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将来のがん治療を変えるIBMの人工知能システム「Watson」の運用が開始される

By Mr Seb

IBMが開発した人工知能システム「Watson(ワトソン)」を、「がん」の治療に役立てる試みがアメリカとカナダで開始されました。Watsonは膨大な過去の医療データや論文などをデータベースに格納しており、これと実際の患者の医療データを照らし合わせることで、最も適切と思われる治療方針や薬についての情報を医師や患者に提案してくれるシステムとなっています。

IBM's Watson supercomputer to speed up cancer care - BBC News
http://www.bbc.com/news/technology-32607688

このシステムの活用を開始したのは、アメリカとカナダにある14の医療機関。全米でもトップクラスの医療レベルを持つと言われるCleveland Clinicやネブラスカ州立大学・The Fred & Pamela Buffett Cancer Centerなどの医療機関が名を連ねています。

Watsonには過去のがんにまつわる膨大な量の医療データが格納されており、各病院から集められた患者のデータを高速で解析し、過去のデータを参考にしながら患者ごとに最も最適と思われる治療方針や投与する薬を提案し、医師や患者が意志決定するための支援を行います。活用する側の医師にはすでに好意的に受け入れられているようで、日々の診断内容や措置などがWatsonに続々と追加され、その後の活用にも活かされることになっているとのこと。

「がんと立ち向かうことは、時間との闘いです」と語るワシントン州立大学・McDonnell Genome Instituteのルーカス・ウォルトマン医師は、Watsonを活用することについて「がんと戦う一患者として、私はがんの遺伝情報がいかに重要であるかを理解しています。残念なことに、現在はがんの遺伝子を解析して患者ごとの診断を行い、治療方針を決める際には、専門の医師によるチームでも数週間という長い時間を要してしまいます。Watsonの活用により、これが劇的に短縮されることになるでしょう」と展望を語っています。

By ibmphoto24

Watsonは人間が使う自然言語を理解・学習し、尋ねられた内容に対して過去の膨大なデータをもとに適切な回答を行うことができるシステムです。スーパーコンピュータの一種とされることも多いWatsonですが、その大きさは「冷蔵庫10台分」と意外とコンパクト。性能を示す処理能力も80テラFLOPS(1秒間に80兆回)程度で、これは2014年時点で世界一の性能を持つとされる中国のスーパーコンピュータ「天河二号」の実測値である33.86ペタFLOPS(1秒間に3京3860兆回)に比べて約400分の1と、決して最新の性能を持つものではありません。

しかしWatsonは、その計算能力よりも「人工知能」に類似する判断能力に重きをおいて開発されているもので、その能力を発揮することが期待されているのが、大量のデータを元に自ら考え、最適な答えを導くという「コグニティブ・コンピューティング」の分野です。


これまでのがん治療では多くの場合、がんと診断された患者には外科手術による切除や化学療法、放射線療法などの治療方法が用いられます。しかし、遺伝子解析技術が発達し、活用のハードルが下がった現代では、がんを引き起こす特定の変異細胞を狙った治療が可能になり、その恩恵を受ける患者が徐々に増えてきています。

しかしここで問題になるのが、先述のように分析に要する時間の問題。およそ100ギガバイトにも相当すると言われる人間の遺伝子情報を短時間で解析し、その内容を過去の症例や学会の論文、医療機関の症例などと照らし合わせることは非常に困難が伴う作業となっていました。

IBMでは、このような作業もWatsonを活用することでわずか数分で行うことができるとしています。IBM Watson Healthのスティーブ・ハーベイ副社長は「われわれが新たに持ち込もうとしているこの技術により、人類の最も大きな課題の1つである『がんとの戦い』にコグニティブ・コンピューティングが重要な役割を果たすことが可能になります。これは従来成し得なかった新しい方法となります」とその意義を語っています。

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Watsonを活用する各医療機関はIBMに対して利用料を支払うことになりますが、その額は明らかにはされていません。記事作成時点でシステムを取り入れたのは14の医療機関となっており、2015年内にはさらに11の医療機関が加わる予定となっています。

By ibmphoto24

IBMではWatsonを活用した取り組みを各方面と共同で進めている状況。2014年夏にはAppleと業務提携を結び、ソフト・ハード面で戦略的な協力体制をしいたことで話題になったところです。

巨大企業AppleとIBMが業務提携、企業向けサービス業界に衝撃が走る - GIGAZINE


そして両社の提携の上に乗るかたちで提携を結んだのが、日本郵政による高齢者向けタブレット端末事業の計画。これは「IBM MobileFirst for iOS」と呼ばれるエンタープライ向けアプリケーションの仕組みを利用したものであり、その背景にはWatsonの技術が活用されているとのこと。

高齢者タブレット 日本郵政がアップル・IBMと開発へ NHKニュース


Watsonの中身については日本IBMの特設ページでも詳しく解説されています。2015年2月にはソフトバンクとの提携による日本語トレーニングの開始が発表されており、本格的な日本語対応が進められている模様。

IBM Watson (ワトソン) - Japan
http://www.ibm.com/smarterplanet/jp/ja/ibmwatson/


このように、医療・福祉の分野で活躍を見せそうなWatsonですが、その能力は別の分野でも発揮されています。2011年にはアメリカの有名クイズ番組「Jeopardy!」(「ジョパディ!」)に登場して人間相手にクイズで勝負を行い、人間よりも多くの賞金をゲットしたというエピソードでも知られています。

IBM 質問応答システム“ワトソン”がクイズ番組に挑戦! - Japan

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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