Amazonが大人気の電子書籍読み放題サービスの報酬規定を大幅改訂
By Tim Lucas
AmazonがKindleプラットフォームで配信している電子書籍の報酬規定を大幅に改訂したと発表しました。これによって報酬が大きく減る著者や大きく増える著者が出てくることは確実なようですが、そもそもなぜ大幅に報酬規定を変更しなければいけなかったのかについてみると、電子書籍の読み放題サービスならではの構造的な原因があるようです。
Amazon Kindle Direct Publishing: Get help with self-publishing your book to Amazon's Kindle Store
https://kdp.amazon.com/help?topicId=A156OS90J7RDN
Amazon KDP Support: KDP Select Global Fund Update & Program Changes
https://kdp.amazon.com/community/ann.jspa?annID=786
Amazonはアメリカやヨーロッパを中心に「Kindle Unlimited」という読み放題サービスを行っています。Kindle Unlimitedはアメリカでは月額9.99ドル(約1200円)で対象となる書籍やオーディオブックを読み放題・聞き放題になるサービスで、同一アカウントを利用する家族も書籍を自由に読むことができるサービス。新書1冊分程度の料金で本を読みまくれるサービスで愛読家には人気のサービスとなっています。
そのKindle UnlimitedやPrime会員向けの毎月1冊無料サービスKindle Owners' Lending Library(KOLL)における、著者への報酬規定を2015年7月1日から変更するとAmazonが発表しました。従来は、書籍のダウンロード数をもとに作家へ報酬が支払われていたところ、新しい規定のもとでは、読まれたページ数に応じて支払いがなされるとのこと。
これまでのダウンロード数に応じた支払いでは、ボリュームの大きな長編作品は、短編作品に比べて不利であるという不満が作家から挙がっており、この「不公平」という声にAmazonは対応するというわけです。新たな基準では、読者がページを初めて読み込んだ時点で計測が行われ、繰り返し読む場合にはポイントは加算されないという仕組みとのこと。
例えば、Kindle Unlimited・KOLLで1カ月に合計1億ページ分の閲覧が行われた場合、100ページの書籍の著者は、最後まで読み切った読者が100人いた場合は100×100=1万ページ分に報酬が与えられるため、1万÷1億=1万分の1分の報酬をゲットでき、200ページの書籍で読者100人がすべて100ページで閲覧を辞めた場合も、まったく同じ支払い額になるというわけです。
なお、新規定の下では、「Kindle Edition Normalized Page Count(KENPC)」というAmazon独自判定基準が導入される予定。これは電子書籍は使う端末ごとにレイアウトが異なるため「ページ数」という概念がなじまないため、ページ数に代わる閲覧量を算出する基準とのこと。KENPCのスタート時のバージョンはv1.0とされていることから、今後もこまめに算出基準が変更されるものとみられます。
なお、Kindle向けに電子書籍を配信するKindleストアで書籍を販売する著者はKDP セレクトに登録すると、その書籍がKindle Unlimited・KOLLの2つのブログラムに自動的に追加され、月に読まれるページ数に応じて報酬の支払いを受けることができます。Kindle UnlimitedやKOLLは日本ではまだスタートしていないサービスですが、欧米では非常に人気になっているため、今後日本でもスタートする可能性はありそうです。
AmazonによるとKindle Unlimited・KOLLの2015年上半期に著者に支払われる報酬総額は6000万ドル(約74億円)で、アメリカでの総報酬額は前年比で2倍以上で、Kindle Unlimitedサービスがスタートして以来、Kindle Unlimitedで著書を配信する作家の出版ペースは毎月95%アップと急激に増加していると発表しています。
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