自動運転車が走り出すと交通渋滞が劇的に悪化する
Googleは無人運転カーの開発を進めており、実際に道路を走らせるテストも成功させています。道路が自動運転車だけになるのはまだまだ先ですが、自動運転車が全体のうち25%導入されると「交通渋滞が劇的に悪化する」というシミュレーション結果が発表されています。
How Driverless Cars Could Make Traffic Dramatically Worse - CityLab
http://www.citylab.com/tech/2015/01/how-driverless-cars-could-make-traffic-dramatically-worse/384821/
以下はメルセデスベンツによる自動運転車の内部構想。もし道路を走る全ての車両が自動運転車に切り替われば、コンピュータに制御された車両がスムーズに走ることで「交通渋滞の減少」や、電車のように座りながら読書などが可能になる「自由時間の増加」という2つの大きな変化が想定されています。
インペリアル・カレッジ・ロンドンのスコット・ル・バイン氏は、自動運転車が生み出す「2つの利益」を両立できるシミュレーションモデルの研究を行っています。自動運転車の運転方式は路面電車やバスの加減速を模倣するであろうとバイン氏は考えていますが、「どれくらい早く加速できるか」によって交差点の交通状況が大きく左右されるとのこと。「信号が青になった時、自分の前に列車が走っていてゆっくり加速していることを考えてみてください」とバイン氏は話しています。
バイン氏の研究チームは、4種類の都市の交差点を走る車両全体のうち、25%が自動運転車を導入した想定を標準的シナリオとして作成。バイン氏はこのベースラインに沿って16種類の異なるシナリオを使って、各1時間ずつのシミュレーションを100回ずつ行い、交通状況の遅れや交通容量の平均値を計算しています。その結果、あらゆるシナリオにおいて交通状況の悪化が見られたとのこと。
まず、標準シナリオでは交差点の1時間の交通量は1793台で、全ての車両に20秒の遅滞が発生しました。続いて無人運転カーに路面電車のライトレール(LRT)タイプの加減速を行わせたところ、交通量は1時間あたり1724台から1415台と、標準に比べて4%~21%減少。遅滞も21秒~30秒と、4%~50%悪化しました。
By Teresa Boardman
路上バスのハミルトン・ストリート・レイルウェイ(HSR)タイプの加減速シナリオでは、交通量は1時間あたり1469台~850台と、18%~53%に大幅減少。遅滞は27秒から6分44秒で、標準に比べて36%~2000%という劇的な悪化を見せました。
By Ryan Flores
バイン氏によれば、LRTとHSRタイプの運転プログラムは自動運転車の乗客の快適性を実現するのに適しているそうですが、今回のシミュレーションには歩行者が含まれておらず、自動運転車の実現は、交通状況とのトレード・オフが非常に大きいという結果になっています。一方でバイン氏は、「全ての車両が自動運転車に統一されれば、交通状況は非常に滑らかに整理できるでしょう」と認めています。
厳しいシミュレーション結果となった自動運転車の導入ですが、ドイツでは高速道路のアウトバーンA9で、政府主導の自動運転車テスト走行が計画されています。高速道路には信号がないため、バイン氏のシミュレーションとは異なる結果が出せると見られています。ドイツの自動車メーカーダイムラー・Audi・BMWの3社はCES 2015で自動運転車のコンセプトカーを発表しており、Googleより早く自動運転技術を実現させることもあり得るかもしれません。
・関連記事
Googleのハンドル・ペダルがない自動運転車の性能に圧倒されるムービーまとめ - GIGAZINE
Googleの自動運転車に試乗してわかった6つのこと - GIGAZINE
開発・進化の進む自動運転車でも悪天候だと暴走してしまったムービー - GIGAZINE
アウディの自動運転車がサーキット本気アタックで時速240kmをマーク - GIGAZINE
自動運転車の導入に向けて公道走行テストが2015年1月から開始される - GIGAZINE
2040年までに車の75%は自動運転車になり道路交通システムは変化すると専門家集団が予測 - GIGAZINE
自動運転車は年間43兆円のコストと90%のけが人を減らせると試算される - GIGAZINE
・関連コンテンツ