日本の近代住宅建築がクレイジーな理由を外国人が考察
By magro_kr
日本人が海外の独特な文化を反映した建築物を目の当たりにすると、自国のものとは全く違うため特異な印象を受けますが、それは海外の人にとっても同じ事。日本の建築物、特に若い建築家が設計した近代住宅建築は、多くの外国人が「クレイジー」な印象を受けているとのことで、ArchDailyが日本の近代住宅建築を外国人の視点から分析しています。
Why Japan is Crazy About Housing | ArchDaily
http://www.archdaily.com/450212/why-japan-is-crazy-about-housing/
外国人が、階段や手すりのないバルコニー・全面窓張りでプライベートをさらけ出している部屋・窓のない家などを見ると「なぜ日本人は奇抜な建築を受け入れるのか?」という印象を受けるようです。外国人が不思議に思う、外観が突出して目立つ住宅の多くは日本の若い建築家によって設計されています。その背景には、日本の建築業界で若手建築家が出世するために、他人とは全く違うデザインで目立つ家を設計する、ということがあります。
古い慣習に従わない建築家に仕事を依頼するクライアントもまた、古い慣習に従うことを好まず、プライバシー・快適性・美学などの建築における重要な要素を無視しているように見えます。では、なぜ若い建築家に仕事を依頼するクライアントは他とは全く違う住宅を望むのでしょうか?
By David A. LaSpina
西洋では、社会的基準から大きく外れた住宅は、将来家を売るときに住宅の価値を下げてしまうので、住宅に投資することの危険性を考えて、なるべく個人的な要素を住宅のデザインにあまり取り入れません。日本の住宅事情が西洋と同じ論理にならないのは、日本人に「一度手に入れた住宅を売却する」という概念があまりないからです。日本の家の建物価値は、消耗品である冷蔵庫などと同じように、急速に下落します。新築の家を建てても、15年後には価値がゼロといったことが起こりえるのです。
野村総合研究所がまとめたレポート(PDFファイル)によると、人口が減少しているにも関わらず、住宅建設数は安定しており、日本国内の住宅販売の内87%は新築となっていて、海外の11~34%と比較してもかなり高い結果。
ここで、気になるのは「なぜ日本人は古い家を評価しないのか?」ということです。
理由として最初に挙げられるのは、「日本は新しいモノを崇拝する」という点。また、頻繁に発生する地震は、建物が絶対的に安全ではないことを日本人に教えてきました。第二次世界大戦後、日本では急速な産業化が進み、各都市が再構築されたため、適切な耐震補強のされていない、質の低い住宅が量産されました。そのため、戦後すぐに建てられた家の大部分は取り壊されてしまいます。しかしながら、日本が新しいモノ好きであることや、戦後の住宅事情などが、日本人の古い家を評価しない理由である、と直接的に示す資料はありません。
日本のサラリーマンは転職をあまり好まず、1つの職場に居続ける傾向があります。数年前から転職する人の割合は増えていますが、安定した給料は、住宅ローンを組む際の必須条件。しかしながら、サラリーマンが住宅ローンを返済するためにあくせくと働く間、住宅の価値は下がり続けます。家を中古で売り新しい家に住むなどということは不可能なわけです。
By Tinou Bao
こういった日本の不動産経済の流れは、若手の建築家に大きな魅力になっています。クライアントは、購入した家を数年後に売却することを考える必要がなく、どんな家を建てても隣人が不平を言う権利はないので、若手の建築家は自由にデザインすることが可能。
ArchDailyによると、「住宅を購入するためにコツコツ貯蓄しても、家を購入した途端、その価値が急速に下がってしまうのは一見悲しく見える」とのことです。
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