謎のクリーチャーと化した患者が看護師さんに襲いかかる全手描きのアニメーション「Cuushe - Airy Me」

一見何の変哲もない病院で働いているように見える平凡な看護師さんを、突如としてクリーチャーへと姿を変えた患者が追い掛けてくる……とまるでパニック映画のようなストーリーをどこか懐かしい雰囲気のやわらかなイラストで表現、ファンタジーと不気味が融合した不思議な雰囲気のアニメーションが「Cuushe - Airy Me」です。

Cuushe - Airy Me on Vimeo


森の中を走る少女。

何かを見つけたようです。

手に入れたのは真っ赤なリンゴ。

ガブッ

口を押さえ、何かを感じている様子。

そして少女の顔がアップになって……

鍵穴越しに瞳だけが見えるように。

場面が変わり、花の中からちょうちょが舞い上がります。

カルテを書く手の先には……

花瓶を倒してしまった子ども。

カルテを書いてた看護師さんはホウキとチリトリを手に子どものもとへ向かいました。

掃除をしていると、看護師さんの頭の側をちょうちょが通ります。

天井近くに舞い上がったちょうちょはランプの中へ。

先ほどの子どもは赤ちゃんを抱いた母親の元へと移動します。

看護師さんは老人の代わりに扉を開き……

扉の間からするっと抜けたちょうちょを見送るのでした。

老人が出てきたのは、一見大きな病院のように見える施設。

そして1つの扉が映し出されました。

「Airy Me」

部屋の中には一人の少年が眠っています。

そこへ入ってきたさっきの看護師さん。

看護師さんをじっと見つめる少年ですが……

採血になるとぷいっと顔を背けました。

採血。

血管中を血が巡ります。

突然写し出される怪しげな雰囲気の試験管やちょうちょの標本。

一方、看護師さんは処置が終わると部屋を後にします。

その後ろ姿から伸びる長い影。

しゅるしゅる……とリボンのように伸びていきます。

現れたのはリンゴ。

パカッ

そのリンゴを食べるのは先ほどの少年。

もぐもぐ。

そしてデジャビュ（既視感）のように部屋を後にする看護師さんが映し出されます。

また場所が変わって、今度は明かりの消えた手術室のような場所。

両手で握られたリンゴから出てきたのはイモムシ。

そっとその手をとられます。

看護師さんの前に立つ男性。

そして再び部屋の様子。

今度は部屋を後にしなかった看護師さん。すっと手を伸ばして……

少年の鼻をツン。

すると少年の顔が急にぷくっと膨れ出しました。

パンッ

何かが出てきて……

破裂。

さらに破裂。

不思議な生き物へと形を変えた少年。

看護師さんは逃げます。

追う元少年。

耳や羽、目玉や蝶の標本がずらりと並びます。

部屋でコレクションを眺めていたのは白衣を着た男性。

その後ろで窓ガラスが割れました。

形を変えた少年は廊下に出て看護師さんを追い掛けます。

体から触手のようなものを出しました。

触手をさけつつ移動する看護師さん。

チラッと後ろを振り返り……

隠し扉だった階段を開きました。

そして看護師さんは暗闇の中へ……

冒頭に出てきた少女は誰なのか？看護師さんは無事逃げ切れるのか？姿を変えた少年はどうなってしまうのか？一見どこにでもある病院に思えた世界はどんどんと姿を変え、物語は驚きのクライマックスを迎えます。

これは多摩美術大学グラフィックデザイン学科に在学していた久野遥子さんの卒業制作として作られたアニメーション。3000画に及ぶアニメーションを約2年の歳月をかけて手描きで完成させており、柔らかな色使いやクルクルと入れ替わるカメラワーク、ファンタジーと気持ち悪さが入り交じった独特の雰囲気に思わず物語の世界に引き込まれてしまう作品となっています。

なお、このほか久野遥子さんのイラストなどは以下のウェブサイトから見ることが可能です。

宇宙ポート　
http://port065.blog84.fc2.com/