サイエンス

23発もの核爆弾で山脈を爆破する予定だった「キャリーオール計画」とは?

By The Official CTBTO Photostream

アメリカ南西部のカリフォルニア州・ユタ州・ネバダ州・アリゾナ州に広がるモハーヴェ砂漠には最大標高1181mのブリストル山脈がそびえ立っています。かつてカリフォルニア州サンタモニカとイリノイ州シカゴを結んでいたルート66(国道66号線)や、大陸横断鉄道会社のサンタフェ鉄道はブリストル山脈を南に大きく迂回(うかい)するルートをとらざるをえませんでしたが、実はブリストル山脈を核爆弾で爆破して新しいルートを建設するプロジェクト「キャリーオール計画」が策定されていました。

The U.S. once considered using 23 nuclear bombs to blast out a highway
http://factually.gizmodo.com/the-u-s-once-considered-using-23-nuclear-bombs-to-blas-1638145994/+mattnovak

ブリストル山脈爆破計画がたてられたのは、冷戦まっただ中の1960年代のこと。1950年代から60年代にかけては、アメリカや旧ソ連によるさまざまな核実験が行われていた時代です。計画を立案したのは、ブリストル山脈を貫くまっすぐで起伏のない線路を敷きたかったサンタフェ鉄道で、その計画には山脈を通る約3.2kmのトンネルの開通と、山脈の地下150mの場所を通過するトンネルの建設が盛り込まれていました。

By Kelly Mendenhall

無謀とも言えるサンタフェ鉄道の計画に興味を示したのが、当時核兵器の平和的使用を模索していたアメリカ原子力委員会です。また、サンタフェ鉄道がブリストル山脈爆破計画を練っていたのと同時期に、ルート66に取って代わる州間高速道路40号線を建設していたカリフォルニア州のCalifornia Division of Highwaysもサンタフェ鉄道の計画に興味を持ちました。

このような経緯を経て誕生したのが「キャリーオール計画」です。アメリカ原子力委員会が率いたキャリーオール計画は、22個もの核爆弾でブリストル山脈にトンネルを開通させ、さらに流出水のための巨大なクレーターを1個の核爆弾で作ってしまうというもの。合計23個の核爆弾を使用する計画にかかるコストは1380万ドル(当時のレートで約49億7000万円)で、核爆弾を使用しない方法よりも800万ドル(約29億円)も低かったのこと。

By Michael Heilemann

アメリカ原子力委員会は「キャリーオール計画が技術的に可能であり、安全に遂行することができる」と結論を下しました。しかしながら、「安全に遂行する」という点には疑問が残ります。計画書には「爆破の4日後に作業員がトンネル内で作業を始める」と記載されていて、放射能汚染が強い現場で作業が行われる予定でした。

幸運なことに、多くの技術的な問題からキャリーオール計画は中止になり、作業員が命の危険にさらされることはなくなりました。なお、アメリカ原子力委員会は核兵器の平和的使用を研究するプロウシェアー作戦を1961年から開始し、その一環として1962年7月6日にネバダ核実験場でセダン核実験を実施した際には、周囲の州に放射性降下物が降り、その地域では強い放射能が検出され、アメリカ国内で1300万人以上が被爆するという事態を引き起こしました。アメリカでは多くの議論を呼び、プロウシェアー作戦は1977年に終了しています。

By The Official CTBTO Photostream

宇宙空間・大気圏内、水中・地下を含むあらゆる空間での核兵器の核実験による爆発を禁止する包括的核実験禁止条約が1996年に国連総会で採択されましたが、アメリカは署名こそしたものの批准していません。包括的核実験禁止条約の発効には、ジュネーヴ軍縮会議の構成国であり、かつ国際原子力機関の「世界の動力用原子炉」および「世界の研究用原子炉」に掲載されている44カ国すべての批准が必要であると規定されていて、アメリカの批准は条約発効に必須。アメリカ以外にも中国やイスラエルなど計8カ国が未批准なので、包括的核実験禁止条約は記事執筆現在、未発効のままになっているのが現状です。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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