何もかも自分だけ天地が逆転している男の人生に待つ結末「Reverso」

「人と違う」ということは長所にもなり得る反面、孤独がつきまといます。清掃員として働き父親と一緒に暮らす平凡であるはずの男が、たった一点「重力が人とは逆に作用する」という性質を持っていた場合、どんなことが起こるのか？ということを描いたムービーが「Reverso」です。

Reverso on Vimeo


住宅街を走る新聞配達人。

ポイッと新聞を一軒家の庭に投げます。

ドアを開けて新聞を掴むのはマジックハンド。その先には……

天井に立つ男性。

寝ぼけまなこで階段を下りていきます。

天井と床の双方に取り付けられる階段。普通の階段はかっぷくのいい父親が使う模様です。

天井にある階段を下って2階に移動します。

歯磨きの際には歯ブラシを上下逆に構えて歯磨き粉を落下。

ネームプレートは相手が読みやすいように。

コーヒーカップにストローをさす不思議な父親。

カップを上に持ち上げて……

逆さまでも飲みやすいように、という気遣いでした。

飛び出してきたトーストもキャッチ。

朝のひととき。

車に乗るのも一苦労です。

もちろん自動車も特殊仕様。

出勤です。

あるべき部分に扉がない、奇妙な自動車を運転し……

会社に到着。

エレベーターでも逆さま。

孤独なオフィス。

さかさまオフィスの下は……

無人です。

逆さま男にとって電気の付け替えはお手の物。

……かと思いきやあいさつをした弾みでライトが腕から滑り落ちます。

ガシャン！という破裂音と共にオフィスに悲鳴が響くのでした……。

就業時刻になり、逆さまで帰宅。

協力し合って夕食を準備し……

食後はまったりとテレビタイム。ソファーは落ちないよう壁にギッチリと取り付けられています。

ケンカにならないよう、テレビは横倒し。

階段を下りる男性が窓を見つめます。

ぐるっと反転させたのは……

窓ではなく、写真のフレームでした。

いとおしそうに写真の中でほほえむ女性の輪郭をなぞります。

そんなセンチメンタルな男の側で「フンッ」と鼻を鳴らす父親。

朝になり、再び新聞が投げ込まれます。

トーストが飛び出し……

コーヒーには砂糖。

逆さまで出勤。

退屈そうに電球を眺めます。

……と、真下のオフィスに男性が入ってきました。

デスクにマグカップを置き……

タイピングを始めます。

鉛筆がコロコロ……と転がると、

すかさずキッチリと元の位置に戻します。どうやら相当几帳面な模様。

そんな彼の元にヒラリ、ヒラリと紙が舞い落ちます。

「なんだ？」と紙をのぞき見ると……

「上を見て：）」の文字。

けげんな表情で仰ぎ見ます。

「やあ！」

目線を動かさず、言葉を発さず、メモをゴミ箱に入れました。

そして次の朝、新聞紙が投げ込まれ……

トーストは飛び出します。

ポチャン、とコーヒーに砂糖。

今日も逆さまです。

慎重に水筒からマグカップにコーヒーを移し、朝のブレイクタイム。

下では一心不乱にタイプ打ちにいそしむ男性。

チラッとマグカップの中を見ますが……

カップの中は空っぽ。

ちょっと気分を損ねます。

しかし、まじめなので、そのままタイプ打ちを続行。

その様子を見ていた逆さま男。

チラッ

「ヘイ！」と相手に呼びかけますが……

よそ見をしたためこぼれたコーヒーでやけどしてしまいます。

ワーッ

呼びかけられて見上げた男性は……

大変なことに。

場所は変わって上司のオフィス。

真っ赤な顔をした男性に指さされ叱責を受ける逆さま男。その処分は……

クビ

肩を落とす逆さま男に……

薄笑いを浮かべています。

失意のまま帰宅。

父親はいつも通り「フンッ」と鼻を鳴らすだけ。

場面は変わって、二人で夕焼けを眺めています。

視線の先には……

丸々とした少年。

けげんな顔。

逆さま男を見た衝撃のあまり、少年は持っていた風船を手放してしまいます。

取れるか……？

ツルッ

あっ

思わず目を見開きます。

ふわりと浮かび上がった逆さま男の後に……

風船もゆっくり続きます。

だまってその様子を見つめる父親。

何も言わず、いつものように「フンッ」と鼻を鳴らします。

上空では、夕日に照らされた雲から……

ポンッと姿を現す逆さま男。

ぐんぐんと空に落ちていきます。

飛行機の横を通り、

人工衛星の隣を泳ぎ、

惑星を眺めます。

そして……

どさっ

びよ～んと木に引っかかります

カメラが反転。逆さま男が正しく逆さまになっていることがわかります。ゆっくりと風船も落下。

そして、木の枝から落ちた元・逆さま男が見たものは……

ということで、無事正しい重力を手に入れた逆さま男。ラストは彼の冴えなく単調な日常を描いた前半の伏線を拾った、ちょっとセンチメンタルな結末が待ち受けているのでした。