明晰夢の状態を脳に外部から電気刺激を与えることで作り出せることが判明
By Nicholas Jones
人間をはじめとする動物は睡眠中に夢を見ることがあるものですが、夢の中に登場する自分のことを第三者からの視点で見ることができたり、夢の物語をコントロールできる夢のことを明晰夢と呼んでいます。明晰夢は睡眠と覚醒の中間の状態であると考えられており、誰もが体験するものではないのですが、心理学者の研究チームが行った研究では、前頭部を通して脳に弱い電流を流すことにより高い確率で明晰夢の状態を作り出せることが明らかにされました。
An electric current could let people control their dreams | The Verge
http://www.theverge.com/2014/5/12/5709658/lucid-dreaming-enabled-with-electric-stimulation-study-finds
この研究を行ったのは、ドイツ・ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学(フランクフルト大学)のウルズラ・ボス氏が率いる心理学者による研究チーム。過去の研究からは、明晰夢の状態にある人の脳波にはおよそ40Hzのガンマ波が見られることが明らかにされていましたが、研究チームは今回、逆に外部から脳にガンマ波に相当する微弱電流による刺激を与えることで、明晰夢の状態をつくり出せることを明らかにしました。
実験には、今までに明晰夢を見た経験がない27名の男女(男12名:女15名)の被験者が参加し、4日間にわたる検証が行われました。被験者の前頭部と側頭部には電極が取り付けられ、睡眠中に電流を流して脳に対する刺激を与える「経頭蓋交流電流刺激:tACS」および、実際には刺激を与えない「ダミー刺激」を実施し、その反応が観察されました。
tACSは被験者がレム睡眠状態に入った2~3分後に実施され、電極を通じて電流による刺激が数秒間にわたって与えられます。この際に与えられる刺激には2Hzから100Hzの周波数を持つ交流電流が用いられ、周波数による反応の違いが検証されました。刺激を与えられた被験者は眠りから覚まされて、どのような夢の状態にあったのかが聞き取り調査されます。すると、被験者は40Hzの刺激の際には4分の3の確率で、そして25Hzの場合には2分の1の確率で明晰夢の状態を感じていたことが明らかになりました。
By karin and the camera
刺激を与えられて明晰夢を見ていた時のことを被験者の一人は「まるで自分のことを別の第三者の視点で見ているようで、夢そのものの物語をコントロールすることができた」と語っています。また、それら2種類の周波数以外での刺激やダミー刺激が行われている場合には影響を受けなかったことも明らかになっています。
外部からの刺激で夢の状態をコントロールできる事を明らかにする実験結果となりましたが、さらなる調査がこれからさらに進められることになるようです。この方法論が確立されて実用化されると、夢の流れをコントロールすることで過去のトラウマを解決するといった治療法に活用できる可能性も語られています。
By Don
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