Amazon倉庫で身分を隠して働いた記者が語る「過酷な労働環境」とは?

By Thomas

世界最大のオンラインショッピングサイトAmazonが商品を保管している物流センター倉庫内での過酷な就労環境はしばしば問題視されています。Mother Jones誌の記者であったマック・マクリーランド氏は、身分を隠してAmazonの倉庫従業員に採用され潜入取材を行うことにより、その過酷な実態を明らかにしています。

I Was a Warehouse Wage Slave | Mother Jones
http://www.motherjones.com/politics/2012/02/mac-mcclelland-free-online-shipping-warehouses-labor


Inside Amazon's Warehouse - mcall.com
http://www.mcall.com/news/local/mc-allentown-amazon-complaints-20110917,0,7937001,full.story

マクリーランド氏は、2012年のクリスマスシーズンに備えてAmazonが4カ月間の期間限定で臨時従業員を4000人募集していることを知り、求人に応募したところ採用され、Amazon倉庫内に潜入することに成功しました。なおアメリカでは、労働者になりすまして潜入取材をするジャーナリストを企業が訴えた場合、往々にして裁判所が企業側を支持するという前例が多いことから、マクリーランド氏は、体験レポート記事の中では「Amazon」という企業名を用いておらず、自身が勤めた企業を一貫して「Amalgamated Product Giant Shipping Worldwide Inc(世界的巨大総合ショッピング会社)」と呼んでいます。

雇用契約
マクリーランド氏が働いたのはミシシッピー州西部にあるAmazon倉庫で、雇用形態はAmazonから直接雇用されるというものではなく、現地の派遣会社から派遣された契約社員という形であったとのこと。派遣会社の職員には「酷い環境だとしても決して取り乱してはいけません。あなたの代わりの人はごまんといます。あなたは、自分の尊厳を玄関に置いてから仕事へ向かう必要があります」と覚悟を求められたとのこと。このときマクリーランド氏は自分は世界的巨大総合ショッピング会社が採用する4000分の1のちっぽけな存在に過ぎないのだと感じたそうです。

絶対的ルール
トレーニング初日に徹底してたたき込まれたのは「時間厳守」という絶対的ルールで、無断欠勤は論外、遅刻でさえ解雇につながりうるということをマクリーランド氏を含む4000人は知らされました。それは、遅刻時間によって0.5ポイント刻みの反則点が加算されていき、6ポイントたまると問答無用で解雇というもの。一緒に働き出した60代の女性は「遅刻を恐れて夜ぐっすり眠れない」と話したそうです。

By Robin Maben

Amazonが掲げる目標は、「顧客サービスのさらなる向上」。顧客により良い体験をさせることが成長の重要な鍵であり、その実現にはさらなる低価格化が必要で、それには非効率的なものを一切排除する必要があるということを従業員一同はたたき込まれたそうです。

職場環境
果てしなく広い倉庫は秋が深まる季節には寒く、私語が許されない環境も相まって非常に寒々とした空間であったとのこと。その寒々とした空間でマクリーランド氏が与えられた仕事は、小型のハンドスキャナーを手に倉庫内を走り回り、目的の商品をかき集める「ピッカー」という役目でした。

実際のスキャナーは以下のようなものです。

アマゾン 巨大倉庫の全容 - YouTube


スキャナーには倉庫のどこに行くべきかが表示されるだけでなく、何秒で行くべきかさえ表示されるとのこと。棚と棚の間を正確に移動して、目的の商品を素早くピックアップしたらトートバックに詰め込み、また次の商品を探しに向かうという作業が延々と繰り返されます。すべて秒刻みのスケジュールはクリアするのが極めて厳しい時間設定で、水を飲む暇もないとのこと。なお、新米ピッカーは長期間働いているベテランピッカーの75%の分量を集める必要があり、この基準に満たないと「カウンセリング」という名の指導が入るとのこと。

By Scottish Government

この厳しい作業についてマクリーランド氏は、スキャナーのプログラム通りに動くことを命じられた「使い捨て」の従業員にとって、自分が何をやっているのかを理解する必要がないようにシステムが設計されていると感じたそうです。

