コンピュータの進化はより人間の気を散らして愚かにしていく

by Cathy

コンピュータ技術は日々進歩しており、我々の周囲には生活を便利にするPC・スマートフォン・タブレットなど、さまざまなテクノロジーがあふれています。昔の人が行った偉業は、現代の技術を用いればもっと簡単に行うことができる感さえあります。しかし、実際にはテクノロジーの進歩によって「気が散る」ことが多くなるので、そうはうまくいかないと予測されています。

The Problem With Multitasking : The New Yorker
http://www.newyorker.com/online/blogs/elements/2013/09/we-need-computers-that-fix-our-brains-not-break-them.html



スティーブ・ジョブズがアタリ社に勤務していたころ、「ブレイクアウト」の回路の部品減らし作業を4日でできないかと依頼されて盟友のスティーブ・ウォズニアックに相談を持ちかけ、2人で4日間寝ずに作業して達成したという逸話があります。

これに似た話としては、作家のフランツ・カフカだと「1912年9月22日午後10時にタイプライターの前に座って小説を書き始め、8時間後に『審判』を書き上げた」であったり、同じく作家のジャック・ケルアックが「スクロール(巻物)」と呼ばれる長さ120フィート(約36.6m)のトレーシングペーパーをタイプライターにセットして紙を交換することなくタイプし続け、3週間後に「路上」の草稿を完成させたというものがあります。

彼らと同じようなことをするとき、技術の進んだ現代の方がいろいろと捗るような気がしますが、The New YorkerのTim Wuさんは「現代だと『気が散ること』との戦いがもっと厳しくなるだろう」と指摘しています。要するに、当時のマシンはシングルタスクなので、作業をしているときはそれに集中するしかなかったのに対して、現代のコンピュータはマルチタスクが可能なので「作業の合間にTwitterのタイムラインをチェック」「ドキュメントを読みながらSkypeを使う」などができてしまい、集中力が削がれてしまうのです。

by Katie Lips

コンピュータにマルチタスクが求められるようになったのは1960年代のこと。まだコンピュータが巨大で動作の遅い汎用コンピュータだった時代、乏しいリソースの中で競合するリクエストをさばくためにエンジニア(IBMの科学者ボブ・バーマー説やMITのジョン・マッカーシー説などがある)が「タイムシェアリングシステム」を開発し、一度に複数の処理を行えるようになりました。システムはこうしたメインフレームから個人用のコンピュータにも持ち込まれ、AppleのMacintoshがデスクトップとウィンドウを用いたインターフェースを導入するなどして、1980年代には一般に広がりました。

一方で、問題となってくるのは、あくまでコンピュータを使うのが人間だということ。人間の脳は、同時に複数の事柄を処理したり、1点に極度に集中することが苦手で、簡単に気を散らされてしまいます。しかし、「従順なしもべ」であるコンピュータは、まるで使用者の気を散らすかのように、複数の情報を同時に送り込んできます。これでは、集中のしようがなく、人間の潜在能力が劣化してしまいます。そのため、人によってはカフェインや、ADHD治療薬であるアデロール、さらには違法な薬物を摂取することで集中しようとしたりするわけです。こういった方法に対して、The New YorkerのTim Wuさんは「薬物に依存しない解決法を模索するべきです」と述べています。

by Dennis Tang

我々が必要としているのは「雑用モード」「コミュニケーションモード」「集中して仕事するモード」にそれぞれロック可能なコンピュータだろう、とWuさん。例えば、仕事モードだとコンピュータは余計な邪魔を一切せずに、使用者がずっと仕事に集中できるように取りはからってくれるという仕組みです。そのためにはメール着信のお知らせやポップアップウインドウなど、注意を散らす不必要なものをすべて除去しなければならず、脳の弱点をよく理解したデザイナーが必要になってきます。しかし、ここまで徹底することではじめて、1912年にカフカが行ったような集中を現代に実現できるだろう、とWuさんは考えています。

「コンピュータは我々を愚かにすべきではない」と語るWuさん。しかし、自動車や自転車の運転中ですらスマートフォンを操作している人がいるのを見ると、テクノロジーの進歩はどんどん人間を愚かにしているようにしか思えない時もあります……。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log