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日本の約3倍の医療費がかかる一方で平均寿命は短いアメリカの医療制度の問題点とは?


アメリカは医療費が日本に比べると高額ですが、平均寿命を比較すると日本を下回っています。GitHub上で公開されたオープンソースプロジェクト「The American Healthcare Conundrum」は、アメリカの医療制度で何に費用がかかり、どこで「無駄」が発生しているのかを公開データから一つずつ検証し、その結果をまとめています。

The American Healthcare Conundrum
https://github.com/rexrodeo/american-healthcare-conundrum

Health expenditure per capita: Health at a Glance 2025
https://www.oecd.org/en/publications/2025/11/health-at-a-glance-2025_a894f72e/full-report/health-expenditure-per-capita_affe6b0a.html

経済協力開発機構(OECD)の統計によると、2024年の1人当たりの医療支出はアメリカが約1万4885ドル(約236万円)、日本が約5790ドル(約92万円)でした。その一方で平均寿命は2023年時点でアメリカが78.4歳、日本が84.1歳で、日本はOECD加盟国でも2番目の高さです。

アメリカの医療制度で何に費用がかかっているのかについてプロジェクトが最初に取り上げているのは、「処方せんなしで薬局でそのまま買える市販薬(OTC)にも、アメリカの公的医療保険であるメディケアが処方薬制度を通じて支出している場合がある」という点。メディケアの処方薬給付制度の2023年度データを使った分析では、OTC版がある薬に対する支出は約20億ドル(約3168億円)、請求件数は約8300万件、対象となった受給者は約2800万人にのぼったとのことです。


プロジェクトは、胃腸薬のように薬局で安く買えるOTC版があるのに処方薬制度を通じてより高い支出が発生している例があるとし、こうした支出を見直せば年間約6億ドル(約950億円)節約できる余地があるとしています。

また、プロジェクトは「同じ薬でも、アメリカでは他の先進国よりかなり高い価格が付いている場合がある」と指摘しています。アメリカのメディケア処方薬のデータやイギリスの公的医療制度「NHS」で使われる価格データと、アメリカのシンクタンク「RAND」の医療費比較データを使った分析では、対象にした9種類の高額薬に対する2023年のメディケアの支出は約527億ドル(約8兆3470億円)に達したとのこと。

例えば、血液を固まりにくくする薬「エリキュース(アピキサバン)」は、メディケアでは30日分で862ドル(約13万6500円)ですが、日本では約22ドル(約3490円)、イギリスでは約1.48ドル(約235円)です。最大で581倍もあるこうした価格差を縮められれば、年間約250億ドル(約3兆9597億円)を節約できる余地があるとプロジェクトは見積もっています。

以下はメディケアが2023年に支出した9種類の主要な先発薬の金額と、国際平均価格で計算した場合の推定額を比べたグラフで、赤色の棒がアメリカでの価格、緑色の棒が他の先進国の平均価格を示しています。


さらに、「病院で行われる同じ処置でも、民間保険の支払い額がメディケアより大幅に高い」という点についてプロジェクトは指摘しています。アメリカの病院コスト報告データとRANDの医療費比較データを使った分析では、民間保険は同じ処置に対して、メディケアが払う額の2.54倍を支払っていたとのことです。

たとえば人工股関節置換術の費用は、アメリカで施術した場合およそ2万9006ドル(約460万円)ですが、ドイツでは1万4986ドル(約237万円)、イギリスでは9641ドル(約153万円)、スペインでは9105ドル(約144万円)でした。冠動脈バイパス術もアメリカでは8万9094ドル(約1411万円)で、ドイツの2万4044ドル(約381万円)やイギリスの1万6936ドル(約268万円)を大きく上回っています。この水準をメディケアの2倍程度まで下げられれば、年間約730億ドル(約11兆5623億円)を節約できる余地があるとプロジェクトは試算しています。

以下は人工股関節置換術、膝関節置換術、冠動脈バイパス術、虫垂切除術の価格を国別に比べたグラフです。アメリカで手術を受けた場合の費用(赤色)が他国より高いことが示されています。


このほか、「PBM(薬剤給付管理会社)が薬価の裏側で中間コストを膨らませている」という点が大きな論点として取り上げられています。PBMは、保険会社と製薬会社、薬局の間に入って薬の支払いを管理する業者です。プロジェクトによると、アメリカではCVSケアマーク、エクスプレス・スクリプツ、オプタムRxの3社が年間66億件の処方薬の80%を扱っているとのこと。こうしたPBMは、薬局に払う額と保険側に請求する額の差額を取る「スプレッドプライシング」や、値引きの実態が見えにくいリベート、どの薬を優先して使うかを決めるリストへの介入などで利益を上げているとされています。プロジェクトは、こうした仕組みの見直しで年間約300億ドル(約4兆7516億円)を節約できる余地があると整理しています。

以下はPBM市場のシェアと、処方薬に使われたお金がどこへ流れているのかをまとめたグラフです。3社で処方薬の大半を扱っていることや、PBMが受け取るマージンの大きさが示されています。


「診療以外の手続きに多くの人手と巨額の費用が割かれている」という点は、特に大きい支出として示されています。アメリカの病院コスト報告データや医療費全体の統計、OECD、アメリカ医師会(AMA)のデータを使った分析では、アメリカは請求処理、保険会社とのやり取り、事前承認といった医療事務に1人当たり4983ドル(約79万円)を使っており、比較対象国の884ドル(約14万円)を大きく上回るとのこと。

さらに、2023年度の病院コスト報告データから4518の病院を分析したところ、管理部門費だけで1412億ドル(約22兆3644億円)、福利厚生やデータ処理などを含めた管理・運営費の合計は2685億ドル(約42兆5232億円)で、病院総コストの32.2%を占めていたとのことです。プロジェクトは、請求のやり方をそろえたり、事前承認の手続きを自動化したりすることによって、年間約2000億ドル(約31兆6776億円)を節約できる余地があると見積もっています。

以下はアメリカの病院で発生している管理・事務コストの内訳を示したグラフです。管理部門費が全体の53%、続いて福利厚生が22%と大きな割合を占めています。


さらに、プロジェクトは「病院で使う物品のコストに大きな差がある」という点も取り上げています。2023年度のアメリカの病院コスト報告データを使って5480の病院で発生した1億4230万件の退院事例を分析したところ、医療材料、埋め込み型機器、患者に直接請求される薬代を合わせた支出は1709億ドル(約27兆645億円)に達し、退院1例当たりの全国平均は1941ドル(約31万円)だったとのことです。

ただし、重い症状の患者が多い病院ほどコストが高くなりやすい点と病院の規模をそろえて比較しても、同規模の病院同士で大きな差があったそうです。例えば中規模病院では退院1例当たりの物品コストが382ドル(約6万円)の病院もあれば1165ドル(約18万4000円)の病院もあり、その差は3倍超に達しています。また、100床未満の小規模病院ではこの差が7.7倍に広がったとのこと。プロジェクトは、こうしたコストの高い病院を同規模の病院の中で上位4分の1に入る程度の水準まで下げられれば、年間約280億ドル(約4兆4349億円)を節約できる余地があると試算しています。

以下は病院で使う物品のコストのばらつきを、病床規模ごとに示したグラフです。小規模病院から大規模病院まで、同規模の病院でも退院1件当たりのコストに大きな差があることが示されています。


ただし、プロジェクトでは「年間医療費はアメリカと日本で約3兆ドル(約475兆1640億円)の開きがあり、挙げられているのは例の一部にすぎない」と整理されています。

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in メモ, Posted by log1b_ok

You can read the machine translated English article What are the problems with the American ….