壁まるごとサイズで超高精細な世界地図を自分でプリントして作る方法
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「欲しいものが手に入らないのならば、自分で作ってしまえばいい」というDIY精神で巨大な地図を作った男性が現れました。自宅の壁一面をまるごと覆い尽くすほどの巨大な地図を作るにはさまざまな苦労がありつつも、興味深い発見の連続でもあったようです。
Printing a wall-sized world map
http://www.dominik-schwarz.net/potpourri/worldmap/
こちらの男性が巨大地図を作ったドミニク M. シュワルツさん。オンライン旅行検索サービス「KAYAK」のヨーロッパSEO役員を務める人物です。
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シュワルツさんお手製の地図は、横3メートル×縦2メートルという一般では手に入れることが極めて難しいサイズ。前に立つシュワルツさんの身長と比べてもかなりの巨大さであることがわかります。
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「子どものころから地図が大好きだった」というシュワルツさんは、とにかく大きくて精細な地図を手に入れたいと思っていたそうです。市販されているもので可能な限り大きな地図を探し回ったシュワルツさんはここである1つの事実に気がついたとのこと。
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それは、「幅1.5メートルクラスまでであれば望むレベルに近い地図が見つかるが、それ以上大きくなると表示の精細さのレベルが落ちる」というものだったそうです。つまり、地図の大きさに比例して文字や地形の表示が拡大されてしまうとことだったのですが、その理由は地図の使われ方に隠されていたとのこと。1.5メートルを超えるサイズの地図になると、使い道は学校の教室に掲示するなどの用途に限られてしまうので、見やすさを考慮して文字の大きさや情報量が制限されてしまうというわけです。
さらにシュワルツさんはインターネットを使ってありとあらゆる地図探しを行いましたが、「希望の大きさに達していない」「大都市しか記載されていない」「境界線が強調されすぎ」などの理由で希望のものは見つからず。理想に近いものも見つかりましたが、それでも特定の地域しかラインナップされていなかったりと、結局探し求めていた品質の地図は見つからなかったそうです。
ここまでして欲しい地図を見つけられなかったシュワルツさんに残されていた唯一の手段は、「自分で作る」というものだけでした。
◆フリーで使える地図データを求めて
自作で巨大マップを作ることに決めたシュワルツさん、まずは目標とするサイズを幅3メートル×高さ2メートル、そして画像の解像度を300dpiと決めました。次に、このクオリティを実現するオンライン地図の選定に取りかかります。
・候補その1:OpenStreetMap
オープンソースで誰でも地図を編集できるOpenStreetMapを試したシュワルツさんでしたが、データの質がイマイチだったためにこれを却下。しかし、OpenStreetMapの持つ編集性の高さには感心した様子。
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・候補その2:Bing 地図
データ品質は合格点だったそうですが、画像の品質がイマイチと判断。特に、文字の周囲が妙にぼやけている点に満足がいかなかったとのこと。
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・候補その3:MapQuest
元となるデータはOpenStreetMapと同じMapQuestですが、レイヤー機能によるデザイン性の高い表示が良かったとのこと。しかし、特にズームインして詳細に表示した際のデータの荒さが災いしたため、これも却下。
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・候補その4:Google マップ
やはりというべきか、最終的にGoogleマップに落ち着いたというシュワルツさん。特にGoogleマップはズームレベルごとに「何を表示させるか・させないか」の判断が的確で、高い品質が決め手になったそうです。
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◆法的問題はないのか?
