脳の樹状突起が情報を処理している可能性があることが示される
By Jean-Etienne Minh-Duy Poirrier
これまで、脳の神経細胞での情報(信号)を送り出すのは「軸索」であり、信号を受け取るのが「樹状突起」であるとされてきましたが、樹状突起は情報を受け取るだけでなく、情報を処理している可能性があることが発見されました。
UNC neuroscientists discover new ‘mini-neural computer’ in the brain — News Room - UNC Health Care
http://news.unchealthcare.org/news/2013/october/unc-neuroscientists-discover-new-2018mini-neural-computer2019-in-the-brain
神経細胞(ニューロン)の基本的な機能は、入ってきた情報(入力刺激)を他の細胞に伝達することであり、他の細胞に信号を送り出すのは「軸索」が、他の細胞からの信号を受け取るのは「樹状突起」が担っているとされてきました。
しかし、UNC脳神経科学センターとノースカロライナ大学の共同研究チームは、樹状突起が、ニューロンからニューロンへの情報伝達で受動的な役割だけでなく、能動的な働きをすることを発見しました。
研究チームは、パッチクランプ法を用いて2光子励起顕微鏡でマウスの神経細胞内の樹状突起を観察しました。この際、情報が伝達されるときに起こる電気的な発火(スパイク)を観測できるように、マウスのニューロンにはカルシウム染料が満たされました。
実験でUNC医学部のスペンサー・スミス助教授は、ネズミがスクリーン上に映された視覚的情報を与えられたときに、ニューロンの部位中で樹状突起にスパイクが起こることを発見しました。スミス博士は、マウスの樹状突起がある特定の視覚的な刺激に対してスパイクを起こすことから、何が見えたかに関する情報を処理している可能性があると考えています。
従来、単に信号を受信する部位であると考えられていた樹状突起が、情報処理を行ういわば"ミニコンピューター"の役割を果たすことを示す今回の研究成果は、長年の脳研究のモデルを変えるものであり、また、新たな脳の神経回路の仕組みを示唆するものとして、さらなる研究の進展が期待されています。
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