サイエンス

目を閉じると音を聴き取りやすくなるのか?


何か小さな音を聴き取りたいと思った際、目を閉じて視覚的な情報を遮断し、聴覚に集中するという人は多いはず。中国の上海交通大学の研究チームが、「目を閉じると騒がしい場所で音を聴き取る能力が向上するのかどうか」を実験した結果、意外な結果が明らかとなりました。

Visual engagement modulates cortical criticality and auditory target detection thresholds in noisy soundscapes | The Journal of the Acoustical Society of America | AIP Publishing
https://pubs.aip.org/asa/jasa/article-abstract/159/3/2513/3383698/Visual-engagement-modulates-cortical-criticality

Closing Your Eyes Might Not Help You Hear Better After All - AIP Publishing LLC
https://publishing.aip.org/publications/latest-content/closing-your-eyes-might-not-help-you-hear-better-after-all/

Does Closing Your Eyes Help You Hear? A Surprising Study Has The Answer : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/does-closing-your-eyes-help-you-hear-a-surprising-study-has-the-answer

脳が一度に処理できる情報量には限りがあるため、「目を閉じて視覚的な情報を遮断することで聴覚情報の処理に割り当てられる脳のリソースが増え、音を聴き取る能力が向上する」という考えは理にかなっているように感じられます。しかし、騒音のある環境で音を聴き取りたい時、目を閉じていた方がいいのかどうかは不明でした。


そこで研究チームは25人の被験者を椅子に座らせ、70dB(デシベル)の背景雑音が流れる中で「カヌーをこぐパドルの水しぶき」「ドラムの音」「ヒバリのさえずり」「列車の走行音」「キーボードの打鍵音」という5種類の音のうち、1つを聴き取ってもらう実験を行いました。

実験は「目を閉じた状態」「目を開けて空白の画面を見つめた状態」「目を開けてターゲット音に関連した画像を見つめた状態」「目を開けてターゲット音に関連した動画を見つめた状態」という4つの条件で行われました。後者の2つの条件では、たとえば「カヌーをこぐパドルの水しぶき」がターゲット音となった場合、被験者は以下のように関連する画像や動画を見つめながら音を聴き取ろうとしました。


背景雑音は70dBに固定されていましたが、被験者はターゲット音の音量を上げたり下げたりすることができ、「背景雑音の中でかろうじて聞こえるターゲット音の音量」を報告しました。研究チームは「目を開けて空白の画面を見つめた状態」を基準として、被験者がどれほどの音量でターゲット音を聴き分けられたのかを調べたとのこと。

実験の結果、被験者が目を閉じた状態でターゲット音を検知するには、空白の画面を見つめた状態の基準値より平均で1.32dB大きな音が必要でした。一方、音に関連した画像を見つめた状態では必要な音量が基準値より1.6dB小さくなり、音に関連した動画を見つめると必要な音量は2.98dBも小さくなりました。

上海交通大学の研究者であるユー・フアン氏は、「一般的に信じられていることとは異なり、目を閉じると実際にはこれらの音を感知する能力が低下することがわかりました。逆に音と対応した動的な映像を見ると、聴覚感度が著しく向上します」と述べています。

続いて研究チームは被験者に脳波計を装着させ、脳活動をモニタリングしつつ同様の実験を繰り返しました。すると、被験者が目を閉じると雑音や小さな音がより積極的にフィルタリングされ、結果として雑音だけでなくターゲット音まで聴き取れなくなってしまうことがわかりました。

フアン氏は「騒がしい環境では、脳は信号を背景音から積極的に分離する必要があります。目を閉じることで促される内的な集中は、この状況では実際のところ逆効果となり、過剰なフィルタリングにつながってしまうことがわかりました。一方で視覚的な刺激は、聴覚システムを外部の世界に結びつけることに役立ちます」と説明しています。


あくまで今回の研究は、騒がしい環境における音の聴き取り能力について調べたものであり、過去の研究では静かな環境だと目を閉じた方がよく音を聴き取れることが示されています。しかし、現代社会では騒がしい環境が一般的なため、目を開けていた方が音を聴き取りやすいシチュエーションの方が多いかもしれません。

研究チームは今後、「ドラムの音を聴き取りたい時に鳥の画像や動画を見せたらどうなるのか」といった点について研究したいとのこと。フアン氏は、「聴覚能力のブーストは単に目を開けていることで起きるのでしょうか?それとも脳は、視覚情報と聴覚情報の完璧な一致を求めるのでしょうか?この違いを理解することで、複数の感覚統合がもたらす具体的なメリットと、注意がもたらす一般的な効果を区別できるようになります」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
なぜ大きな物音を聞くと反射的に目を閉じてしまうのか? - GIGAZINE

まばたきの回数が減った時は脳がより活発に働いているのかもしれない - GIGAZINE

音で周囲を知覚する盲目の人は「音で見る」ように脳が変化しているという研究結果 - GIGAZINE

音だけで周囲の状況を「見る」エコロケーションを練習する7つのコツ - GIGAZINE

人間はわずか10週間の訓練で反響音を使って周囲を把握する「エコーロケーション」を習得できる - GIGAZINE

5人に1人は光を「聞く」ことができる - GIGAZINE

「色が聞こえる」「時間を見ることができる」など共感覚はなぜ起こるのか? - GIGAZINE

人間の感覚は五感ではなく最大三十三感である可能性 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article Does closing your eyes make it easier to….