで、間違った問題や重要な問題は短い間隔で、正解したり重要度の低い問題は長い間隔で出題させるなど、反復して出される問題の出題頻度を調整できるという特長を持っています。

Ankiの使い方は、以下のムービーを見れば分かります。

Anki 2: Shared decks and review basics - YouTube


tanagrabeastさんの学校は、平均よりも少し教育水準が低く、生徒たちは総じて自分から進んで学習することはほとんどなく、端的に言えば良い成績をとることに意欲を持つ生徒は少なかったそうです。もっとも生徒の習熟度の幅は非常に広く、まずまずの学習到達度の生徒もいれば、カリキュラムについていけず脱落した生徒までさまざまだったとのこと。

tanagrabeastさんはAnkiを使うにあたって、「自習」というスタイルではほとんど効果がないことを見越して、55分間の国語の授業中にAnkiに取り組む時間を約8分間とることにしました。


Ankiではデフォルト設定では1つのセッションごとに20枚のカードで20問が出されますが、tanagrabeastさんはこれでは多すぎると考えて1セッションを7枚、つまり7問に制限しました。そして、授業の度に新しく7枚のカードに用語・語彙・文法など大切なものを中心に、新しい問題7問を追加していったとのこと。一般的にAnkiは学習した内容を補強する補助ツールとして活用されることが多いそうですが、tanagrabeastさんは新しい学習内容を積極的に取り入れたとのこと。

tanagrabeastさんの生徒は土日・祝日の休日以外にも、1週間以上の休暇をカレンダーに登録する生徒が多く、必ずしも毎日Ankiで学習できるわけではないという制約があったそうです。一般的にAnkiでは毎日継続的に学習することを前提にプログラムが設計されていますが、この点についてはtanagrabeastさんは学習間隔が開くことは仕方がないと妥協しています。しかし、学習間隔が開いた場合でも、その間に出題した内容をカードに取り入れて、休んでいない状態に少しずつでも追いつけるように出題内容を調整したそうです。

こうしてtanagrabeastさんが1年間、Ankiを学習ツールとして活用した結果はと言うと、「成績が悪い生徒、成績が良い生徒いずれのグループにも成績向上に役立つという成果が出た」とのこと。

By Loren Kerns

これまでの授業では「平均的な生徒」に合わせた難度とスピードでカリキュラムが進んでいくところ、Ankiでは自分に合った速度で自分に合った反復頻度に調整した学習が可能なので、授業についていけない生徒にも効果的だったことが想像できます。

また、tanagrabeastさんはAnkiの出題において、非常に簡単な問題を混ぜていた事にも意味があったと考えています。10年生(高校1年生)のクラスの授業で6年生(小学6年生)の問題を出すということは、一般的な授業では適当とは言えませんが、Ankiであればこれは十分にアリ。というのも、比較的習熟度の高い集団は簡単すぎる問題については再度出題されるまでの間隔をものすごく長くとることでスクリーニングでき、対照的に習熟度の低い集団は出題頻度を高めて解答することで「成功体験」を繰り返し得ることができ、結果として学習意欲を高めるという効果があるからです。


他方で習熟度の高い比較的成績の良い生徒は、Ankiを使ってどんどん学習速度を上げて、さらに成績がアップするという効果が見られたとのこと。ここでも、「平均的な生徒」を想定した学習カリキュラムのせいで、平均的な想定よりも学習ペースが速い生徒が、先へ先へと学習を進められないという実態があるのではないかとtanagrabeastさんは現状の学習カリキュラムの弊害を示唆してます。

そして、意外にも成績が中ぐらいの生徒たちはAnkiを有効活用することに失敗したとのこと。成績が中程度の「平均的な生徒」は、あまりAnkiに関心を示さず、たとえAnkiで不正解だったとしても気にすることもなく漫然とやり過ごしてしまったそうで、tanagrabeastさんは「どうすれば平均的な生徒に反復学習を効果的に活用してもらえるのか」についてまだ分からないと述べています。

tanagrabeastさんはAnkiを取り入れた反復学習プログラムの学習成果については対照群を用意した研究ではないため科学的とは言い難いと前置きしつつも、確かな手応えを感じているとのこと。このため、tanagrabeastさんは次の1年間についても、出題用カードの数を減らしたり、より生徒が興味を持つような楽しいカードを考えたりと、さらなる改良を加えた上で、Ankiを使った学習プログラムを続けていく予定で、生徒たちがAnki学習の2年目にどのように学習成果を上げてくれるのか非常に楽しみだと述べています。

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in メモ,   ソフトウェア, Posted by darkhorse_log

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