50万冊が読み放題の電子書籍サービス「Oyster」がYouTubeに並ぶ知名度を得る方法とは?


50万冊の本が無制限で読み放題の電子書籍サービス「Oyster」は、iOS・Android・Kindleアプリがリリースされており、スマートフォン・タブレット・PCとデバイスを問わずに本を読むことができ、最新のアプリアップデートでは音楽のプレイリストのように本をリスト化する機能も加わっています。YouTubeやNetflixに匹敵する知名度の電子書籍サービスを目指すという今後の展望について、iOS Emojiの開発者でもあるOyster創始者のウィレム・ヴァン・ランカー氏がThe Vergeのインタビューに答えています。

The future of books is on your phone, not your tablet | The Verge
http://www.theverge.com/2014/11/5/7156767/oyster-willem-van-lancker-interview-future-of-books

Oysterはサービスを開始してから1年で、ディズニーのような大手の作品を含む50万タイトルの電子書籍が読み放題のサービスとして展開しており、最新のアップデートでGoodReadsに似たお気に入りの電子書籍をタップして読めるプレイリストが作れる「Book Lists」機能をリリースしました。The Vergeは数週間にわたってOysterへ取材とインタビューを実施しました。


The Verge(以下、Verge):
Kindleを持つ友人たちでさえ、大量の本を読んでいるとは言えません。簡単に手に取れるエンターテインメントの選択肢があふれる中で、どのようにしてInstagramやYouTubeと競合していくのでしょうか?

ウィレム・ヴァン・ランカー(以下、ランカー):


若い人々の間で、読書は状況によっては音楽や動画を超えるエンターテインメントの形になりつつあることが見えてきました。地下鉄で移動している時、ベッドに寝転んでいる時、YouTubeとOysterのロゴを並べて見た時に、あなたが「本を読もう!」と思えるほど簡単に読書ができるプラットフォーム作りを考えています。世界中で販売された本の総合計は映画と音楽を合計した数よりも多く、世界的にも「読書によって注意力をつける」という習慣が推奨されていますね。1日の時間を割り振らなければいけない時、映画と読書どちらに多く時間を割きますか?私たちは読書に対する強い欲求があることに気付いたのです。

Verge:
いったん誰かがOysterに登録した後に、ユーザーはどうやってより多くの本を手に取ったり、Oysterの魅力を感じるようになるのでしょうか?


ランカー:
Netflixが見事にこの戦略を実行しています。Netflixの長期的プランはユーザーが帰宅した後に「TVを見る」「読書をする」「Netflixを見る」という選択肢を考えさせることで、さらに選択肢の中から「Netflixを見る」をチョイスさせる「魔法の瞬間」を手にしつつあります。とりあえずNetflixを見るという習慣が付けば、特に見たいものがない時でも、Netflixを開けば再生データを分析してユーザーが見たい動画をキュレーションして伝えることができます。Oysterが狙っているのは同じことです。

Verge:
確かに、Netflixのセレクトは非常に優れていますね。Netflixのページは超大作からB級ホラーまで幅広いジャンルで埋め尽くされていますが、Oysterのセレクトはどうですか?

ランカー:
例えば、今までに出版された売上トップ250冊のうち、Oysterは150冊をライブラリーに収納しています。「ハックルベリー・フィンの冒険」のような児童文学はあまり扱っていませんが、人々が読書を求める理由は1つではないため、ニーズに合った作品収集がOysterの読書に関する挑戦です。娯楽のため、学習のためなど、ユーザーベースを理解して幅広く、本当に望まれるコンテンツを手に入れるため多くの出版社と交渉を続けています。

Verge:
出版社との契約は個別契約・パッケージ契約のどちらで結んでいますか?

ランカー:
現在Oysterはアメリカの大手出版社10社のうち6社と取引があります。1社と契約するごとに文芸小説からSFまで何千ものタイトルが我々のライブラリーに収納されることになります。他にも、大手出版社ではなく、ディズニーのような独立したコンテンツを持つ企業との契約にも力を入れています。持っているコンテンツはどの企業も20~30冊ほどですが、強いブランド力を持つコンテンツはほとんど契約済みです。


Verge:
ユーザーはどのようにしてOysterで本を探すのでしょうか?

