Appleが人気ヘッドホンメーカー「Beats」を買収するとどうなるのか？

By Alejandro Castro

AppleがヘッドホンメーカーのBeatsを過去最高額となる32億ドル(約3270億円)で買収するかもしれないと報じられていますが、「Beatsを買収したAppleは何を行うのか？」ということを元Appleの従業員のベン・トンプソン氏が話しています。

Why Apple Is Buying Beats | stratechery by Ben Thompson
http://stratechery.com/2014/apple-buying-beats/

AppleはMac、iPod、iPhone、iPadといった製品を提供してきましたが、2014年度第1四半期(10-12月)決算報告書の発表では売上比が、iPhone：56.43％、iPad：19.91％、Mac：11.10％、iPod：1.69％、iTunes：7.63％になっています。中国移動通信(チャイナ・モバイル)でのiPhone発売が決定したことでiPhoneのシェアはさらに伸びる見込みですが、収益の半分以上をiPhoneに頼っているのがAppleの現状です。iPad・Mac・iTunesなどの売上が今後iPhone以上になるとは考えられず、またAppleがiPhone級の大型製品を繰り出してくる可能性も低いため、トンプソン氏は「Appleは今後の『明確な成長手段』を持っていない」と指摘しています。

テクノロジーの歴史を振り返ると、汎用コンピュータ・PC・インターネット・モバイルの4つの時代に分類でき、前者3つはそれぞれ15年ずつ続いていたとのこと。モバイル時代は2014年で7年目を迎えたところで、歴史に基づいてみると、iOSとAndroidが主要なプラットフォームとして成熟するのは2020年ごろと予想されます。そのためトンプソン氏は、「言い換えれば、iPhoneは向こう5年間は収益を担う主要製品のままでしょう」と話しています。

Appleは初のウェアラブルデバイスとなる「iWatch」の開発を続けていると言われてますが、「Appleを急成長させるデバイスと考えるのは非現実的です」とトンプソン氏は予想します。これらの予想から、Appleは主要製品ではなく補助的な収益を上げるデバイスを必要としており、iPhoneの付属品のための「Beatsイヤホン」ほどベストなものはないとのこと。

トンプソン氏は、音楽オタクたちからBeats製品の音質についての文句を何度も聞いているそうですが、その低音の効き過ぎたヘッドホンが好きな人も存在します。また、Beatsはアメリカの10代の若者に人気を博しており、ヘッドホン業界のシェアの約50％を占めていることからも、デザイン性の高さが認められていることもわかります。

@SammyWalrusIV yep, just look at this: pic.twitter.com/XmEjKIYgUb

— Bartek Pucek (@barticz) 2014, 5月 9

Apple製品に付属する純正イヤホン(EarPods)のレビュー欄を見てみると、「昔に比べると音質は良くなっている」「低音が良く聞こえる」「高音が聞こえにくい」といった内容。iPod時代に付属していた頃のオマケ程度の品質だったイヤホンより品質は向上しているようですが、税別価格2900円を考えると単体で購入する人は少ないかもしれません。

さらにBeatsは音楽ストリーミングサービス「Beats Music」の提供も行っているため、「Beatsを買収することでAppleは、『iPhone用Beatsイヤホン』『音楽ストリーミング』の2つを手に入れるだろう」と、トンプソン氏は予測しています。

なお、AppleとBeatsの両者は買収について正式なコメントを出していませんが、Beatsの設立者ドクター・ドレー自身が「億万長者(ビリオネア)になったぜ！」と話しているムービーがリークされており、以下から確認することができます。

2014 |Dr Dre - Hip Hop's first Billionaire ( Official Video ) - YouTube