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電子書籍に移行することで失われる読書体験の中身が少し判明

By mobilyazilar

KindleやKoboといった電子書籍リーダーやタブレット・スマートフォンの普及により、以前は紙ベースでしかなかった読書スタイルの多様化が進んでいます。従来の製本された書物を支持する層からは「紙と画面は別物だ」と指摘する意見を聞くこともありますが、そんな読書方法の違いによる差異を調査した研究からは興味深い結果が浮き彫りになっています。

Reading Literature on Screen: A Price for Convenience? - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2014/08/14/arts/reading-literature-on-screen-a-price-for-convenience.html?_r=0

研究を行ったのはノルウェー・スタヴァンゲル大学のAnne Mangen氏とフランス・エクス=マルセイユ大学のJean-Luc Velay氏らによる研究チーム。研究では、読書とタブレット使用の習慣がそれぞれ同じ程度の大学院生が50名集められ、25名ずつの2グループに分けて実験が行われました。各グループはエリザベス・ジョージ著の短編小説を最後まで読んだ上で様々な検証に臨んだのですが、一方のグループは書籍を、もう一方のグループはAmazonの電子リーダー「Kindle DX」にインストールした電子書籍を使用しました。

検証では、各グループの学生が読了するまでに要した時間を計測。その後、本文の内容に関する質問に回答させ、作品に対する情緒反応を心理学の基準をもとに計測することで両グループ間で生じる差異がどのようなものであるかが測定されました。その結果、両グループの間には大きな違いこそ認められなかったのですが、ある点においては明確な違いが生じていることがわかりました。

By Tim RT

両グループとも、「物語の背景」や「登場人物」、「ストーリーの詳細」などの項目では同等の正解レベルを示しているのですが、物語中の出来事が発生したタイミングを尋ねた設問では、電子書籍を読んだグループが明確に低い正答率を示したとのこと。さらに、14個に分けられた話の流れを順番に並び替えるという設問に至っては、電子書籍グループの正答率はもう一方のわずか半分ほどしかなかったという結果が浮き彫りになりました。

その結果を表す表がこちら。横棒の左側が誤答、右側が正解の数が多かったことを示しており、灰色の円で示された電子書籍の正解率は紙ベースに比べておおむね低く、特に「Time and events」の項目では大きく水をあけられている様子が分かります。


また、物語を時系列に並べかえる問題の正解率を比較したものが以下のグラフ。数値が「0」に近づくほど正解率が高いことを示すのですが、紙ベースの4.8に比べて電子書籍は7.9と、3.1ポイントも差が開いていることがわかりました。


この結果に対し、調査チームのMangen氏は「いずれの設問も時間と経時性に関する項目であることが興味深いところです」とその傾向の意味についてコメントし、この結果に関してはさらなる研究が求められること、そしてこの結果に関しては文字の書体や用いられたデバイスの違い、そして被験者が持っている過去の読書体験などが影響を与えていることが考えられるとしています。

Mangen氏は、この原因を追及するためには「複雑に絡み合った要素を一つずつ解きほぐす必要があります」と語ります。現段階の調査結果でも「紙と画面の読書は別物だ」とする論を裏付けるものとなりそうですが、「実際に書物を手に持つという『触覚』の特質が与えうる影響の確認になるでしょう」とMangen氏は論点について述べています。

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in メモ,   ネットサービス,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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