光ファイバーの速度を20Gbpsに高速化させるモジュールが3年計画で開発中
現在使用されている光ファイバーネットワークに対して大きなコストをかけることなく速度を20Gbpsに高速化させられるモジュールを、バンゴール大学の研究チームが開発しました。現在は実用化に向けての3年計画に入っており、2014年から2015年ごろには製品が登場する予定です。
Increasing Broadband capacity two thousand-fold - for the same price - News and Events at Bangor University
http://www.bangor.ac.uk/news/full.php.en?nid=11127&tnid=11127
BBC News - Broadband '2,000 times' faster aim of Bangor scientists
http://www.bbc.co.uk/news/uk-wales-20183914
これはバンゴール大学のJianming Tang教授らの研究チームが開発したもので、コンセプトは「多くのコストをかけることなく高速化を実現したい」というものでした。
Ultra High Speed Broadband - Bangor University - YouTube
今や、ネットで配信されている映画をストリーミング再生したりするのは当然のこと。しかし、PCの性能ではなく、ネット回線がボトルネックとなっていることがあります。
これを解決するために立ち上がったのがJianming Tang教授らのチーム
手にしているカードには「100Gbpsモデム」の文字が。これは一般的な光ファイバーである1000Mbps(1Gbps)の100倍の速度。
これが実現すれば、20本の映画を同時ダウンロードするのもあっという間。
「さあ、ポップコーンの時間にしましょう」とニッコリ。
では、高速化のためにはどうすればいいのか。光ファイバーネットワークでは、0と1で構成されるデジタルデータを光信号に変換して送り出しています。しかし、ケーブルが長くなるとそれだけ転送エラーが発生してしまいます。
これを解決するためには、光ファイバー内のストランド(より線)を増やすか、信号の符号化と復号に使用するレーザーの数を増やすか、信号を増幅するか、といった手段がありますが、いずれもコストがかかります。
Tang教授は、これを1つのチップで解決しようとしています。
このプロジェクト「Ocean project」に携わっているRoger Giddings博士は「光ファイバーネットワークの高速化を、費用効率が良く、かつ実用可能な方法を探るものです」とプロジェクトの概要を説明。
プロジェクトでは斬新な技術は用いずに、既存のOOFDM(光学直交周波数分割多重方式)を用いました。この方式では生のデータを物理的な電気波に変換し、さらに光信号に変換していますが、Ocean projectでは、光信号への直接変換と光信号からの直接変換が可能なモジュールを開発しました。同種の問題には世界でも10チームほどが取り組んでいますが、リアルタイム送受信が可能なシステムを作り出したのはこのチームだけだそうです。
このモジュールを用いて、すでにチームでは20Gbpsでの転送を実現。40Gbpsへの到達も問題ないと考えられています。
ブロードバンド界隈では、Googleが通信速度1GbpsというGoogleファイバーをカンザスシティで展開スタートしています。また、イギリスではヴァージンメディアがロンドン東部で1.5Gbpsのサービスを提供しています。しかし、2012年10月に行われた実測調査では、ロンドンの通信速度は平均で33.4Mbps。Ocean projectがすでに到達している20Gbpsのわずか0.17%しか速度が出ていないことになります。
しかし、このOcean projectがモジュールを完成させてネットワークに組み込まれるようになれば、通信速度は大幅に向上することになります。
すでにプロジェクトはバンゴール大学だけのものではなく、富士通セミコンダクター・ヨーロッパ、フラウンホーファー通信研究所、ハインリヒ・ヘルツ研究所、フィニサー社、バーチャルフォトニクス社が協力することになっています。
「現在、3年計画の1年目です。計画の最後には、実用化したモジュールを出したいですね」とGiddings博士は語っています。
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