時間を守るために必死に商品を集めるためにかけずり回るうちに、寒々とした倉庫でもTシャツやタンクトップ姿で作業する人が出てくるほど。倉庫内の空調設備は費用がかさむため最小限で、暖房はもちろん冷房もなし。マクリーランド氏は、長期間倉庫で働く先輩従業員から「夏はもっと過酷なので、この時期に働けるのを喜ぶべきだよ」と言われたとのこと。

なお、夏のAmazon倉庫内は想像を絶する過酷さであることは有名な話です。2011年、ペンシルバニア州のAmazon倉庫では、脱水症状や熱中症で倒れる従業員が続出。この対応にあたってAmazonは、空調設備を改善するのではなく倉庫の外に救急車と救急隊員を待機させ、倒れて運び出された従業員に応急処置を施したり地域の病院に搬送したりするという処置を講じたことが、Morning Callに掲載された告発記事で明らかにされています。なお、同記事では、熱さに苦しむ従業員の中に妊娠中の女性がいたことや、Amazonが救急車だけでなく、職場に復帰できない従業員の代わりの「新人」をも待機させていた実態が生々しく記述されています。

食事休憩
食事休憩時に食堂に向かうためには金属探知機をくぐる必要があるそうで、これは従業員が商品を盗み出せないようにするセキュリティ対策とのこと。なお、食事休憩に与えられる時間は「29分59秒」。つまり、食事に30分かけるということは1秒の遅刻を意味するとのこと。もちろん金属探知機をくぐるために列に並ぶ時間も29分59秒に含まれているため、食事も慌ただしく済ませ、自分の持ち場に駆け戻る必要があり、また、トイレも数が少なくいつも長蛇の列で、当然、この列に並ぶことを計算して休憩する必要があったとのこと。

ストレス
マクリーランド氏にとって、商品収集の作業の中でも特にストレスがたまるのが「本」のピックアップ作業だったそうです。倉庫内は寒いと同時にとても乾燥していて、至る所に電子機器や金属製の棚があり、ベルトコンベアが作動し扇風機が回っているため、常に大量の静電気がたまった状態であったとのこと。中でも倉庫2階・3階の書籍フロアは特に乾燥していて、フロア中をかけずり回りたっぷりと静電気をため込んだ状態のまま本をピックアップするときに金属製の棚に触れると大きな電気ショックを見舞われることになるそうです。薄暗い場所では静電気が発生すると火花が飛ぶくらいで、マクリーランド氏の同僚で棚の下にある本を取ろうとかがんだときに、うっかり額が金属棚に触れて電気ショックをくらい、失神した男性がいたとのこと。

By r000pert

帯電防止のコーティングが施されたマットがこの世に存在することをAmazonは気付いていないのかと恨めしく思うマクリーランド氏でしたが、監督者に静電気対策を提案してもなしのつぶてだったそうです。

離脱
若い頃はウェイトレス・清掃作業員・引っ越し作業員として働いた経験があったマクリーランド氏でしたが、31歳になった彼女にとってAmazon倉庫内で過酷な10時間半の労働を毎日続けるのは人生をすり減らすようなもので、継続困難なことだと感じたとのこと。

500品の商品を午前中に収集し、最後のランチタイムを過ごした後、マクリーランド氏は許可なしに倉庫のドアを開けて外に出て、新鮮な冬の空気を大きく吸い込んでからAmazonの倉庫を離れたそうです。自分の意志でAmazon倉庫から脱出できる自分の立場をマクリーランド氏は「幸福」であると語っており、不幸なことにアメリカ人の約3分の1の人は貧しさのために、このような過酷な環境から逃れられない現実があると話しています。

By Daniel Kulinski

Amazon倉庫で商品を忙しく運ぶ契約社員は、健康保険に加入することもできず時給1000円を下回る賃金しか得られない人も多いとのこと。こうした過酷な労働条件で黙々と働く人たちの背後に、離脱者が出るのを待つ多くの失業者が列をなしているという現状が、Amazonの「高品質」なサービスを支えています。

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