メモ

Uberがライバルを妨害するための社内マニュアル

By Michelangelo Carrieri

スマートフォンのアプリから配車を依頼すれば希望の場所までハイヤーが迎えに来るサービスがUberで、2014年3月には日本でもサービスを正式に開始しています。従来のタクシーとは異なるビジネスモデルを持ち込んだサービスとなっているのですが、その発祥の地であるアメリカではLyftをはじめとする類似のサービスを提供する企業が増えて競争が激化しています。そんな状況のなか、Uberは競合する他社に対して一種異様ともいえるほど過激な妨害行為を行っていたことが明らかになり、その手順を示したマニュアルの一部が公開されました。

This is Uber's playbook for sabotaging Lyft | The Verge
http://www.theverge.com/2014/8/26/6067663/this-is-ubers-playbook-for-sabotaging-lyft

元Uberの業務請負契約人が明らかにしたところによると、Uberは複数の契約人を集めたチームを構成し、それぞれに渡したプリペイド式の携帯電話とクレジットカードを活用してLyftなどの競合他社の切り崩しを行っているとのこと。The Vergeは新旧の契約人に加え、独自に入手した内部文書をもとにUberの手法をあぶり出しています。

「ブランド・アンバサダー」と呼ばれる肩書きを与えられた契約人の仕事は、Lyftに入れたタクシーのオーダーを突然キャンセルすることや、Lyftのドライバーに対してUberに乗り換えるよう勧誘を行うこと、またそのような行動を感づかれないように注意するなどとなっており、この「努力」の結果、大小の競合する新規参入企業はビジネスを行う基盤を失い、撤退していったものも存在しているとのこと。

By Chuck Patch

UberはこれまでにGoogleやAmazon、そして複数のベンチャーキャピタルから15億ドル(約1550億円)もの資金を集めているスタートアップ企業の代表格ともいえる存在で、その強大な資金力を一部投入する形でライバル企業をたたき落とす戦略を採っているといえます。

8月12日にCNNが報じたところによると、UberはLyftに対して5560件の予約を行い、その後キャンセルしていたことがLyftの調べにより明らかにされています。Uberはこの訴えに対し「Lyftの指摘は根拠がなく、まったく正しくない」と反論を行っています。

しかし、事情を知るUberの元契約人は、Uberはこの事態を全て把握しており、その反論は全てうそであると指摘しています。さらに、当初この行為の目的は、Lyftのドライバーを「予約」状態にすることで新規のユーザーを拾えないようにする単純なものと理解されていましたが、実際はさらに規模の大きく、洗練されたドライバー勧誘プログラムの一環であったこと、そしてそれを感づかれないようにするためのものであったことを示唆しています。

当初の「ブランド・アンバサダー」が担っていた仕事は、大学構内などでブースを出して「安くて便利なタクシー代わり」のUberを宣伝してユーザーを増やすというもので、これは「アンバサダー」として至極当然のものだったといえます。しかし、その仕事内容は徐々に変化を見せるようになり、特にニューヨークエリアのアンバサダーはLyftに狙いを定めるようになります。


その行動とは、会社から支給されているiPhoneとクレジットカードを使ってLyftのアカウントを作成してサービスを利用し、目的地に向かうまでの車内でドライバーを勧誘するというもの。特に、ニューヨークでは禁止されていますが、それ以外の都市ではドライバーがUberで仕事を始めるための「スターターキット」が用意されており、企業ぐるみでの勧誘体制が構築されていたと元契約人は語ります。また、アンバサダーはドライバーがUberに乗り換えるたびに750ドル(約7万5000円)の成功報酬を得ていたと語っています。

しかし徐々にLyftもこの行為をかぎつけることになり、勧誘に関与していたアンバサダーはLyftから利用を拒否されるようになったことから、Uberは戦略の見直しを行います。Lyftがニューヨークで新たなサービスを立ち上げるに先だって、Uberは十数名からなる「ストリートチーム」を編成してLyftの拡大戦略を分析する取り組みを開始。Uberのマネージャークラスの人物は同社の契約人に対し、「特別プロジェクトが進行中で、そのために8~10名程度のメンバーを募集。これは完全に独自の取り組みであり、当社としてのものではない。新たにドライバーを勧誘した場合には、多額のコミッションが支払われる」とする旨のメールを送っていたことが明らかになっています。

