デジタルデータを数億年保存可能な技術を日立と京都大学が共同開発
By Paul Lowry
石英ガラスの内部にCDなみの容量のデータを記録・再生する技術を、日立製作所と京都大学工学部三浦清貴研究室が共同で開発しました。石英ガラスは耐熱性・耐水性に優れており、高温劣化加速試験の結果、今後、数億年以上にわたってデータの長期保存が可能になる模様です。
石英ガラスの内部にCD並み容量のデジタルデータを
記録・再生する技術を開発
数億年のデータ保存に耐えるデジタルアーカイブを実現
2009年に日立はデジタルデータを10万年以上安定して保存できる次世代記憶技術を開発しましたが、この際に耐熱性・耐水性に優れた石英ガラスがストレージであることを有用であると確認しました。しかし、実用化のためには高速・高密度でデータを記録し、簡便に再生できる技術が必要でした。
石英ガラスにフェムト秒パルスレーザーを照射すると屈折率の異なる微小領域(ドット)が形成されます。このドットがある部分を「1」、ドットが生じない部分を「0」としてデジタルデータを記録するわけですが、日立は今回、レーザーのパワーやドットの間隔・深さを最適化した多層記録技術によって高密度な記録を実現。また、光の振幅や位相を2次元的に変調する空間位相変調器を用いて、一度に100個のドットを記録する一括記録技術を開発し、記録速度の向上をも実現しました。
一方で、データを再生するときには市販の光学顕微鏡を使用。通常だと、多層に記録された石英ガラスを撮影すると他の層のドットがノイズになってしまいますが、今回、4層に分かれた記録したデータを正確に読み取る技術を開発し、読み出しエラーゼロに相当する信号対ノイズ比(SN比)15dBの再生を達成しました。
記録パターンはこんな感じ
これを光学顕微鏡で普通に撮影するとドット像はこのように見えます
今回開発した輪郭強調処理技術により、このように修正されます
開発された技術で石英ガラスに4層記録をしたところ、CDの記録密度である1平方インチあたり35MBを上回る、1平方インチ当たり40MBを実現。また、数億年以上の保存期間に相当する、1000℃で2時間の加熱試験を行ったところ、試験後も劣化なくデータを再生できることが確認されたとのこと。
ひょっとすると、ようやく石板を越える長期保存可能メディアが登場したのかもしれません。もしも黒歴史を保存してしまうと大変なことになりそうです……。
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