Googleマップを使うことに決めたシュワルツさんが懸念したのが、「法的に問題がないのか?」という点とのこと。しかし今回は「個人プロジェクトであること」「一般に公開されるものではなく、販売も行わない」「普通のブラウザからアクセスし、『印刷』機能を使ってデータを取得している」という理由から、違法性はないと判断したそうです。
◆印刷について
壁一面のサイズに、しかも300dpiという非常に精細な印刷を行うことは非常に高い技術が求められるものです。専門の印刷業者に任せれば何とかなる問題ではありますが、その場合は何百枚~何千枚という数量の発注が必要になってしまい、今回のように「1枚だけ」というワンオフの仕事になるとなかなか対応できる業者は存在しないもの。問い合わせを行った10社のうち、返事を返してきたのは5社だけで、うち4社は「無理です」と断ってきたそうです。
最終的に決めた依頼先は、意外にも近所にあった印刷屋さんだったとのこと。用事のついでに見つけた印刷屋で話しをしてみたところ、オーナーが非常に乗り気になってくれたそうで、かなり前のめりになって協力してもらうことができたそうです。ここで決めた条件は以下のようなものになりました。
・3×2メートルというサイズに収めるため、北極圏と南極圏はばっさりカットする。ただ、地図そのものはメルカトル図法で作られていたために北極と南極は大きくゆがんだ表示となっていたため、カットしても大きな問題はなかった。
・3×2メートルもあるサイズを1枚もので出力することは不可能なので、地図データを2分割する。分割線を目立たなくさせるため、最も地図の中心に近くて、洋上を通る部分の多い位置を選んだ。
軌道に乗り出したシュワルツさんのプロジェクトは、まず使用する用紙の選定に入ります。光沢のあるフォト用紙と、つや消しのマット用紙に同じデータを印刷して比較したところ、フォト用紙は反射が多く、特に巨大なサイズになると問題が生じると判断したことから、マット用紙を使うことに決定しました。
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用紙が決まれば実際の印刷に取りかかります。使用したプリンターは「EPSON Stylus Pro 11890」という業務用機。データ容量が1.25GBにもなる地図データを2枚に分けて印刷します。その印刷品質は極めて高く、わずか4ポイントという微細な文字までもはっきりと読み取ることが可能で、地形の高低を感じれるほどリアルな仕上がりを得ることができたとのこと。ここでかかった費用は、印刷代とデータ加工費で329ユーロ(約4万4000円)。
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印刷が終わった地図をそのまま壁に貼ることは現実的ではありません。そのためにシュワルツさんは専門の業者に作業を依頼。依頼したのは「Plasterer」と呼ばれる職人さんで、日本で言うところの「壁張り職人」のような人だったそうです。
印刷屋さんから紹介されたという職人さんに依頼して、軽くて柔軟性の高い「Foamexパネル」というポリ塩化ビニル製のパネルに地図を貼り付けてもらい、壁に掲げることにしたそうです。このパネルを使うことで、地図にピンを指すこともできるようになるとのこと。
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貼り付けが完了して納品された地図パネル。作業を担当した人物はかなりの「職人気質」だったとのことで、仕事は素晴らしかったものの、表面についたタバコの匂いが2日間取れなかったそうです。費用は作業と納品料で399ユーロ99セント(約5万4000円)。
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完成したパネルを取り付けようとしたシュワルツさんですが、その巨大なサイズのために作業は難航。ほんの少しの位置ズレが如実に影響を与えるために苦労の連続とのこと。
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数度のトライの結果、最終的には別の業者に依頼してパネルを補強するフレームを取り付けてもらい、壁への取り付けが完了。取り付け後に壁から落下するなどのトラブルはあったそうですが、ここで業者に支払った費用は410ユーロ(約5万1000円)。
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最後の仕上げ、というわけではありませんが、シュワルツさんは地図に刺すピンにもこだわりを見せます。精細に記載された地図にピンを立てるのが夢だったというシュワルツさんは、その細かさに見合うサイズのピンを探し出すことに成功。一般的な0.8mmのピンに比べて半分のサイズとなる0.4mmという細いピンを入手することに成功しました。
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さらに、ピンの色にもこだわるシュワルツさん。特殊なピンのためか、ピン頭が赤色しかラインナップされていなかったのですが、シュワルツさんは「これ幸い」とばかりに自分でカラーリングを行います。それも、一般的な塗料ではなく、光を吸収して暗い場所で光る蓄光タイプのものをチョイス。「暗くなった時にピンが光るとすごいでしょ?」というのがその理由。
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しかし、思ったほどの効果が得られずに少しガッカリなシュワルツさん。色を塗ったために明るい場所では見た目がイマイチになるのと、逆に暗い場所になると肝心の地図がうまく見えなくなってしまうとのことで、今のところうまい解決法は見つかっていないそうです。また、あまりに巨大なために地図全体をうまくライトアップするための方法も模索中とのこと。
今後の展望としてシュワルツさんは、プロジェクターを設置してマップ上にいろいろなコンテンツを表示させることも検討しているそうです。例えば自分が乗った飛行機の航路を表示させたり、Twitterがつぶやかれた場所をマップ上に表示させたり、はたまた政治や統計データを地図上に表示させるなど、その可能性はさまざまなものが考えられているようです。
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