ニューアトランティスなど消滅・崩壊した183カ国を網羅した「消滅した国々」


いま、地球上には日本やアメリカのように国連に加盟している国が193カ国あり、国連オブザーバーのバチカン市国を含めると194カ国あります。一方で、第二次世界大戦後、この地球上から消滅した国々の数も183カ国と、それとほぼ同数に上ります。

近年だと、東西合併によりドイツ連邦共和国(旧西ドイツ)に吸収する形で消滅したドイツ民主共和国(東ドイツ)や、解体消滅したソビエト連邦などが有名ですが、中にはたとえば「オバンボ」「ガガウズ」「キレナイカ」「クワクワ」といった国名とは思えないような変わった名前のものも。それらの情報をまとめた書籍が、社会評論社から刊行されている「消滅した国々」です。

消滅した国々 | 総合書籍出版 社会評論社
http://www.shahyo.com/mokuroku/foreign/geography/ISBN978-4-7845-0970-6.php



この本はウェブサイト「野次馬的アジア研究中心」の中の1コーナーである「消滅した国々」を書籍化したもので、同サイトからは世界飛び地領土研究会のコーナーが2006年に「世界飛び地大全―不思議な国境線の舞台裏」として書籍化されています。

帯付きの書影はこんな感じ


ページ数は712。厚みは3.9cmあり、Let'snote CF-SX2よりも分厚く、重たい本です。


ぱっと開くと、まずは消滅した国々の国旗一覧が載っています。


珍しく国旗に文字が書かれているのはアンギラが1967年7月から9月にかけて使用したもの。9月以降はいかにも国旗らしい、紋章入りのデザインになっています。


絵はがきっぽいチトラル藩王国


旗というより図柄っぽいバスターランド


照準を定めているかのようなロツマ共和国と、あやしげな逆三角形使用のニューアトランティス


目次には国名がぎっしり


目次に続いて、消滅した国々がどこにあったのかが地図上に図示されています。


そして、ここからが本編となっていきます。

まずは「第一章 国際的に承認された国」。取り上げられているのは南ベトナム、マラヤ連邦、北イエメン、南イエメン、アラブ連合共和国、ソ連、東ドイツ、チェコスロバキア、旧ユーゴスラビア、新ユーゴスラビア、ソマリランド、カメルーン共和国、マリ連邦、ザンジバル、タンガニーカ、ペンバ人民共和国。


個別の国ごとにそれぞれ、基本データとエピソードが掲載されています。これはアラブ連合共和国の基本データ。


そしてエピソードのページ。サイト上では削除された国も多い中、アラブ連合共和国はサイトにも掲載されているので読み比べてみましたが、全体的にテキストの修正と加筆が行われていました。


第二章 わずかな国に認められた国」。国際的に多くの国の承認は得られなかったという国々です。


コソボ共和国のほか、パレスチナ、ビアフラ共和国が掲載されています。ちなみにここに出てくるパレスチナは、現在あるパレスチナ自治政府のことではなく、1948年に全パレスチナ政府によって独立が宣言されたもの。1952年にアラブ連盟が全パレスチナ政府の活動停止を決定、1963年には名目としても消滅しています。


第三章 改めて独立したら併合された国」。一度は独立したのに、結局また併合されてしまったという国々です。


チベットのほか、ハイデラバード藩王国、カラート藩王国、マニプール藩王国、ブガンダ王国が掲載されています。


第四章 併合されたくて独立した国」。先ほどの章とは違い、最初からどこかの国に併合されることを目的として独立した国々。


シンガポールのほか、内モンゴル人民共和国、東モンゴル自治政府、ホロンバイル自治省政府などが掲載されています。ちなみに、この本は「消滅した国々」なのになぜシンガポールが掲載されているかというと、今あるのはシンガポール共和国で、ここに掲載されているのはシンガポールだから。


第五章 植民地に戻った国」。独立したものの、諸々の事情で植民地統治下に戻った国々です。


掲載されているのはアンギラ共和国のほか、アドゥ環礁、ローデシア。


第六章 ソ連崩壊で生まれた国」。ソ連崩壊とともにウクライナやキルギスタンなど多くの国が生まれましたが、その中ですでに消滅してしまった国々です。


クリミア共和国のほか、タタールスタン共和国、ガガウズ共和国、チェチェンなどが掲載されています。


第七章 ソマリア崩壊で生まれた国」。ソマリアは1980年代からのソマリア内戦で南北に分裂して争いましたが、そんな中でいくつかの国が生まれては消えています。


南西ソマリアのほか、ジュバランド、マーヒル、アウダル共和国が掲載されています。


第八章 国家連合」。いくつかの国が集まって作る国家連合の中にも消滅したものがあります。


セネガルとガンビアがくっついたセネガンビア国家連合のほか、フランス共同体、アラブ連邦が掲載されています。


第九章 首長国・土候国・藩王国」。首長国というと現存するのはアラブ首長国連邦(UAE)だけですが、かつては多くの首長国が存在しました。


パキスタンの藩王国やインドの藩王国、ハドラマウト保護領の首長国などが掲載されています。


第十章 保護国・準独立国」。独立とはいえない状態にあった国々。


南アラビア連邦のほか、シッキム王国、元祖「アラブ首長国連邦」、中央アフリカ連邦、西インド連邦が掲載されています。


第十一章 いわゆる傀儡国」。独立国でありながら独立国ではない、どこかの国による傀儡政権が立てられていた国々。


アルティボニット共和国のほか、東トルキスタン共和国、コーチシナ共和国、クルディスタン人民共和国、自由レバノン共和国、キレナイカ、ベニン共和国などが掲載されています。


第十二章 いわゆる独立勢力」。民族紛争などの結果として誕生し、その後、消滅した勢力。


アチェのほか、朝鮮人民共和国、東ティモール民主共和国、西パプア共和国、南マルク共和国シャン邦共和国などが掲載されています。


第十三章 作り損ねた国々」。独立国を作ろうとしたけれどうまくいかずに失敗してしまったという事例もいろいろあります。


ここは特に「ベンチャー」な感じが漂っており、たとえば「アトランティス」を作ろうとしたというエピソードも。


アトランティスを夢見たのは1人だけではなく、「ニューアトランティス」もありました。このほか、大カプリ共和国、アバロニア、タルガ、ローズ島、ミネルバ共和国、アバコ、アゾレス諸島が掲載されています。


ちなみに、著者の吉田一郎氏はかつて香港の九龍城砦に住んでいたことがあるという人物。週刊「香港ポスト」記者、月刊「香港通信」編集長、日刊「香港ビジネスポスト」編集長を経て、2007年からはさいたま市議会議員を務めています。


吉田氏が議員になったのは、故郷である大宮市が浦和市、与野市との合併により「消滅した自治体」になったことに端を発しています。吉田氏によると、合併で誕生したさいたま市は旧浦和優先の運営が行われていて、旧大宮では公的医療機関がどんどん移転・縮小して不便になっているとのこと。このため、ネット上に大宮市亡命市役所を作ったものの、ネタだとしか思われなかったため、実際に議員になって大宮の独立を目指している、というわけ。


ただ、議員になって多忙になってしまったために、本書の完成までに時間がかかってしまった、とのことです。

hontoネットストア - 消滅した国々 第二次世界大戦以降崩壊した183カ国/吉田 一郎 - 本



購入する場合、Amazon.co.jpではたびたび在庫切れになっているので、上記のhontoネットストアの方が手に入りやすいかも。

Amazon.co.jp: 消滅した国々―第二次世界大戦以降崩壊した183ヵ国: 吉田 一郎: 本


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