By Simon Blackley

この計画には別のコードネーム「SLOG」が名付けられていたとのこと。SLOGは「長くつらい仕事・強行軍」を意味する言葉であることからも、プロジェクトの特殊性が垣間見えます。全米から集められたメンバーには、Lyftの営業戦略についての情報収集と、ドライバーの勧誘が任務として与えられ、Uber名義のiPhoneが2台と、複数のクレジットカード番号が支給されたとのこと。これは、いずれLyftに見抜かれることを分かっていたUber側が対策として講じていたもので、仮に1台目のiPhoneが拒否された場合でも、もう1台の番号を使うことで業務を遂行するようにという狙いのためのものだったと元契約人は明らかにしています。

さらに、特別チームのメンバーには業務をフォローアップするメールが送られていました。そのメールの内容は以下のようなものとなっているのですが、そこには、
・感づかれることを防ぐために、いつも同じ場所から予約を行わないこと
・Lyftに乗車したら、会話の導入として「もうどのぐらいドライバーやってるの?」や「Lyftの何が気に入ったの?」などの質問を行うこと
・導入が完了したら、Uberへの加入を勧めること
・相手が関心を持ったら連絡先を聞くこと。断られた場合は、礼儀正しくその理由を尋ねること
など、詳細な手順がリスト化されており、システム化された勧誘プログラムの存在をうかがわせるものとなっています。


そして、移籍に関心を持ったドライバーを登録するためのオンラインフォームが以下のように用意されていたとのこと。


このようにシステム化が進められたUberの勧誘プログラムですが、次第に別の問題に遭遇することに。勧誘の回数が増えるにつれ、一人のLyftのドライバーに対して何度も勧誘を行ってしまうという事態が生じ、Lyftからマークされる事態に発展したといいます。これに対応するため、UberではグループメッセージアプリのGroupMeをチーム全員に導入して対象ドライバーの管理を行うという手法を取り入れました。メンバーはドライバーに勧誘を行った時は、その情報をGroupMeに流すことで情報の共有化を行ったとのこと。

Uberはこのシステムを全米中に拡大していた模様で、The Vergeが入手したメールでは、勧誘に使うために必要なプリペイド携帯やクレジットカード、ドライバーキットなどの個数を申請するためのフォームの存在が明らかにされています。対象となる都市にはロサンゼルス、シアトル、ボストン、マイアミ、ワシントンDCなど10都市の名前がリストアップされていたことが明らかになっています。


このようにさまざまな手段を講じて競合他社との競争(あるいは攻撃)を行っているUberの動きですが、一方でこれは業界の厳しい状況が反映されているものということもできます。一人のユーザーが一度に利用できるのはもちろん1社だけであるため、ユーザー数が一定であると仮定するとこの手のビジネスは、一方が優位にたてばもう一方が窮地に陥るというゼロサムゲームの一つであるということができます。

もちろんユーザー数の伸びがあるために、厳密にゼロサムになるとは限らないわけですが、このビジネスの厳しさを理解しているからこそ異様ともいえる戦略が実施されているということも一方では理解できるのかもしれません。このような状況で勝利を収めるためには、「他社よりも自社のアプリを立ち上げてもらい、予約を入れてもらう」こと、そして競合他社の足を引っ張って自社にユーザーを誘導するということになるわけです。

この件に関してLyftはコメントを拒否。そしてUberに人材を送り込んでいる人材会社は各スタッフに対して機密保持条項を順守して一切の発言を控えるよう警告しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
スマホで簡単にハイヤーを呼べるサービス「Uber」を利用してみました - GIGAZINE

地図上に空車タクシーを表示するなど新機能を追加したタクシー配車アプリ「日本交通タクシー配車」「全国タクシー配車」 - GIGAZINE

パリでタクシードライバーによる新規タクシー業者への攻撃が激化 - GIGAZINE

約1万台のタクシーの走行ルートを1日の最初からマッピングして観察できる「NYC Taxis:A Day in the Life」 - GIGAZINE

Googleが新たな広告戦略として実店舗への無料送迎タクシーの特許を取得 - GIGAZINE

in メモ,   ネットサービス,   乗り物, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.