サイエンス

Microsoftが廃水をエネルギーに変える発電所とデータセンターを統合させた施設を開発中


新たなエネルギーの確保は多くの企業が面している問題ですが、これについてMicrosoftはバイオ燃料の一種であるバイオガスを廃水から生み出し、発電所とデータセンターを統合させた施設で利用する、という新たな研究に取り組んでいます。

Microsoft Global Foundations Services Blog : Microsoft Recycles Waste to Provide Clean Power for Data Center R&D
http://www.globalfoundationservices.com/posts/2012/november/19/microsoft-recycles-waste-to-provide-clean-power-for-data-center-r-and-d.aspx


Microsoftは1994年以来オンライン・サービスの需要を伸ばすような、より効率的なデータセンター施設を開発する必要があったのですが、同時に、クラウドサービスに持続してエネルギーを提供できるようなエネルギー供給システムも必要でした。そこで、およそ550万ドル(約4億5000万円)が投資して行われたのが「発電所」と「データセンター」を一体化させた「データ・プラント」を開発する研究。現在はワイオミング州シャイアン市に試験的な施設が作られているのですが、将来的に廃水処理プラントや農場、燃料精製所、ごみ埋め立て地などからバイオ燃料の一つであるバイオガスを生み出せるようにする計画とのこと。


これまでバイオガスは発生したメタンをそのまま利用したり、燃焼させて電力を生み出すという方法で使用されてきました。しかし、その場合コストがかかりすぎてしまうだけでなく、燃焼というプロセスを経ることによって余分なCO2まで生み出してしまう、という問題があります。この点、データ・プラントでは燃焼処理を行わず燃料電池によってバイオガスをエネルギーに変換し、余計な炭素を放出せずに電力を生み出すことが可能。


Wikipediaによるとバイオガスは、バイオマス・肥料・下水・都市ゴミ・緑浪費・工場資材・作物などの生物分解性の材料が嫌気性消化や発酵を起こすことによって生成されます。生物ガスは主としてメタン(CH4)および二酸化炭素(CO2)を含み、少量の硫化水素(H2S)、湿気およびシロキサンが含まれることもあります。廃水処理プラントにおいて嫌気性消化は特殊なバクテリアを用いることで分解が加速されますが、廃水を温かく保つことによってバクテリアをより効率的に働かせることが可能です。

嫌気性消化によって生まれたメタンはシロキサンやCO2といった多くの不純物を含くため、廃水を使ってエネルギーを生み出すプロジェクトは多くの場合、メタンの供給が十分に得られず失敗してしまいます。しかし、Microsoftはデータ・プラントでバイオガスを能率的に消費する構造を作り出しました。プロセスはまず、ガスの中に含まれる湿気やシロキサンといった不純物がろ過されることから始まります。次に溶融炭酸塩形燃料電池 (MCFC)がメタンやCO2を電気的なエネルギーに変換します。この時、燃焼というプロセスを経たり、環境を汚染することもありません。最後に、生み出されたエネルギーはモジュール型データセンターで使用されます。そしてデータ・プラント内のエネルギー生成において生まれた熱は廃水処理プラントに戻されます。下水をキレイにする際、微生物を効率的に働かせるために廃水を温める必要があると書きましたが、データセンターから返ってきた熱が廃水処理プラントにおいて使用されることで、エネルギーを無駄なく最大限に活用することができるというわけです。


データ・プラントの活用によって、まず温室効果ガスであるメタンをプロダクトとして使用しエネルギーに変換できるようになるというメリットがあります。そして非常に能率的な燃料電池を使うことにより、これまでの方法よりも排出するCO2の量を少なくすることも可能。また、廃熱を再利用することでエネルギーの無駄を省き、効率性を改善することもできます。

さらに、バイオガスは空気中における二酸化炭素のバランスを崩さないという利点もあります。以下のグラフはワイオミングにおいてタイプの異なる3つの燃料がどれほどCO2を生み出しているかを表したもの。一番上が化石燃料によって生み出されるCO2の量で、1MWhあたり1183ポンド(約540k)のCO2を生み出します。天然ガスを使った燃料電池の場合は1MWhあたり940ポンド(約430k)。そして、バイオガスは0となっています。


燃料電池による電解によって最終的にCO2が残ってしまいますが、燃料電池のいいところは、メタンガスをピュアでクリーンな水素と高品質のCO2に変えられることです。つまりこの時CO2は産業的に使用できるくらいに質が高いため、市場に輸送することが可能。汚染物質を出すことなく、価値ある商品を生み出すことができます。

現在は燃料電池による高品質なCO2の生産を度外視した200kWスケールのデータ・プラントでテストを行い、300kWの電力を生み出すことに成功。平均的なデータセンターよりも小さなスケールですが、どれほど効率的であるかは立証されました。なお、実際に使用される際、電力管理にはこれまでの送電網が使用されるのではなく、精巧なパワーマネージメント・システムが用いられる予定です。


データ・プラントは試験的なプロジェクトの終了後に、データセンターや燃料電池ごとシャイアン市とワイオミング大学に寄贈され、プロジェクトで利用された敷地はさらなる研究開発のため使われるとのこと。今後このプロジェクトはMicrosoft内に留まらず、他の産業においても清潔で経済的・効率的な安定した動力源を供給する新しいメソッドの研究に役立つことが予想されます。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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