ランカー:
80%のユーザーは「Discovery(発見)」カテゴリから見つけた本を読んでおり、そこから判明したユーザーの需要に沿ってコンテンツを増やしています。Netflixと同様に我々もアルゴリズムのパーソナル化を行っていますが、Netflixの「Sentiment Analysis(感情分析)」は動画の分析なのに対して、Oysterがスキャンするのはテキストなので、仕事は割と簡単に進められるのです。

Verge:
Oysterが追求していることをキーワードにすると何と言えますか?

ランカー:
キーワードだと「テーマのカップリング」ですね。ビジネスの中心核となるデータサイエンスチームを結成したところで、個別に的確な本をユーザーに推薦する仕組みを開発中です。同じカテゴリの本が2冊あったとしても、その本が興味を持たれる理由はカテゴリだけではありません。そこで面白い方法で本の性質を分類する方法を試みており、分類分けが完了すれば、アルゴリズムによる人間が不要な編集者を設けるつもりです。実装されれば「書店の販促活動」のような効果を果たす予定で、完読まで7時間~8時間かかっても読みたくなる本をプッシュできるようになります。

Verge:
サービス開始から1年が経過して、わかってきたことはありますか?

ランカー:
Oysterユーザーの平均滞在時間は毎日1時間以上で、これはFacebookに相当します。また、ユーザーは1冊の本を読み始めるまでに4冊の本を開く傾向があり、ブラウジングしながらサンプルを見回るという感覚を持っています。これはOysterが競合する電子書籍プラットフォームの中で最速のダウンロード速度を実現しているためでしょう。タップすればすぐに最初のページを読めるので、「読書に取りかかる」という障壁をとても低くできるのです。奇妙な傾向としては、ノンフィクションの読書スピードが終始一定なのに対して、ロマンス本は終わりが近づくにつれてどんどん上昇します。また、分析から人々が読み終えられない本もわかってきていて、例えば「グレート・ギャツビー」は読み始められるものの、なぜか最後まで読まれません。


Verge:
人々が一度中断した本の続きを読むのはタブレット・スマートフォン・ウェブのどれが多いのでしょうか?

ランカー:
これは本の未来を表しているとも言えますが、最も続きが読まれるのはスマートフォンです。これは私たちが最初から注目していた動きで、「電子書籍にとって最高のモバイルエクスペリエンスを提供することができる」と、出版社との契約時に説明していました。Androidではこれらのデータを取得するのは難しいのですが、iOSで言うとiPhoneとiPadはちょうど50:50で、ここ数カ月ではiPhoneの使用割合が徐々に上がってきています。常に手に持っているスマートフォンのアプリによって、ユーザーはランチの時、夜から深夜の時間帯などに、アプリのアクセスが急上昇するのです。週末もそれなりの数値を維持しています。


さらに、Oysterにウェブリーダーを追加してからは、仕事中に本を読むユーザーが増えたのか、平日の日中にアクセスが急上昇しています。そのため私たちは読んでいる本がマイクロソフトのWordのように見えるようになるボタンの導入まで考えたほどです。

Verge:
実際にOysterが使っている読書プラットフォームで、有効的なイノベーションを生み出せましたか?

ランカー:
最も顕著な例は、Kindleの横にスライドするページめくりとは異なって、Oysterはデフォルトで垂直に移動するということです。この機能は読書を中断して再開する時に「どの文節まで読んだか」とページ内をうろうろしなくても良いため、電子書籍特有の読書の形となっています。もちろんスワイプによるページめくりも可能です。また、ユーザーがInstagramのフィルター選択のように、テーマで文字サイズ・背景色・生地といった読書設定を決定することも可能です。今後はiPhoneやiPadなどのデバイスの特性を生かした面白い表示方法も考えていくつもりです。


なお、Oysterは日本でのサービスを展開していませんが、月額料金は9.95ドル(約1130円)。Amazonがアメリカやいくつかのヨーロッパ諸国で月額9.99ドル(約1140円)で電子書籍が読み放題のサービス「Kindle Unlimited」のサービス提供を開始するなど、世界中で定額制の電子書籍読み放題サービスは拡大しつつあります。

Beautifully digital reading for everyone
https://www.oysterbooks.com/

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in ソフトウェア,   ネットサービス,   メモ, Posted by darkhorse_log