メモ

携帯電話基地局を使ってドローンを追跡・監視するシステムを携帯キャリアと政府が共同で開発中


誰でも簡単に飛ばせる上に飛行に法的規制がないため何かと話題のドローンですが、縦割り行政などさまざまな弊害のために議論がいまいち深まらない日本を尻目に、アメリカではあのNASAが携帯電話の基地局を利用して民間のドローンを追跡して安全性を担保するという大規模な航空管制システムを開発中です。

Nasa and Verizon plan to monitor US drone network from phone towers | Technology | The Guardian
http://www.theguardian.com/technology/2015/jun/03/verizon-nasa-drones-cellphone-towers

NASAが商業・民間ドローンを追跡する大規模なドローン監視システムを開発中で、そのNASAのドローン用航空管制システム開発計画にアメリカ最大のモバイル通信会社Verizonが参加して、携帯電話の基地局を利用することに同意したとThe Guardianが報じています。

NASAは2014年からNASAのエイムズ研究センターが管理するモフェット・フィールド飛行場で、ドローンを管理するための航空管制システムを開発してきました。なお、モフェット・フィールド飛行場はシリコンバレーのGoogle本社近くにあり、Googleもこの飛行場でドローンの開発を行っているといわれています。

なお、NASAが独自に開発中のドローンがどれだけのレベルなのかは以下の記事を見れば一発で理解できます。

10基のプロペラを搭載して垂直離着陸・水平飛行が可能な飛行機「GL-10」がテスト飛行に成功 - GIGAZINE


NASAはこれまで50万ドル(約6000万円)の研究費をかけてドローン用航空管制システムを開発してきてましたが、今回のVerizon参画によりVerizonが全米に保有する1万を超える携帯電話基地局を活用できる民間ドローン追跡・監視技術を共同開発していく予定。携帯電話基地局を活用するドローン用航空管制システムは、最大数万機のドローンとリアルタイムに通信することで、ドローン同士の空中での衝突を回避できるように、個別のドローンに飛行ルートの指示を送信できるとのこと。Verizonによると最終的には2019年までにシステムを完成させる予定だそうです。

なお、アメリカではいまだにFAAによるドローン規制法が確定していない状況のため、NASAはアメリカ政府ではなく民間企業との提携を積極的に進めている最中で、Verizonの他にもドローンを使った空中配達を開発中のAmazonや、ドローンでモバイル通信網を築こうとするGoogleも、NASAとパートナーシップを締結しています。


アメリカでNASA・Google・Amazon・Verizonなどの強力タッグという官民一体のドローン環境整備が進められているのはドローンが将来的に非常に有望な市場であると見られているから。いずれ訪れるであろう「ドローンをフル活用する未来」を見据えて、また巨大な世界のドローン市場をリードするべくアメリカは着々と先手を打っているというわけです。

他方で日本では、2015年4月に総理大臣官邸にドローンが墜落した事件をきっかけにドローンに関する議論が活発になってはいるものの、議論は「一方的な規制」という方向に向かいつつあります。現在の航空法にはドローンの運行方法に関する規制はなく、ドローン飛行に関する明確なルールがない状態であるため、政府は航空法の改正案を今国会に提出する見込みですが、内容は「密集地での飛行の原則禁止」「夜間飛行の禁止」「ドローン飛行の免許制の導入」など飛行を制限する方向に終始しています。


もっとも、政府のドローン規制をよしとしない行政機関も存在します。経済産業省はドローンの運用規制が行われれば今後、巨大市場となり得るドローンの開発競争に日本が取り残されかねないと懸念しており、ドローンへの一方的な規制強化に反対の方針であるとみられています。

「ドローン規制はナンセンス」焦る経産省 このままでは燃料電池車の二の舞に…:イザ!
http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/150603/ecn15060311300001-n1.html

過去にも日本が技術的に世界をリードする分野での法規制が原因で、いつの間にか世界の国々に技術的に追いつかれ追い越された結果、巨大な市場を取りこぼし、結果として国益を損ねてきたという苦々しい経験を思い起こせば、ドローンの規制も同じ結果を招きかねないというわけです。

もちろんドローンの飛行に関する明確なルールなしの野放し状態では、国民の安全やプライバシーを守れないのは間違いのないところ。しかし、過度な規制によって有望な産業の芽が摘まれることも将来的に国民の不利益になることも疑いのないことです。日本でも官民共同でドローン飛行のあり方に関する積極的な議論の深まりを期待したいところです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
飛行規制の策定が予想されるドローンははたして市民権を得られるのか? - GIGAZINE

ドローンで空撮したムービーのYouTube投稿をFAAが禁止する動き - GIGAZINE

遠隔操作で空を飛ぶ無人偵察機に罰金を課したところ操縦者が思わぬ反撃を繰り出し空のルールが変更されるおそれ - GIGAZINE

ついにAmazonがドローンのテスト飛行許可を取得しドローン配達の実現に1歩前進 - GIGAZINE

Amazonのドローン配達は「現在地で受け取り可能」など驚愕の内容が判明 - GIGAZINE

in メモ,   ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.